Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第217夜

お正月の方言を写そう



 年末年始といえば、お笑い番組である。
 去年の正月の収穫は、いっこく堂。あの衛星中継には感服する。俺、最初、ディレイを使った芸かと思ったもん。ヘッドセットつけてるし、おぉハイテク、なんて見当違いに関心していた。
 今年の収穫はコージー富岡の桂歌丸。タモリだけかと思ったら、色々やるんだな。歌丸をやる奴はあんまりいないが、これはそっくり。

 寄席芸というと、東京と大阪が中心である。中心というより、他にはない。
 とは言いながら、出身地は散っている。桂歌丸と三遊亭小遊三が横浜、林家こん平が新潟で、全て東京の落語家。紳介・竜助が京都、B&B が広島と岡山で大阪芸人。
 酒井くにお・とおるという大阪の漫才師がいる。左の、背の高い病弱そうなのが弟のとおる。右のカマっぽいのが兄のくにお。くにおの「とおるっちゃん!」というのと、とおるの「ここで笑わんとあと笑うとこないよ」というのが得意技。
 この二人、岩手出身なんである。
 珍しい例ではあるまいか。どういう経緯で岩手から大阪なのか、親の転勤か、漫才の本場は大阪じゃ、と思ったのか。目下調査中。
 言葉遣いはきっちり関西弁。

 にも触れたが、大阪の芸人は大阪弁でなくてはならないようである。
 B&B、紳介・竜助、さんま、とどれも大阪出身ではないが、大阪弁風の言葉遣いである。勿論、大阪ネイティブからすれば、あれは正調ではない、という異論があるだろうが。
 広島弁と岡山弁ではいけなかったのだろうか。

 年末年始というと長時間ドラマが放映される。
 こらえ性がないので基本的には長いドラマは見ないのだが、今年は NHK の『四千万歩の男』を見てしまった。伊能忠敬の物語である。
 なんのことはない、スケバン刑事一色を去年から引き継いで、南野陽子が見たかっただけなのだが、わずか 2 シーンのみで大いに拍子抜け。それはそれとして、浅香唯と並んで、美人になったなぁ、としみじみ思う。
 さて、忠敬が見事に幕府をだまくらかして北上する途中、津軽生まれの娘を拾う。
 この娘が、見事な津軽弁なんである。
 いや立派。俺が聞き取れなかった部分もあるくらい、きちんとした津軽弁であった。
 どっかで見たなー、この姉ちゃん、と思いながら最後のロールを追っていたが、名前を見て納得。新山千春ではないか。
 この人は青森出身 (青森のどこ?)。ジャングル TV で見てる限り、そう方言色が濃いとは思ってなかったが、見事。
 方言指導の人がついてはいたようだが、熱の入った芝居も含め、ちょっと見直した。「なぞの転校生」のビデオ、探してみようかしらん。
 グラビア系*1だから方言話者であることを前に出すのは決してプラスにはならないと思うのだが、そう考えること自体、既に時代遅れなのかもしれない、と思ったりもする。まぁ、真面目なドラマだからマイナスにはならない、と判断したのかもしれないが。
 あの早口の津軽弁に字幕をつけない、という決断をした製作側にも拍手。
 若干の違和感が無いではなかったが、それが本人の言葉遣いのせいか、全国向けにマイルドにしたせいなのかは不明。

 暮れに、高田みづえ (指宿出身) のレコードを入手した。この人の最後のアルバムで、各曲にまつわるエピソードが、本人の声で収録されている。
 このナレーションが、一部鹿児島風。
 引退直前だから、東京に来てからなんだかんだで 10 年位にはなっているはず。最後まで東京弁にはならなかったようだ。
 尤も、相撲部屋のオカミとして、その後も東京住まいのはず。全くメディアに出てこないから、今の言葉遣いがどうかはわからない。

 大河ドラマの「北条時宗」は、今のところ、あんまり方言とは無関係。
 舞台は、鎌倉と京都と博多あたりになると思うのだが、今のところ、鎌倉中心。標準語。
 今は、外国語の多用が目立つ。博多はどうなるんでしょうかね。
 公家は一応、公家言葉なのだが*2。ほぼ常任と言っていい堀井令以知がついている。尤も、時代劇の言葉遣いは脚本家によって違う。ジェームス三木の「葵」では文語表現が多かった。

 それより、方言とは関係ないが、オープニングのロールが気になった。
 大河ドラマの常として、最初の数話では主人公が登場しなかったり、子役だったりすることが多い。例えば、第一話は時宗が生まれる前の時代を描いている。和泉元彌は、テーマミュージックのタイトルの前に、ちらっと出てくるだけである。
 これを「プレタイトル」と表記していた。配役紹介のときに
(プレタイトル)
北条時宗

  和泉 元彌
 と書いてある。
 この「プレタイトル」という単語はそんなに一般的なものなのか?
 そもそも、子役と和泉元彌と二人の時宗が登場するのならまだしも、タイトルの前に出てきただけなのだ、ということを明示する必要があったのだろうか。

 目下の「北条時宗」最大の収穫は、あのロゴであろう。モンゴルの文字に着想を得たものだと思うが、実にすぐれたアイディア、かつデザインだと思う。
 オープニングの CG はいいが、大仏が倒れるシーンはちょっと安かった。

 去年から、俺のテレビ談義みたいになっちまってるなぁ。気にしないけど。




*1
 バラエティ系か?


*2
 お膳をひっくり返していた九条 頼経は、「ウルトラマンガイア」で現場指揮官の堤チーフをやっていた宇梶剛士。




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