Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第260夜

怪獣一本釣り




 秋田でも、3 ヶ月遅れで「ウルトラマン コスモス」の放送が始まった。第 2 話の放送は例の戦争の件で延期となったが。“cosmos*1”が戦争に振り回されるという、洒落にならん事態ではあった。

 怪獣は山の中なんかに登場することが多いから、必然的にその目撃者や被害者は方言話者となる。映画ならともかく、その頻度の割に、言葉遣いが重視されることは少ない。98 年まで放送していた、「ティガ」「ダイナ」「ガイア」のいわゆる「平成三部作」でも同傾向である。*2
 が、こないだオープニングで見慣れないモノを見た。テロップで、「方言指導」というスタッフが紹介されたのである。確認したわけではないが、ウルトラ シリーズでこういう役割の人の名前が出たのはおそらく初めてだろう。
 エピソードのタイトルは「怪獣一本釣り」。
 察しのいい方はお気づきであろう。勿論、土佐弁である。
 対怪獣組織である Team EYES のドイガキ隊員が土佐出身で、大学入学のため東京にやってくるときに、父親に勘当されていた、という設定。
 地中に潜り込んでいる怪獣をひきずりだすため、戦闘機による「一本釣り」を提案したドイガキが、その実行を命ぜられ、悪戦苦闘の末、作戦に成功する、というもの。
 その様子を (おそらく) テレビで見ていた父親からカツオが届けられた。手紙も添えられており、これで父親を見返すことができたか、と喜ぶドイガキだが、手紙には、ただ一言
ヘタクソ
 と書かれていた、というのがオチ。

 さて、俺の知っている土佐弁と言えば、アレである。
 南野 陽子の「スケバン刑事 II -少女鉄仮面伝説-」。
 最近、聞いた話なのだが、この二代目麻宮サキが使っていた土佐弁はやや古いのだそうだ。おそらく、雰囲気作りのため、意図的にやったものと思われる。なお、手元の資料では土佐弁指導のスタッフについては明記されていない。

 「コスモス」の方だが、「方言指導」を掲げた割に発話量は多くない。まぁ 30 分番組だからしょうがないと言えばしょうがないが。
 これが、麻宮サキの土佐弁と全く違うのだ。
 勿論、麻宮サキは女性で、ドイガキ隊員の父と同じ言葉遣いであるはずがない。サキの土佐弁はやや古いものであることもわかっている。それを加味してもまだ違う。
 これはおそらく、麻宮サキの土佐弁が、ステロタイプ的な土佐弁だったからではないだろうか。
 前にも書いたが、「スケバン刑事 II」では、二代目麻宮サキに坂本龍馬を重ね合わせようとした雰囲気がある。つまり、土佐を強調する必要があったものと思われる。
 ドイガキ父の場合、非常にリアルなのだと思う。
 勿論、俺は土佐の人間ではないので確証はない。憶測である。
 一つ気になるのは、ドイガキ母の言葉遣いが、やや「疑似方言」っぽいことである。これもリアルなんだろうか。誰か教えて欲しい。

 特撮番組のリアル傾向はここ数年、強くなっている。
 去年の「仮面ライダー クウガ」や今年の「アギト」が、仮面ライダーの世界に警察がいるんならこう動くだろう、というのをリアルに描いている。
 対する「百獣戦隊ガオレンジャー」のリアリズムは地名に現れている。「オルグ」と呼ばれる怪人が出現すると、テロップで地名が出るのだが、これが「A 市」とか「とある」とかではなく、それらしい名前になっている。先週のエピソードでは「北関東市」だった。
 これなんか、5 年前なら一笑に付されたかもしれないが、「さいたま市」「西東京市」が生まれた今となっては、あるかもしれない、でも恐らくないだろう、という絶妙なネーミングとなっている。

 年末で特撮と言えば「ゴジラ」だが、今年のは舞台が静岡〜東京だそうで、首都もあいかわらず東京らしいので、方言の出番はなさそうである。
 ヒロインは青森の星、新山 千春
「千年の恋」というのもある。これ、南野 陽子が朧月夜を演じているだけでなく、「特撮監督」がいるという、れっきとした特撮映画なのである。
 密かに期待している。




*1
 この場合、「秩序」。(
)

*2
 どうでもいいことだが、「ウルトラマン ティガ」冒頭で怪獣ゴルザに襲われるのは秋田市だし、ウルトラマンの石像が見つかった「ティガの地」は秋田と岩手の県境付近である。
 聞くところによると、鹿角市にある黒又山は人工建造物だ、という証拠があるらしい。ピラミッド説もある。(
)



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