Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第797夜

四半的




 先週、弓道の漫画「的中! 青春 100%」を取り上げたが、それで思い出した。
 ネタ元は ANA の機内誌「翼の王国」。に「おべんとうの時間」を紹介したが、あれが載ってる奴。

 JAL も“Skyward”というのを出している。JAL には滅多に乗らないが、どうも合わない感じがする。
 昔、JR 東日本の「トランヴェール」を買っていた。これは「機内誌」というよりは「車内誌」だろうが、新幹線のグリーン車で飛行機と同じように座席ごとに置かれている。グリーン車に乗ったのは別にお金持ちだったからではなく、お盆だか正月だかの帰省ラッシュのときで、ほかに席がなかったから。なかなか良質の記事が多く、キオスクで売ってることがわかったので、買っていたのだが、途中で単なる観光案内誌になってしまって面白くなくなったのでやめた。

 手元にあるのは去年の 11 月号。おそらく、渋谷公会堂でのゴダイゴのコンサートを見に行ったときにもってきたやつだろうと思う。各地の情報が掲載されているので、方言が載っている事も多く、よくこうやって持ってくる。去年も「ゴッタン」という楽器の記事を紹介した。
 今回は、「四半的」。

 詳細は Wikipedia あたりを見てもらうと分かるが、宮崎県日南市飫肥で行われる、座って射る小型の弓である。「しはんまと」と読む。
 名前は、的まで四間半、矢が四尺半、的が四寸半と、すべて四つ半であることからくる。
 元は子供の遊びだったが、今では大人が楽しむものになっているのだとか。

 その「四半的」で使われる言葉、まずは「サイコー」。
 命中したときに「最高」という言葉をかけるのかと思えば、そうではなく「さぁ、いこう」なんだそうである。
 どういうイントネーションなんだろうかと思って、ちょっと YouTube の動画を覗いてみたのだが、あんまり「サイコー」の声が入っていない。いくつか聞いた範囲では確かに、「最高」ではなかったような気がする。
 むしろ「〜当たり」というのがよく聞えたのだが、なんと言っているのか聞き取れなかった。

 次は「拳固め」。
 動画をボヤっと見てると俵が的なのかと思ってしまうが、これは「四半的」。的は、それに貼ってある直径 14cm の円、そこまでの距離は 8m. それに命中させるには、精神集中と、要所要所での体の固定が必要。
 それには、酒が欠かせない
 これは娯楽なのである。
 焼酎を飲みながら射る。これを飲むとビシっとする。だから「拳固め」。
 ちょっと調べてみたら、この言葉自体は四半的専用というわけではないらしく、使用例がいくつも見つかる。その大半が、酒絡みのようだ。スポーツだけではなくて、地域の行事に関連した飲み会とかいうのもある。
「拳」だし、武道 (「拳」だから空手?) の世界でなんらかの行事 (「稽古初め」とか) を示す言葉が、範囲を広げていった、ということなんだろうと思う。
 なお、記事では「呑ん方 (のんかた)」という言葉が出てくる。秋田でも「のみがだ」と言って、飲み会のことを指すことがあるが、この「方」の使い方は面白い、と前から思っている。

「四半的」という焼酎があるらしい。つくっているのは松の梅雨酒造合名会社というところだが、商品紹介のページに載っていない。どうも、(弓の) 四半的専用で、店に置かれていない、宣伝もしていない、実質的に非売品、という特異な焼酎である。

 弓道の的は、白黒入れ違いになっているが、四半的の大会で順位や勝敗を決める場合は、黒く塗らず、同心円だけの的が使われる。これが「筋的」。読み方は書かれていないが、直径一寸半的が「金的」で「きんまと」らしいので、「筋的」も「すじまと」だと思われる。

 一度に5回射るらしいのだが、そのマークのつけ方が独特。「コ」を左右逆にした中に「十」を書く。これで五画。
 ぱっと見、源氏香みたいにも見える。

 に、スポーツには基本的に興味はない、なんてことを書いたことがあるような気がするが、数少ない例外の一つが弓道。構えがカッコイイ。昔、社員旅行で行った嬬恋のリゾートでアーチェリーをやったこともある。的に当たったのかどうかもう覚えてないが、気持ちよかった。
 ほかの例外というと、フリークライミングと吹き矢。
 MTB も含め個人競技ばっかり。「ぼっち」体質なのだった。




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