ついでなので、方言を使った交通標語の公募について調べてみた。
一杯あるのかなぁ、と思ったんだが、そうでもなかった。
標語自体はどうやら山ほどあって、いろんな人がホームページやブログに書いているが、どうも公募となるとそうそう行われるものではないらしい。
それはまぁなんとなくわかる。
毎年やっている秋田の例でも、それがニュースで紹介されるときには、秋田弁だかなんだかわからないアクセント・イントネーションになってしまうし、公式標準語訳も、方言の負の部分、鋭利な悪態を訳すことから逃げている。「公」にとってやはり方言はまだ扱いかねる代物だ、ということなんだろう。
それほど一生懸命探したわけではないので、それしかないとは言わないが、見つかったのは出雲と茨城だけだった。なんでだろうね。
まずは茨城から。主催は、
茨城県交通安全協会。
去年の 9 月が第一回らしく、その結果が、ホームページの「イベントの開催」に PDF で紹介されている。
秋田でのイベントとは違って年齢制限がなく、また、運転者・高齢者・歩行者向けという 3 ジャンルを別に募集、したがって、1,000 人・2,500 件と数も桁が違う。
全部というわけにはいかないので、気になったのだけ。
歩行者・自転車部門最優秀賞
事故の元 よかっぺ・いがっぺ かまわめよ
事故の元になるのは、いいだろう、かまわないだろう、という考え方である、ということだと思う。「
よかっぺ」と「
いがっぺ」の違いは不明。ニュアンスが違うのか、地域差なのか、年齢差なのか。
「だろう運転」、つまり、「あの歩行者は止まってくれるだろう」「信号は青になるだろう」「あの対向車は譲ってくれるだろう」と自分に都合のいい思い込みで運転することで、普通は戒められるが、逆の「歩行者はそのまま渡ろうとするだろう」「信号は赤になってしまうだろう」「対向車は譲ってくれないだろう」という「だろう運転」もある、と大分、前に聴いたことがある。
今は、「かもしれない運転」という考えがあるらしい。
迷ったら安全な側に倒す、というのは、プログラマの世界でもよく言われることで、俺としてはより悲観的な (後者の)「だろう運転」を押したい。
同部門佳作
いまちんとゆっくり行ったらいかっぺよ
「
いまちんと」は、「もう少し」。「今ひとつ」なんて言い回しもあるが、その「いま」だろうと思う。
かっぽるなタバコと一緒にマナーまで
「
かっぽる」は「捨てる」。言われればわかるが、「かっぽれ」との関係やいかに。
ばんかたはライト早めにつけっぺよ
「
晩方」。ネイティブ意外には違和感のある言葉かもしれないが、「朝方」「夕方」という単語もある。
高齢者部門佳作
やめっぺよフラフラ自転車あぶねえで
別に高齢者に限らないが、おっかない自転車は少なくない。
その最たるものが、停まれない自転車である。
この話をすると信じてもらえないことがあるのだが、ほんとうにいる。停まれない人が停まるときどうするかというと、自転車から飛び降りるのである。そういう人たちはほとんどスピードを出さないし、いわゆるママチャリだと前に飛び降りるのはさほど難しくない。で、バタバタっと 2、3 歩ほど進んでなんとか停まる。広い場所で一人でやる分にはいいが、交差点でやられると非常に心臓に悪い。
ほかに、曲がれないので角にくるたびに降りる人も怖い。
昨今では、メールを打ちながら走っている若い奴も相当に怖い。
いずれ、それが危険だということに気づかない鈍感さには恐れ入る。
のろくても紅葉マークじゃしゃあんめえ
これよく佳作になったな。紅葉マークだからゆったり見守ろうよ、ということなんだと思うんだが、「
しゃあんめぇ」にはややあきらめのニュアンスがあるような気がする。
孫乗せて危ねえまねはしねでくろ
まったく同感。子供を膝の上に抱いたままハンドルを握っている勇者を見たことがあるが、それ、事故ったら子供はあんたの腕の中でつぶれるんだぞ。
歩行者・自転車部門佳作
手を引いて渡ってやっぺ白い杖
「渡らせてやる」ではないのだな。いや、手を引いて一緒に、という意味だと思うんだが、「渡ってやる」…。
おっかねえところかまわず渡る奴
これは、
こないだの「
ベロっと出で行ぐ」に通じるものだ。
あぶねから着たらよかっぺ目立つ服
作者は中学生。ちょっと控えめ?
さすがに茨城で、「〜しよう」「〜だよ」という「
〜っぺ」のオンパレード。
全般に、やわらかめな感じがした。
勿論、俺はよそ者でそのニュアンスをきちんと理解しているとは言いがたいから、実は「ざけんなこのアホンダラスケが」というような作品もあったかもしれないのだが。
来週は出雲の分。