Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第154夜

助詞 (2)−秋田弁講座プロジェクト−




ごで
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 推量の意味なのだと思われる。
あいだば駄目なんだごで
あれじゃ駄目なんでしょうねぇ
 という風に使う。全くの推測ではなくて、根拠の有無はともかく、一定の確信は持って
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いる、という状態を示す。勘ぐりなども含まれる。
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 助詞なのかなぁ。なんかの複合語か省略形・短縮形のような気もしないことはないの
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だが。「ことで」とかかな?


ず、やず、あず
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 なんだろう、これ。例文としては、
んだずが
そうなのか
 …例文にすらなってないような気がする。ニュアンスとしては、意外・不本意という感
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じ。呆れている、驚いている、などなど。
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 これに対する返事で「んだずや(そうなんだよ)」と言ったりする。「全くなぁ」あたりを補
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うと分かりやすいか。
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 「んだのが」とも言うので「」と交換可能か、と思うと、「んだなや」などとも言ったりす
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るので、ますます訳が分からなくなってきた。



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 そんなのばっかりだが、これも整理できていない。終助詞ではある。
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 例えば「そんたごど あらんだげ (そんなことがあるのか)」と言えば、これは強調で
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ある。「あらんだ」「あらんだが」よりも強い。「一体」あたりの意味を持っていると考え
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られる。強さとしては、上述の「」あたりに近い。だから「んだずが。そんたこど あ
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らんだげ
」と続けることができる。肯定系で表現するか、否定形で表現するかの違い、
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と言ってもいい。
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 一方で、「んだげ(そうか)」というと、これは気のない返事にも使える。「あぁそうかい」
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「ふーん。それで?」程度のもの。これは、逆転的な用法かもしれない。



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 終助詞。丁寧な勧誘、というあたりか。
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 「寝まれへ」と言えば、「お座りなさい」。
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 使用地域は限られているような気がする。どこでも聞く、という感じではない。


ばり、ばし
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 副助詞の「ばかり」と同様。「ばかし」という変形があることを考えれば、「か」が落ち
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たものと考えてよさそうだ。
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 辞書で調べて知ったのだが、この「ばかり」は「はかる」から変化したものなんだそう
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である。
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 「ばっかり」は「ばしばし」と言ったりする。



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 一部の形容詞の終止形につく。既出


ったって
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 元々の成り立ちとしては助詞ではないと思うのだが、もはや分解不可能なので、助
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詞ってことで。
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 意味は「〜だとしても」。「行ったったって」は「行ったとしても」。
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 ひょっとして「〜たといっても」あたりが元かなぁ。
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 なお、「行ったったって」自体は「行ってたそうだ」とも解釈できる。これは伝聞の「っ
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て」である。
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 なお、アクセントは、「行ったとしても」では「行っったって」、「行ってたそうだ」では
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行ったったって」である。


けど
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 前回、取り上げた「ども」とは全く別の語。これも、元は助詞ではないのかもしれない。
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 「昔っこ」の会で聞いたのだが、「〜だったんだと」に相当する。つまり、伝聞を表す表
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現。


 形容詞の時もそうだったが、音の脱落や短縮、合成が進みすぎて、原形をとどめてい
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ない、というケースが多い。そうなると、元々の語には還元できないので、別の品詞として
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分析せざるを得ない、ということになるわけである。
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 この辺は、本来ならばかなり慎重にやらなくてはならない。



参考:『大辞林 (初版) 』(1989) 三省堂




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第155夜「味噌煮込みの季節」

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