1997年7月1日号 225
高カロリー輸液とアシドーシス
緊急安全性情報
平成7年4月の適性使用情報配布後も高カロリー輸液療法施行中重篤なアシドーシスが15例(死亡7例)報告されています。このため、高カロリー輸液療法施行中は必ずビタミンB1を必要とすることから、ビタミンB1の併用を添付文書の「警告」、「一般的注意」の欄に記載し、注意の徹底を図ることになりました。 |
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ビタミンB1を併用せずに高カロリー輸液療法を施行すると重篤なアシドーシスが発現することがあるので、必ずビタミンB1を併用すること。
ビタミンB1欠乏症と思われる重篤なアシドーシスが発現した場合には、直ちに100mg〜400mgのビタミンB1を急速静注すること。
また高カロリー輸液療法を施行中の患者では、基礎疾患及び合併症に起因するアシドーシスが発現することがあるので、症状が現れた場合には高カロリー輸液療法を中断し、アルカリ化剤の与薬等の処置を行うこと。
<一般的注意>
高カロリー輸液療法施行中にビタミンB1欠乏により重篤なアシドーシスが起こることがあるので、必要量(1日3mg以上を目安)のビタミンB1を併用すること。
*高カロリー輸液療法施行中に必要なビタミンB1は保険の適応となっています。
関連項目 アシドーシス、乳酸アシドーシスの輸液療法
マグネビストによるショック、アナフィラキシー様症状
(ガドペンテト酸ジメグルミン:MRI用造影剤)
・本剤の使用にあたっては、必ず救急処置の準備 を行うこと。
〜使用後も患者の状態を十分に観察すること。
・気管支喘息の患者には原則として使用しないこと。
〜気管支喘息、アレルギー性鼻炎、発疹、蕁麻疹等を起こしやすいアレルギー体質の患者ではそれ以外の患者よりも高い頻度で重篤な副作用が発現するおそれがあるので、診断上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること。
・アレルギー体質について十分な問診を行うこと
*本剤を髄腔内に使用すると重篤な副作用を発現するおそれがあるので、髄腔内には使用しないこと。
マグネビストの発売後約8年9ヵ月(推定使用患者数 約311万人)に、ショック アナフィラキシー様症状を 来した症例が75例(10例が気管支喘息の患者)、うち3例の死亡例(2例が気 管支喘息患者)が報告されています。
PFD:pancratic function diagnostant
膵臓機能診断
膵のキモトリプシンで特異的に分解される合成基質BT-PABA(消化管からは吸収されない)を服用し、尿中に排泄されたPABA(小腸より吸収され、腎から排泄される)を測定し、回収率を求めることにより、膵外分泌機能(正常値は80%以上)を求める方法。
薬の服用と蓄尿だけでできるため患者の負担の少ない検査として頻用されています。
膵酵素基質を内服すると、腸管内で膵酵素作用によって分解され、その分解産物は腸管から吸収されるので、血液、呼気あるいは尿について分解産物を定量すると、間接的に膵酵素分泌能が推定されます。膵キモトリプシンによって特異的に分解されるN‐benzoyl‐L‐tyrosyl‐p‐aminobenzoic
acid(BT‐PABA)を服用し、6時間の尿中PABA(パラアミノ安息香酸)を定量するBT‐PABA testが最も一般的です。
外用剤の部位別経皮吸収量
外用剤の経皮吸収は皮膚の性状により異なります。
1,乳幼児の皮膚は角質層が薄いため、経皮吸収が亢進します。
2,老人の皮膚も角質層が薄いだけでなく、皮膚表面脂質の欠乏があり経皮吸収が更新しています。
3,顔面、頸部、腋窩、膝膕(膕:ひかがみ膝の後ろのくぼんでいる所。)、外陰部など汗のたまりやすい部位では経皮吸収が更新し、薬に対する反応性がほかの部位と異なるため、使用上注意を要します。
4、乾燥した皮膚では目に見えない角質層の亀裂が存在し、皮膚表面脂質の欠乏があり、皮膚防御膜の傷害された状態となっているため、経皮吸収の亢進が見られます。
5、炎症反応を示す皮膚、びらん、潰瘍をきたしている皮膚でも経費吸収が更新します。
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前腕(内側)1とした場合(ヒドロコルチゾンでの試験)
前腕(外側)1.1
頭皮 3.5
頬
13.0
前頸 6.0
腋窩 3.6
手掌 0.83
陰嚢
42.0
足首 0.42
足底 0.14
出生時体重と成人後の高血圧 2011.2.1
No.537
関連項目 倹約遺伝子
Thrifty
phenotype仮説
遺伝素因ではなく、胎内で獲得した発現形態が発症を規定するという仮説があります。
これは胎内で低栄養状態になると、ネフロン数(腎機能の最小単位)の少ない腎臓やβ細胞数の少ない膵臓の低体重児が生まれます。出生後、一転して過剰栄養や食塩を取りすぎると、年齢とともに徐々に血圧が上昇したり、成人に達して後、高血圧症や2型糖尿病が発症するという仮設です。
エネルギーを最大限に利用しなければならなかった時代から、文明化によって膵β細胞に対する過剰刺激が加わるようになると、高インスリン血症やインスリン抵抗性が発現し、最終的にはβ細胞が枯渇し糖尿病になるという理論です。
β細胞が減少した状態に、過剰負荷がかかるとますます細胞数が減少し、ついには糖尿病になるという悪循環過程が生じます。
胎児として前代と同様の低栄養環境に曝された結果としてネフロン数やβ細胞数の減少という節約型の発現形質Thrifty
phenotypeを獲得し、出生後には食塩負荷、過剰栄養に曝されるため、高血圧や糖尿病になるという考え方です。
メタボリックシンドロームではなく、small baby
syndromeと呼ぶべきだという提案もあります。
本態性高血圧症は遺伝することが知られていますが、一般に、子の血圧は父親よりも母親の血圧と強い相関を示します。母親が妊娠中高血圧症であれば胎盤機能が低下し、胎児の発育が障害される傾向にあります。このように考えると、高血圧素因がX染色体に一部リンクしている可能性のほかに、母親を通じて高血圧が発現形質を伝達させている機序も考慮する必要があります。
Oligonephropaty仮説というのもあります。胎生期の様々な異常に伴って出現するネフロン数の減少する病態です。
母親が低蛋白食を継続して摂取していると、胎児の出生児体重は減少し、それに比例して腎臓は小さくなり、ネフロン数も少なくなることが知られています。
妊婦の栄養状態、特に蛋白摂取量が胎児のネフロン数、ひいては成人後の血圧を決定する可能性が考えられます。
悪循環
ネフロン数(濾過面積)が減少→全身と糸球体血圧が上昇→糸球体硬化病変が進行→ますますネフロン数が減少→成人になって高血圧
{参考文献} 治療 2005.3 増刊号 名古屋市立大学大学院医学研究課臨床病態内科学 教授 木村玄次郎
SGA
small for gestational
SGAとは、お母さんのお腹の中にいる在胎数週に相当する標準身長・体重に比べて、小さく生まれること。在胎週数に比して小さい児
約90%のSGA児は2年以内に正常範囲の身長になるが、2歳までに成長が追いつかない場合には、SGA性低身長症が疑われ、健常小児に比べると平均よりやや早く思春期に入る傾向があり、多くは成人身長も低身長に終わり、成人の低身長の約20%を占める。SGA性低身長症に対しては成長ホルモン(GH)治療が有効である。SGAで出生した小児は将来のメタボリック・シンドロームとの関連が指摘されているので、耐糖能、脂質代謝などに注意し経過を観察します。
成長障害は成長ホルモンや甲状腺ホルモンの不足でも起こりますが、これは治療が可能で、早期治療が重要です。
その他の成長障害は、SGA低身長症、骨や軟骨の胃常、心臓・腎臓・肝臓などの病気や、愛情遮断性症候群(両唇からの虐待や愛情欠如)で生じる精神・身体症状など心理的・社会的な要因が挙げられます。
GH療法では、長期間の治療が必要となり、子供のストレスを減らしてあげられるように、納得がいくまでよく話し合う必要があります。また、愛情を注ぎ成長を見守っていくことが必要です。