Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜
第97夜
哀しみの豆ゴハン
だいぶ前にとりあげた「大阪豆ゴハン」というマンガが、しばらくモーニング本誌
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を買うのをサボっていたら巻末の目次から消えていた。終わっちゃったの? そ
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んな殺生な。
このマンガのおかげで大阪弁にはかなり詳しくなったと思う。我々が普段、TVな
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どで聞いている大阪弁は、かなり標準語化されたものだったのだ。
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「たくさん」という意味の「ぎょうさん」は誰でも知っていると思うが、ボテボテ大阪
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弁では「ようさん」なのであるらしい。
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そもそも、なぜ「大阪ネイティブ度が高いこと」を「ボテボテ」というのだ? 捻りの
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かけらもない駄洒落を「ベタベタ」などと言うようだが、それとの関連は?
大阪の岸和田市と言えば、例の「だんじり」で有名である。
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聞くところによると、岸和田市で生まれ育ち、あの「だんじり」を見て育った人でも、
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長野の「御柱祭り」は恐いものであるらしい。
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話が逸れた。
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「だんじり」には巨大な山車が登場する。それを作る人がインタビューされている
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のをTVで見たことがある。その人が言うには「仕事をほうばると、出来が悪くなって
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信用を落とす」そうである。
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この「ほうばる」が大阪弁なのかどうかはわからない。その人個人の言い回しかも
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しれない。
大阪弁では、「プラスチック」が「プラッチック」となり、「首巻き(マフラー)」が「くん
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まき」、「夫婦(めおと)」が「みょうと」となる。
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どうやら、音便化がはなはだしい方言であるようだ。大阪もんは早口だからなぁ、
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と結論するのは早計である。
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例えば「取り替える」という単語があるが、これは江戸弁では「とりけぇる」、秋田弁
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では「とっける」となる。大阪はどうだろう。アクセントが変わりこそすれ、「とりかえ
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る」のままではあるまいか。
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何度か言った様な気がするが、誰でも楽したいんである。楽する手法と、楽する場
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所が各方言で異なるわけだ。
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そういや、「風がスース通って涼しい」とか言ったりするようだが、「ー」が一つ脱落
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するのは楽したいからか? 話のリズム、つまり拍子が違う、という話を聞いたことが
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あるような無いような。
前に、机を「提げ」たり、「つっ」たりする方言があるという話をした。
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ボテボテの大阪弁では「かく」と言うらしい。
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「大阪豆ゴハン」で、「テーブルかいでんか」という例文を見ただけなので、今ひとつ
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自信はないが、多分「駕籠かき」の「舁(か)く」と同じであろうと推測する。
「さいぜん」というのは、大阪の人がよく使う言葉で「さっき」という意味である。これ、
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古語辞典には当然のようにあるが、国語辞典にも載っていたりする。でも、大阪弁
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以外では聞かないと思う。
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因みに「最前」と書く。字にされると、確かにその通りである。
また話が逸れるが、上方落語は、漫才人気に押されて、昭和初期から戦前にかけ
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て、一旦、瀕死の状態にまで衰退したんである。これが戦後に復興して、実は復興途
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上だという人もいたりして、連綿と続いてきたとは言い難い。
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だとすると、現在の上方落語の大阪弁は、どんな大阪弁なのだろう。
「キズつく」ことを「キズいく」と言ったりするなど、いかにも方言というのだけでなく、
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独特の言い回しがたくさんあるようだ。
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例は前回の文章にたくさん挙げたのでそっちを参照していただきたい。まぁ、単行本
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が一番よい。
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それにしても、モーニングを買う理由がなくなったなぁ…。
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最新刊の11巻を見ながら一人涙する俺であった。
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shuno@sam.hi-ho.ne.jp