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peech:
Shuno の方言千夜一夜
第250夜
おなじみ大爆笑の方言企画
日本テレビ
の「ズームイン!朝」で「失礼だったら許してね 知らないとビックリする我が町の方言」という特集をやっていた。
あぁ、また方言を笑い者にしてやがる、と思いながら、一応、ビデオに録って見てみた。
父と娘に向かって「
ふとってますね
」と言う。あまりに
ふとって
いるので「
あい、ふとったふとった
」と繰り返す。言われた方が秋田弁話者でない場合は、普通、激怒するであろう。
趣旨はこういうこと。ある俚言形を、別の地域のルールで解釈することによって生じる食い違いがテーマである。
この場合の「
ふとった
」は「似ている」という意味である。「等しい」→「
ふとしい
」→「
ふとった
」という解説があった。
俺が知っている形は「
ふとじだ
」「
ふとづだ
」である。これが間に挟まるのじゃないか。「
ふとしい
」→「
ふとじだ
」→「
ふとった
」てな具合で。実は、「一つだ」かと思っていた。
今の若い娘が、父親に似ていると言われて喜ぶかどうかは疑問だ。どのみち怒られそうな気がする。
青森放送では「元気よく失礼に参りましょう」と切り出す。
身長の大きい人に向かって「
じゃまだ
」という。
これは「様」で、特異な様子を言う。つまり「あら大きいわね」と言われているのである。この場合、なまじ意味が近いので始末が悪い。
更に、瀬戸の「
どぶす
(「伏す」で「寝る」)」、徳島の「
せこい
(「苦しい」で「満腹」)」、山口の「
じげ
(「地下」で「地元出身者」)」、八戸の「
お静かに
(「気をつけて」)」、岸和田の「
しんでる
(「内出血している」)」と続く。
岸和田あたりになると失礼ではなくなる。企画が息切れしたようだ。
まぁ、面白いっちゃ面白い。
各地の芸能人を使って、楽しく紹介しようとしている、というのはわかる。
冒頭で、秋田の由利地方で、「です・ます」に相当する「
はげ
」というのが紹介されていた。「
じげ
」もあったことだし、どうやら頭髪にはこだわりがあるようだが、それと一緒で、笑いながらも実は深刻ってこともあると思う。
これについては
NHK
の「
ふるさと日本のことば
」でも多数、出てきていた。何かをしてあげたら「迷惑だ」「
耐え難い
」と言われたとか、「
二階から転んだ
」と聞いて青ざめたとか。
でも、「
めぐせ
」が津軽では「恥ずかしい」、南部では「醜い」で、深刻な結果を招いてしまった、なんて
話
もあるのだよ。
このテーマの特徴は、俚言形と標準語形の衝突だ、ということである。
つまり、東京本社からやって来た上司に食事の招待を受けたときに「
せこい
」と言ったら、という話。
*1
だが、「
せこい
」と言う方では、方言話者でない人には通じないだろう、ということは承知しているし、「標準語」という敬語体系ができているから、そういう局面って減っていると思うのだが。無いとは言わないけどさ。
「
じげ
」が「地元出身者」であることを知っている人と知らない人の組み合わせ、というカップルを見つけてきて、「俺、実は
じげ
じゃないんだ」「あたし、
じげ
じゃないの」と言わせてみた、という様子を見て思ったのだが、「
じげ
」が通じなくなっていることが実はポイントなのではあるまいか。
秋田だって「
ふとじだ
」「
ふとった
」がどれだけ通じるか疑問である。「
じげ
」がどれほど使われているかは知らないが、「ふとじだ」を使用する層は割と高年齢層に偏っている。つまり、地元民同士でこうした衝突が起きる可能性の方が問題なのではないか。
*2
今回のタイトルは、コーナーの冒頭で秋田放送のアナウンサーが言った台詞である。どうやらしょっちゅうやっているらしい。こういう番組で繰り返し取り上げることによって、方言話者が持っている方言に対する劣等感が払拭されるのならは、それはそれでいいのかもしれない。
同時に、他の地域の言葉について好奇心を持ってもらえれば言うことないが、誤解や蔑視が生まれるのが恐い。
またこの話で恐縮だが、
ふとった
で思い出した。
長らくの業務爆発状態。体調維持しようと思い、三食きちんと取り、疲れたな、と思ったらドリンク剤なり栄養補助食品を取っていたら、5 ヶ月で 5kg 太った。
ところが、更に忙しさをました 7 月から 8 月前半にかけての 1 か月半で、同じような食生活にもかかわらず 5kg 痩せた。
数字としては以前の体重に戻っただけなのだが、いかに非人間的な勤務状態だったのかを痛感した。
社畜はこの世で最悪の生き物である。
*1
「ケチ臭い」の「
せこい
」は、本来は関西起源。
↑
*2
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、
無明舎出版
)』には「似ている」が載っていない。ちょっと抜けが多くはないか、この本。
↑
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