東出雲市の「広報ひがしいずも」に紹介されている、出雲弁による交通安全標語、後編。
2006 年。
金賞
ゆとりもち ちょんぼし はやい しゅっぱつで
ひらがなで書いてあるせいもあるのかもしれないが、なんかやわらかくていい雰囲気である。
わたーとき かならずみーだで みぎふだり
秋田でも、「左」を「
ふだり」と言ったり、「おひたし」を「
ふたし」などと言ったりするが、それと同じ現象だろうか。
なお、「左」には「
しだり」という形もある。
あわてんこ おちらといくだで えきもどー
うむ、「
えきもどー」ね。「駅」ではないのだろうな。「行き戻り」で、「行き帰り」のことか?
わかったような気になってしまったが、「
あわてんこ」も詳しくはどういう形なのか不明。「あわてないで」なのだろうか。
手上げーけん しっかーしっかー 見てごしない
「手を上げるからしっかり見てね」という意味だろう。「
しっかーしっかー」にテンポも感じられて、実に子供らしい表現。
これを読んで、「けっ」と言えるような非情な輩からは免許証を剥奪するべきである。
通勤路で、こういう T 字路がある。

信号がこういう状態だと、横断歩道を渡っていいはずなのだが、矢印の方向に進む車はほとんどが止まるどころか徐行もせずに突っ込んでくる。渡ろうとすると睨まれる始末。お前らも免許剥奪だ。
おこらしと えがおで出ーだで じこすーで
む、全然わからん。
最後のは「事故を起こすよ」ということだと思うんだが、前半とつながらない。
最初のは「怒る」の変形か?
「怒らずに笑顔で出かけようよ。そうじゃないと事故を起こすよ」?
昨年分。
この金賞は秀逸である。
交通ルール だ〜のためかね 何のため
うわ、根源的な問いかけだ。
免許剥奪予備軍はじっくり考えられたい。
わたーだね 車が過ぎーまで 待っちょれよ
作者は子供だが、どうやら運転者視点。優しさあふれる作品。
ちょちょくさもん信号見んとあぶねぇーぞ
褒めてるんではないな、ということはわかったが、さすがに正確なところは調べないとわからない。「
ちょちょくさもん」は「慌て者」。
あだんけ〜 急な飛び出し危ねがな
調べたが、「
あだんけ〜」は不明。間投詞だとは思う。「どんだけー」の親戚ではないんだろうな。
なんか子供の応募が多いなぁ、と思いながら読んでたのだが、よく見ると、東出雲町交通安全協会の下意東分会が、意東
(いとう) 小学校の 5・6 年生を対象に実施しているコンクールらしい。
そういうのが 16 年も続くなんて、すげぇ話だと思う。
が、よく見ると、作品が少しずつ減っている。単に応募する子が減っているのか、それとも生徒数自体が減っているのかはわからない。まぁ、大きなお世話かもしれないが。
出雲についてはもう一つ、ページがある。
奥出雲多根自然博物館の、
交通安全仁多弁標語番付表である。仁多郡交通安全協会布勢支部の許可を得て、とのことだが、公募なのかどうかについては説明がない。
初めて見たときには、「うわ、解説ねーよ」と思ったのだが、標語は画像で、カーソルを持っていくと標準語訳が出てくる。また、前頭より下には解説もある。
東の関脇
そろそろ とばんと おぞいよ まがーめは
「
とばんと」がわからないんで句意もつかめなかったのだが、「
とぶ」で「走る」という意味だということに思い立って解決。曲がり角はゆっくり走らないとおっかないよ、ということであろう。
小結
気いつけらっしゃい くーまがじじらに とーる道
「
じじらに」は「しきりに」「たえまなく」だそうである。
西の関脇
わけもんの とっぴゃーちな運転が 事故のもと
気持ちはわかるが、年寄りのふらふらした運転も相当に怖い。
同じく関脇
こじんだら きょうのもーけは ぼーどねぇ
全然わからんが、真ん中が「今日の儲けは」だということに気づいたら一気に解決。ものすごく実際的な標語だ。まぁ、事故ったら吹っ飛ぶ儲けは一日程度では済まないはずだが。
小結
せわーないかね そげな運転で スピードで
意味は見当がつくが、「世話がない」というのが、「大丈夫か」てな意味になるんだね。
あただな発進 だましのブレーキ 事故のもと
「
あただ」も「
だまし」も「急だ」、という意味らしい。形が形なだけに、ネットでの確認が難しい。
ばんかたは 歩行者、自転車 まーじ見えん
この「
まーじ」はどうなんだろう。若者言葉ではないと思うんだが、これまた確認が難しい。秋田では「
まず」「
まんず」が似たような意味を持つが…。
なんごとも なあてすまんと うちのばば
これ、訳が「車なので酒も出せずすみませんという家内」となっている。多分、「
なんごとも なあてすまん」というのは、お客さんが来たときに使う言葉なんだろうと思う。だから、車だから遠まわしに酒を出すのを断る場合にもこう言うのだろう。
まぁ、部外者のセンスではこの辺が限界。
6 月頃のことだが、友達の車に乗っていたとき、すれちがえないような狭い道路に入りかけたところで、前に車椅子の人を見つけた。運転していた彼は、すかさず別のルートに切り替えた。
別にクラクションならしたりしなきゃいいじゃん、と考える人もいると思うが、後ろに車がいる、というだけで圧迫要因、大概は脇によけようとする。徐行で安全運転は最低限のマナーだが、それ以前に、車椅子を脇にどかす、ということをよしとしない。こいつと友達やっててよかった、と思ったことであった。