Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第134夜

バタバタ近畿行




 京都彦根名古屋と行ってきた。
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 行きは日本海 4 号という寝台特急。秋田発 22:27、京都着 9:20 だから、ほぼ 11 時
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間である。こんな長時間の移動は学生時代以来だ。
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 実は寝台列車に乗るのは 2 度目で、大学入学で上京したとき以来なのである。
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 夜行には何度か乗ったが、寝台ではなく座席である。「おが」という夜行急行があって、
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運賃プラス急行料金が片道 1 万円以下。まさに学生向けの交通機関であった。もう 1
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本あった筈だが、名前は忘れた。「出羽」だっけ?


 24 時頃、酒田から老夫婦が乗ってきた。ボソボソとなにかしゃべっていたが、アクセ
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ントを中心にやっぱり秋田弁とは違う。ここに書くほどの話題には気づかなかったが。
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眠かったせいもある。


 京都に着いて、まぁ、何が悲しくてという感じではあるが、マクドナルドで朝食。俺は
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食い物にこだわりがないし、なにせ 9 時半という時刻だから、名物を食おうにも開い
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てない。調べてないから分からないが、開いてなかったと思う。多分そうだろう。
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 ファストフードの店員は、「いらっしゃいませ」が済むと、何をさておいても、中で食
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うのか、テイクアウトするのかを確認する。
こちらでおしあがりですか
 見事なアクセントである。みちのくの田舎者としてはうれしかった。ありがとう京都
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いうところ。
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 俺も昔、東京は目白のマクドナルドでバイトをしていたが、アクセントを直されたとい
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う記憶はない。そこまでは指導しないのであろう。まして京都だし、というのは偏見か。


 四条河原町での小観光を終えて、バスで京都駅へ。途中のアナウンスが、
しじょうつばら (四条松原)
 どうやら、どこも「四条」+どこそこ、という区切りになっているようだ。


 駅でウドンを食う。関西圏に敬意を表してウドンにしたのだが、京都はソバでよかった
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んじゃないだろうか。「にしんそば」ってのもあることだし。
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 店員のおばちゃんが基本的に共通語風の言葉で話しているのが意外だった。つま
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らない。


 鈍行列車で彦根へ。車内ではあんまり面白いネタが拾えなくて残念に思っていたのだ
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が、駅に降りたらやっぱりあった。
JR 西日本では、きれいなえ (駅) を目指し…
 という、テープ録音による駅構内でのアナウンス。かなり文体が高いと考えられるから、
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ここでこういうアクセントが出てくるというのは貴重である。


 彦根の宿の食堂では「おに」「お茶漬」というのが観察できた。


 翌日は、米原から鈍行列車で名古屋へ。そこから飛行機に乗って秋田に帰ってきた
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わけであるが、岐阜市経由で1時間半も列車に乗ってきた割に、ここでも大したネタは
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拾えなかった。
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 おばちゃんたちが
あっかいな
と言っていたくらいである。意味は「暖かいな」なのであるが、「あったでしょうか」も同じ
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アクセントになるのではなかったか。


 なぜネタが拾えなかったかというと、おそらく、耳立たなかったからであろうと思われる。
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 何度も言ってきたことだが、我々は、京都弁・大阪弁にはマスメディアを通じて日常的
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に触れている。かなりの程度まで理解できるし、真似しようと思えば (ネイティブからし
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たら変だろうが) 真似できるくらいのレベルにある。かなりステロタイプ的ではあるだろ
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うが、名古屋弁・三河弁もそれに近い。だから「おや?」と思わないのである。
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 最初に挙げた、マクドナルドの店員バスの停車場案内駅の構内アナウンス。これに
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気づいたのは、共通語が期待される場面だからである。列車の中で、高校生同士がおしゃ
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べりしている分には、全く違和感がない、したがって気にも留めない、というわけだ。


 彦根のホテルには中日新聞があった。聞くところによると、この点では名古屋圏らしい。
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 名古屋空港には、お土産として八つ橋も売られていた。京都に空港がないからこういう
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ことになるのだろうが、これも面白い。
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 さて、米原名古屋は鈍行で 1 時間 20 分。京都彦根もそれくらい。ということは、
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鈍行で 3 時間の距離に、政令指定都市 2 つを含む、府県庁所在地が 3 つあることに
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なる。
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 秋田から隣の県庁所在地まで列車で行こうとすると、青森が特急で 3 時間、盛岡が新
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幹線で 1 時間半、仙台が同じく新幹線で 2 時間半。山形に至っては直行列車がない。
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 この差は何だ。
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 そして、この差はどういう影響を及ぼすのだろう。



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第135夜「『元禄繚乱』に見る方言」

shuno@sam.hi-ho.ne.jp