Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第115夜

立ち食い蕎麦




 1 月中旬に東京に行ってきた。今年もなんだかんだで移動の多い年になりそうな気がす
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る。MTB レースには参加できるんだろうか。


 暑かった。
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 一便に乗るために秋田のアパートを 7 時過ぎに出たのだが、その時の気温がほぼ -2
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度。東京の気温は 10 度近くだったんである。
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 以前、やはり 1 月に東京から戻ってきた時もこうだった。空港の搭乗口には目的地の
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天候が表示されるが、+1 度であった気温が目の前で 0 度に下がり、到着前の機内アナ
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ウンスでは -1 度になっていた。
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 飛行機とか新幹線とかで縮まった距離感には慣れたのだが、この気温差にはいまだに
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慣れない。


 特にご当地で出会った方言というのはないのだが、大阪の人はやっぱり大阪弁を使うなぁ、
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とは思った。
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 『東北電力ニュース 1999 新春号』に、八島社長と伊奈かっぺい氏の対談が載っている。
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その中で「各地の方言に特徴的な俚言を使わなければ、ある程度はどこの言葉でも通じる
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のではないか
」というようなことを伊奈氏が述べている。関西のタレントはこのパターンであ
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る、という。
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 以前、『大阪豆ゴハン』という漫画のことを取り上げたとき (「豆ゴハン」、「哀しみの豆ゴ
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ハン」、「さらば豆ゴハン」) 我々が知っている「関西弁」が実は本来の関西弁のごく一部で
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ある、という話をしたが、よそ行きの関西弁ができ上がっている、というのは一つの強みで
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あろう。
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 振り返って東北弁はというと、これはむしろ標準語サイドから押しつけられた形のステロ
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タイプ的東北弁が存在している、というのが実情である。あるいは、ドラマなどで、地域を
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限定せず、田舎であることを示すためだけに使われる方言は、東北弁をベースにしてい
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ることが多い。これに近い形の (順番が逆だが) 本来の東北弁は避けるべきものとなって
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いる。


 東京出張中、立ち食いそばを食った。
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 話は変わるが、「立ち食いそば」というのは実に都会的なものである。確かに、田舎に
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もあるが、ほとんどが鉄道の駅にある。町中にはほとんどない。
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 都会でも鉄道が主な分布域であることに変わりはないが、駅から離れた場所にもかな
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りの数がある。人の往来の量と質の違いに寄るものであろう。
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 閑話休題。
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 食券式の立ち食い店では、具 (というか種類と言うか) だけが印刷されていることが多
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い。券には「きつね」「たぬき」「天玉」としか書いてない。これをカウンターで店員に渡す
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ときに、「うどん」が欲しいのか「そば」が欲しいのかを口頭で伝えるわけだ。
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 で、\380 で買った「天ぷら」の券を持っていき「そば」と告げたのだが、そのアクセント
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が完全に秋田弁であったことに後で気づいた。
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 つまり、「 」だったのである。


 他に、訪問先の位置を確認する時、電話で「場所を教えてください」と言ったのだが、
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この「場所」もそうだった。秋田弁にしろ共通語にしろ「ば」の方が低いことに代わりは
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無いのだが、「ば」と「しょ」の差が、秋田弁の方で大きい。
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 共通語:ば しょ 秋田弁: しょ
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 こんな感じである。


 それでも立派に通じた。伊奈氏が言ったことが正しいことが証明されたわけである。
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ま、アクセントで弁別される単語でなかった (つまり「箸」と「橋」のような同音異義語がな
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かった) ということもあるだろうが。


 アクセントは変えにくいものである。
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 なら、それはそのままにして、よそ行きの秋田弁を確立する、ってのも一つの手かな、
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と思ったりする。



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第116夜「まいどおおきに」

shuno@sam.hi-ho.ne.jp