秋田県生活環境文化部主催による「高齢者の交通安全『あきた弁川柳』」を読んでの文章、後編。
カギよごせ飲ます俺までバヂ喰らう
「車の鍵をよこしなさい。私まで罰を食らってしまうではありませんか」
これは新しい現象だろうな。飲酒運転の幇助の話。
しかし、この川柳の主人公は酒を「飲ま」せているわけで、鍵を取り上げるとかどうとか言う以前に、そもそも車で来た奴に飲ますな、というのが正解ではないのだろうか。
仕事の帰り道に飲み屋の前を通ることがあるのだが、ある店では必ず自転車が 5 台くらい並んでいる。あれって、
やべぐねの?
入選作は「喰」という字を使っているが、「食」との違いを調べていて困ってしまった。旺文社漢和辞典は「喰」を国字としているのだが、小学館は、意味不明の字だが日本では「食」と一緒、としている。
どごだりを渡ねぇでちゃんと歩道歩げ
「どこでも勝手なところを渡ったりしないで、ちゃんと歩道を歩きなさい」
この「
だり」は、「煮るなり焼くなり」の「なり」。「どこなりと行っちまえ!」みたいな言い方もあるが、それと同じ。
この川柳、よく考えるとおかしくね? 問題は渡る場所なんだから、この歩道は「横断歩道」のことだろうが、さすがに「横断歩道」を「歩道」と略すのは無理だろう。
公式訳の「自由に渡らないで」も不思議だ。なんでそんなに和らげる必要があるんだろう。禁止行為なんだから、「勝手に」でなければなるまいに。
「渡ねぇで」は「
わだねぇで」、「歩げ」は「
あげ」。
ことしはなんだか、カタカナの使用が多いような気がする。音が違う「
バヂ (罰)」、オノマトペである「
アヤッ」「
ベロッと」はわかるが、「
夜道ダバ」「
ヤザガネヤ」「
命ネヤ」はなんでカタカナなんだろう。
このコンクール、去年始まったわけではない。
俺の文章でも、2004 年の分を取り上げている。これは一部なので、ネットで確認してみたら、こんなのもあった。
反射材 着げで わぁどご わぁ守ろ
「反射材をつけて、自分を自分が守ろう」
というか、「私は自分で自分を守ろう」という意味のような気がする。「私はこうする。あんた達も自分のことは自分でやんなさい」というような。
じゃんご道 びっきの形で くたばるな
どういう意味だろう。逐語的に訳すと、「田舎の道、カエルの形で、死ぬな」ということなのだが。
たまに、酔っ払いが道で寝ていて車に轢かれる、という事故があるが、それのことを指しているのだろうか。
「
びっき」はカエルだが、何でかと思って調べてみたら、「ひきがえる」だそうで。そのままだったのね。「ヒキガエル」は、足を引きずるからだとか。飛ぶところに着眼したわけではなかったんだ。
これが 2004 年の分。
2006 年の分は
去年やったし、
先週のは 2007 年の分。
ちょっと抜けている。
県のホームページに行けばあるんじゃないの?
ないのである、これがまた。
辛うじて、2005 年の最優秀作が、広報に掲載されていて、その PDF が残っているだけ。これだって、
Google に残っているものの、県のホームページで検索しても出てこない。
入選作全部が載っているのは今年の分だけ。それどころか、去年以前のものは存在すら紹介されない。
どういうつもりなんだ、県庁。
関係あるような気もするが、「秋田弁 AND 交通 AND 川柳」とかでググってヒットするのは、その 2004 年版。これは、おそらく高齢者部門が新設されたというニュース性があったからだろう。それ以降はほとんど話題になっていない。
2 回だけを比べるのもアレだが、応募者は 2004 年から 2007 年で 4 割減、句数は 6 割減。
4 回でマンネリってのもすごいな。
ちなみに、2005 年の最優秀作は
ちょっと待で そのスピードだば おがでネガ
これもカタカナだなぁ。
「
おが」は、「あんまりだ」。「
が」は鼻濁音ではなく、濁音。
応募資格は、県内在住で 65 歳以上の人。
何でかと言うと、老人の交通安全について主体的に考えて欲しいから、だそうだ。上から降ってきた標語では他人事だろうな、確かに。
でもまあ、
先週、書いたように、老人達が交通安全に気をつけるようになったとはまだ思えない。
マンネリに陥ってる場合ではないのだが。