方言を使った交通標語。秋田県、茨城交通安全協会と来て、トリは
東出雲市。
ここは、「広報ひがしいずも」のバックナンバーで検索すると、2004 年以降の 4 回分が読める。同じく 2004 年から始めてるのに最新版しか読めないどこぞの県とは大違いである。
尤も、ここのは今年のがなんと第 16 回で、秋田なんかよりは歴史が古い。その分、12 回より前はどこに、という問題はある。
2004 年の金賞
まもうだで みぎとふだーを ようねみて かけらかさんこに わたらっしゃい
いきなりわからん。
「右と左をよく見て」はわかる。最後の「わたりなさい」もわかる。
「
まもうだで」?
「
かけらかさんこに」?
見当もつかん。どこで切れるのかも想像できない。
お手上げ。
ん、「
まもうだで」は、「守ろうよ」「守ります」?
銀賞
わっおべた 無灯火運転 危ねがや
調べたところ、「
おべた」は「びっくりした」。
ということは、俺が
前に、島根の交通標語「気をつけろ おべた時にはもう遅い」を、「覚える」だと思って「気づいたときには」と解説したのは大嘘、ということになる。すまん。
しぇたもんだ 携帯しながら運転は 危なでいけんで やめーだが
「
しぇたもんだ」は「いいかげんにしろ」「けしからん」。
「
危なでいけんで」は分解不能。「危ない」と「いけない」が並んでいるのだろうか。
作者は小学生 (当時) だが、勿論、この「携帯」は「携帯電話」のことである。
まがーかど おちらと曲がれ 危ねけん
最初の作品で「左」が「
ふだー」になっていたが、ここでは「曲がり角」が「
まがーかど」になっている。ラ行の長音化は島根弁の特徴だそうだ。
「
おちらと」は調べるまでもなく「ゆっくりと」。「えっちらおっちら」との関連はいかに。
銅賞
何しちょーや たばこ飲酒運転 事故すーで
子供はタバコには厳しいものである。
くわえタバコを褒める人も少ないが、タバコを吸いながら運転することをとがめる声もあんまり聞かない。
赤信号 急なとびだし おぜことだ
「
おぜ」は「おぞい」で「怖い」ということであろう、というのは容易に想像がつくが、確認してみると、この形そのものは全国に広がっていることがわかった。
「古い」「粗末」「質が悪い」が北陸・中部・東海に広がっているが、なんか微妙な感じがあって、同じ県内でも意味がずれてたりする。悪い意味の単語であることに違いはないのだが。
よーに見て あいまちせんやに えのーだで
これもわからん。最初の「よく見て」だけわかった。
調べたら、「
あいまち」は「怪我」のことらしい。「過ち」か?
「
えのー」もわからん。「じゃけえーのー」という語尾は一杯見つかるのだが、これを除去していった結果、どうやら「帰る」ということらしいということがわかった。「去ぬ」と対比している文章を見かけた。
つまり、「帰り道だから」ということだろうか。
安全運転 今日もしちょーね だんだんね
「
だんだんね」は島根の特徴的な表現。「ありがとう」である。字はそのまま「段々」で、「重ね重ね」という意味。
さて、翌年の 2005 年は銀賞から。
出雲路は かけらずおちらと たばこして
「
おちらと」はすでにやった。「
かけらず」は「駆ける」で「急がずに」だろうと思う。
「
たばこする」は出雲のみならず山陰で使われる。「休憩する」という意味。別に、喫煙しなくともかまわない。
銅賞
えのーとき つばえちょうと ひかれーで
「
つばえる」は「ふざける」。
「帰り道 ふざけていると轢かれるよ」。お、これも五七五。
あぶねがな メールけいたい しぇたもんだ
こないだメール入力中の自転車が突っ込んできて正面衝突しそうになった。
運転手さん 止まってごいて だんだんね
自転車も 止まってごせや あぶねけん
下のほうは銅賞だが、どっちも「
ごせ」を使っているので並べてみた。「ください」で、上は「止まってくださって」、下は「止まってくださいね」だと思う。
車が止まるのは当然のことで、そこまで丁寧に言うこともないと思うのだが。
佳作
おっちらと 行かや誰んもの 道だけん
みんなの道路だからゆっくり行こうよ、という意味であろう。余裕が感じられてよい。
つばえーな ほがみしちょーと じこすーで
「
つばえる」はいいとして、「
ほがみ」。
「脇見」「余所見」のことだそうである。「
ほが」って?
しめらっしゃい 気持ちとベルトと 酒のふた
子供は酒には厳しいものである。
つづく。