Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜
第143夜
元気でやっとりゃーすか
愛知に行ってきた。
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5 月にも行ったが、あれは彦根からの帰りで、飛行機に乗るために通過しただけであっ
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た。今回は、名古屋に一泊、蒲郡の西浦温泉に一泊である。「行ってきた」と胸を張って
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言えるだろう。
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ただ、元々が旅行に興味のない質で、今回も、知り合いが集まり、また、新しい人とも
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会えるから行ったわけで (オフラインミーティングというやつである)、観光じみたことはし
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てない。19 時から 5 時まで呑んでいた。名鉄の西浦駅から宿の銀波荘まで歩いて、西
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浦の町を堪能したのが観光と言えば言える。
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商店街では、小学生が描いた絵が立派なイーゼルに飾られていた。学校か教育委員
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会あたりとのタイアップであろう。同じ学年でも、大人っぽい絵があり、マンガのキャラク
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ターを写しただけのありでなかなかの見ものである。
俺が知っている名古屋弁というと、
やっとかめ
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たわけ
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びーし
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けった、けったましん
あたりだろうか。
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上から、
久しぶり
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馬鹿者
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模造紙
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自転車
である。
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「やっとかめ」には「八十日目」という字を当てる人もいるようだ。
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「たわけ」の解釈については、以前紹介した、『全国アホ・バカ分布考（松本修著・太田
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出版・ISBN4-87233-116-8）』に詳しい。「俺は馬鹿だ」「わしゃアホか」とは言っても「わ
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しゃタワケじゃ」という使い方はしない、つまり自分のことを「たわけ」とは言わない、とい
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う話がなかなか興味深い。「たーけ」とも言うようだ。
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「びーし」は「B 紙」である。紙の規格から来ているらしい。
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「けった」は面白い俚言だ。足で動かすから「蹴った」なのであろう。これに「ましん」が
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つくと、完全に言葉遊びの領域に入ってくる。これはたしか、静岡あたりまで使用地域
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が広がっていたはずだ。
さて、改めて名古屋〜蒲郡 (大きなくくりでは尾張〜三河) の言葉を聞いてみると、ど
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うも関西のにおいがするのである。
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特徴的な語尾「だぎゃ」「だなも」などがない場合、たとえ名古屋駅前でライブの音声
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で聞いたとしても、俺には、それが名古屋弁なのか大阪弁なのかを識別することはで
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きない。これは自信を持って言える。自慢にゃならんが。
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勿論、近いのだから、共通点はたくさんある。
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その他にマスク効果もあると思われる。例えて言えば、地上に立っていては、50 階の
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ビルと 60 階のビルの区別はつかない、ということである。秋田からみたら、名古屋弁も
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大阪弁も似たようなものに思える、逆に、名古屋の人からみたら、青森も秋田も一緒で
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あろう。
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平たく言えば、俺は名古屋弁も大阪弁も分かってない、ってことである。
若者の言葉で面白いのを聞いた。
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名鉄蒲郡駅でのことである。
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反対側のホームに友達がいたらしいのだが、列車が発車してしまったので、誰も居な
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くなった。それを
誰もおらへんくなっちゃった
と表現していた。
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「おらへん」は方言であろう。
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それに続く「くなっちゃった」は共通語形ではないかと想像する。
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本当は何というのだろう。大阪弁なら「おらんようになってもうた」などと言うのだろうが、
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三河弁では想像がつかない。
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尤も、「おらへんくなっちゃった」が正規の三河弁なのかも知れないのだが。
居酒屋で「忙しくなったら、呼ばってね」というのも聞いた。
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前に取り上げたことがあるが、秋田でも同じ単語を使う。「呼ばってけれ」と語尾こそ
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違うが、「呼ばる」という語であることに変わりは無い。
名古屋市内のホテルに入ったら、ロビーの装飾が金キラキンであった。室内もこうだっ
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たら眠れないと思ったが、それは無かった。
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流石、しゃちほこの街。
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第144夜「心頭滅却すれば火もまた涼し」へ
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