Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第760夜

GET A GOTTAN



 ANA の機内誌「翼の王国」6 月号に「ゴッタンを探せ!」という記事があった。「甑島の島歌復興譚」というサブタイトルがつけられている。

 その前に「甑島 (こしきじま)」という名前について。「甑島」という名前自体は前から聞いたことがあって、なんでそういう名前なんだろう、と思ってた。調べたところ、甑 (せいろ) に似た大きな岩があり、これをご神体とする甑大明神という神社があるそうな。
 と聞くと、割とストレートなネーミングという気がする。小笠原の血縁関係シリーズも気にはなっているが、それはまた別の機会に。

 で、ゴッタンである。
「箱三味線」「板三味線」という呼び方もあるらしい。
 シルエットは三味線なのだが、これは「箱」なのである。皮ではなく杉の板が張ってある。
「翼の王国」に紹介されていたのは KOSHIKI ART PROJECT 2011 の人たちだが、愛好家は少なくないらしく、単純に「ゴッタン」でググるだけで、演奏の様子を収めた動画がたくさん見つかるので聞いてみるとよい。
 印象だけで言ってしまってあれだが、津軽三味線と言うよりは、沖縄の三線。まぁ、津軽三味線は打楽器だという説もあるくらいなので、比べちゃいかんのかもしれんが。

「ゴッタン」の語源は諸説あるらしいが、「翼の王国」に載っていたのは鹿児島方言の「ごったましい (粗雑、素朴な)」一つだけ。ググった範囲では、PLANDO という会社が、中国の古楽器「古弾 (グータン)」を挙げている

 記事では、“KOSHIKI ART PROJECT 2011”の山下氏が、島歌について調べている仮定でゴッタンに出会ったと書いている。そのときに「郷土史を調べた」とあるのだが、確かに、鹿児島県総合教育センターの「音楽科」という記事 (PDF) でゴッタンについて触れている。これ自体は教師向けの記事らしく専門用語が多い。「メリスマ」ってなに?

 芸者さんのことを「太鼓三味線」と言っていたそうである。彼らは、「さんびゃーけー (結婚式)」や「いいふね (歓迎会)」などで呼ばれるのだそうだが、この語についての記事はネットでは見つからない。ゴッタンの記事のみである。甑島の言葉なんだろうか。

 山下さんたちがゴッタン演奏のために選んだ曲は、「里小唄」という曲だそうだ。昭和 40 年代に出た「こしきじま慕情」という歌のカップリングらしい (これはレコードだから「B 面」って言っていいのか)。
 運動会などで行われるダンスの曲として使われているので、メロディは誰でも知っているのだとか。そういう共有財産がある、ってのはいいね。
 歌詞が載っているのだが、「ヤイモスヤイモス」とあるのは合いの手だろうなぁ。

 ほかの記事からも。
 愛媛の岩城島を扱っている「島じまの直会 (なおらい)」。「でしゃばり」のことを「でべそ」と言うらしい。「でべそおばちゃんの店」という農家レストランがあるそうな。

 だいぶ、網戸のことについて書いたとき、沖縄に「月桃 (げっとう)」という植物があるらしいがなんだかわからない、と書いた。「素材の素」という連載が、それを使った紙について触れている。障子紙や壁紙として使われるらしい。
 きれいな字面だが、台湾名への当て字とのこと。

 大好きな「おべんとうの時間」は、時計の修理屋さん。40 近くなってから時計屋に飛び込んだというからすごい。電気工事、車の整備、釣具と手先は起用だったらしいが、すごい勇気。
 弁当を作ってくれるのは「おっさん」。この人は福岡の人だが九州の一部では「おくさん」が「おっさん」になる。鹿児島だったら「く」が音便化して脱落したのだろうかと思うが、福岡だからなぁ。

 去年の正月、民謡酒場みたいなところで津軽三味線に触らせてもらったことがある。意外に大きな音が出るのでびっくりした。
 ちょっと触ってみてからベンチャーズの「パイプライン」を弾き、見事に周りからのツッコミを得て楽しかった。
 ゴッタンの演奏画像もフォークソングが多いみたいだけど、こういう楽しみ方もありだろう、きっと。




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