みんなの広場
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 アクセスされた方々との交流の場です。今月も次の3項目を取り上げました。先月の「みんなの広場」は「11 改訂履歴とみんなの広場(バックナンバー)」に移しました。
 正月も寒い日が続いています。汲み置きの水に氷が張ったり、霜柱が立ったりしています。それでも、日が少しずつ長くなり、何か希望を感じさせます。
 梅の蕾がふくらみ、球根も春に向かって順調に生長しています。バラの手入れも済ませました。
1.「今月の追加内容」など
 1.1 今月の追加内容
  今月追加した内容の、ご紹介です。
 1.2 新聞の記事から
  今月は南木佳士さんの「根に還る」という記事を載せました。なお、南木さんは「私の愛読書」でも、取り上げています。

2. 1月のトピックス
 1月の主なトピックスをご紹介します。
 2.1 下谷七福神巡り
  3日、2人の姉と下谷七福神へ初詣に行きました。
 2.2 赤倉スキー
  21〜24日、3泊4日でNMCの仲間6名と新潟の赤倉スキー場に行きました。
 2.3 熱帯植物園
  25日、サークルトライの仲間と新木場の夢の島にある熱帯植物園にスケッチに行きました。右の写真は植物園の外観です。
 2.4 モーツアルトの大ミサ曲
  28日、文京シビックホールで演奏会があり、家内と聴きに行きました。

3. 来月の予定
 今、来月に向けて計画していることを、お知らせします。

1. 「今月の追加内容」など
 1.1 「今月の追加内容」
  「8 ウオーキング・旅行」に追加した「54 下谷七福神」は、今月の初詣のご紹介です。
  「9 趣味」「2. パソコン」に追加した「9. スマートフォン」は更新した携帯電話の機種選定のいきさつです。
  「11 興味あるリンク」には、「11 趣味2−旅行」に「11.87 夢の島 熱帯植物園」、「10.3 音楽」に「10.3.7 大ミサ曲」を追加しました。最初の項目はこのページの2.3項の、後の項目は、このページの2.4項の関連です。

 1.2 新聞の記事から 「根に還る」 南木佳士
 むかし、30歳になってしまった嘆きをことさら強調する小説を書いたら、7歳年上の担当編集者から、だれでも30になるのだからそんなことを大袈裟(おおげさ)に書くな、と厳しい教育的指導を受けた。
 40歳の誕生日はうつ病のどん底でむかえたはずだが、まったく記憶になく、なんとか死なないで50歳になった日に頑丈な革製登山靴を購入し、家の周囲にある山々を歩いていたらすこしずつ元気になってきた。
 細部は忘れてしまつたが、各年代の誕生日の想い出はそれなりにありつつも、昨年、60歳になった秋の日の暮れ方の、ああ、60年も生きたのだなあ、還暦だなあ、との、枝を離れる落葉のごとき哀感と気楽さが絶妙な割合で配合された感慨に満たされた体験は一度もない。

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 その日、勤務先の病院から自転車に乗って家に帰る途中、正面に赤っぽく染まった浅間山がいつもよりずっと大きく迫ってきた。こんな日は、と期待して左を向くと、八ヶ岳の天狗岳、硫黄岳、横岳が、向こう側に沈んだばかりの夕陽を反映するあかね色の空の下にくっきり黒々とそびえていた。刈り入れを終えた田を広く吹き渡る北風にあおられ、旧農業高校裏の雑木林の落葉が舞う。
 家に帰りつくと、狭い庭には不釣りあいに枝がのびたモミジやヤマボウシの葉が大量に落ちていた。暗いなか、熊手でかき集めた。この熊手は生まれ育った上州の山村の、いまは廃屋になっている生家の農具置き場でほこりをかぶっていたのを持ってきた。3歳で母に死なれたわが身の育ての親であった祖母が、堆肥にする落葉を裏山で集めるのに用いたはずだ。そういう道具で落葉を寄せていると、こいつらの仲間になって根に還(かえ)るのだなあ、との想いがより深まってくる。

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 文学界新人賞を受賞して作家の末席に加わった30歳のころ、編集者はほとんどのひとたちが年上だったが、いつしか年下が増え、いまでは息子、娘の世代が担当になったりする。たまに信州のわが家を訪ねてくれる彼、彼女たちは初対面のときこそ表情が硬いけれど、妻の手料理や地酒でもてなしていると次第になめらかに、豊かに語りだし、日々、家と病院の往復に明け暮れるだけの私小説作家兼田舎医者の薄暗い世界に多様な光をあててくれる。
 春、当社から本を出しませんか、と誘う丁寧な手紙をくれた女性編集者がいた。名を知らぬ出版社だったが、のちに送られてきた池波正太郎の未収録エッセイ集はとても丁寧に作られており、内容も豊かだった。
 病院勤務医と作家の両立は心身の老化とともに年々困難になってきており、休日の早朝から午前中のみ、数カ月にわたって書き継いだ小説を、完成した時点でなじみの出版社に送るやり方しかできないゆえ、新たな依頼を受ける余裕はない旨返信し、縁があったらまた秋にでもご連絡ください、と社交辞令を付け加えた。
 秋、彼女から『五十鈴川の鴨(かも)』 (竹西寛子・幻戯書房)が送られてきた。読みながら、本物の短篇(たんペん)小鋭だけが創り出せる静謐(せいひつ)かつ強靭(きょうじん)な世界に圧倒され、何度もため息をついた。こんな良書を編み、秋を忘れなかった律儀(りちぎ)な編集者を家に招き、地酒を酌み交わした。その席で、新しい小説は無理だし、エッセイ集も出し飽きたから、還暦の記念事業で、この30年間に発表してきた短篇小説のなかからじぶんの好きなものだけを選んだ自選短篇小説集を出してもらえませんか、と頼んでみた。翌週、彼女より企画が通ったとの連絡があった。
 これまで本になった自作を読み返すことはなかったのだが、いざ始めてみると、30年前の芥川賞候補作や、23年前の受賞第一作などは緊張しきった心情がそのまま文章に表れており、おまえ、けっこう大変だったんだな、とそのころの「わたし」をいたわってやりたくなった。全短篇を読み終えて気がつけば、「わたし」の根に直結する地味な作品だけを10篇拾いあげていた。

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 先日、小雪のちらつくなか、上州の谷間の集落で河川改修に伴う土地の境界確認作業に立ち会った。この村にいた13歳の春まで祖母の田植えや稲刈りを手伝った場所だから、確認は容易だろうとたかをくくって臨んだのだが、現地は道路の拡張で埋め立てられ、残った川沿いの土地には笹(ささ)が繁茂し、田んぼの境界なんて確かめようもなかった。それは境を接するひとたちもおなじらしく、みな戸惑った表情を隠せない。
 先祖たちが懸命に耕し、山から湧水を引いてわずかな収量の米を作っていた田を、じぶんの代でこんな荒れ地にしてしまった。ひどく負い目を感じて冷える頬をさらに雪がなぶる。寡黙になった立会人たちのなかで、係員の示す境界に異をとなえるひとは一人もいなかった。
 もはやふるさとは自選短篇小説集のなかにしかない。枝を離れて自由になったはずの葉が、1月末の刊行予定に束縛される年末になってしまった。
 落ちた葉が正しく根に還るためにまず必要なのは、落ちたという事実をきちんと認識することだよな、と言い聞かせて年越し蕎麦(そば)を強くすすった。そして、朽ち果てるまでに遭遇するであろうあまたの不都合な出来事に、そのつど誠実に向き合えますように、と町はずれの神社で弱く祈念し、元旦をむかえた。ものごとをきちんと区切るのが苦手になってきたゆえ、これが新たな年なのか、よくわからない。

なぎ・けいし
1951年群馬生まれ。作家・医師。著書に『ダイヤモンドダスト』(芥川賞)、『草すべり その他の短篇』(芸術選奨文部科学大臣賞)など。
(出典 日本経済新聞 2012.1.8 文化欄)

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2. 1月のトピックス
 1月の主なトピックスをご紹介します。
 2.1 下谷七福神巡り
  この数年間、正月は都内の七福神巡りを2人の姉とすることが習慣になっています。今年は、下谷七福神を選びました。JR山手・京浜東北線の鶯谷駅から東京メトロ日比谷線の三ノ輪駅まで約1時間半のコースです。詳しくは「ウオーキング・旅行」の「下谷七福神」に載せました。
 2.2 赤倉スキー
  21〜24日、3泊4日でNMCの仲間と新潟の赤倉スキー場に6名で行きました。数年前にも行ったのですが、今回の方が良い旅館でした。天気は2日が曇り、2日が雪でした。古いカバーのないリフトは寒かったですが、風もなく雪もまあまあで楽しい4日間でした。
 2.3 熱帯植物園
  25日、サークルトライの仲間と新木場の夢の島にある熱帯植物園にスケッチに行きました。途中、まだ雪が残っていましたが、植物園の中は暖かく、オウギバショウ、タコノキなど珍しい植物を見ることができました。
 2.4 モーツアルトの大ミサ曲
  友人のK君は歌が好きでいくつかのコーラスグループに属しています。今回はNAO(なお)コーラスグループの発表会で、モーツアルトのハ短調ミサを演奏しました。指揮は堤俊作氏、独唱は澤江 衣里さん、小泉 詠子さん、古橋 郷平氏、井口 達氏、オーケストラはロイヤルチェンバーオーケストラでした。

3 来月の予定
 3.1  本の紹介
  孤高・異端の日本画家「田中一村の世界」を載せたいと思います。
 3.2 ウオーキング・旅行に、「六郷用水」近くの散歩コースをご紹介したいと思います。
  ただ、2月は日数が少ない上に、スキーも2度予定しているため、どちらか一方になりそうです。
 3.3 リンク集
  「興味あるリンク」を、少しずつ追加したいと思っています。

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[Last Updated 2/29/2012]