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1997年2月1日  215

PTP誤飲の現状と対策

いつも飲んでいる人が不注意で!

PTPとは
Press Through Package
  押す  通る  包装 

 この10年間に日本で239件の誤飲が報告されています。

 PTPの誤飲により、その硬い鋭角部が食道、胃などの粘膜を損傷し、潰瘍、穿孔などを発症させます。

   最近、添付文書の改訂で「PTPシートをはずさずにそのまま飲まないように患者に指示すること」との注意書きが記載されるようになりました。

 統計によりますと、シートをはずさずに飲んだという報告は、年間平均24件で、誤飲患者の平均年齢は56.3歳と、比較的中高年齢層に多い傾向が見られました。 PTPシートをはずさずに飲んだ理由

・外出のため急いで飲んだ。
・会話しながら飲んだ。
・テレビをみながら飲んだ。
    
 などがあげられ、患者側のちょっとした不注意が大半を占めています。

{参考文献}月刊薬事 1997.1

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患者の主訴
 PTP誤飲患者の来院時の主訴は、胸痛、胸部異物感、嚥下時疼痛、咽頭痛、咽頭異物感等でPTPを誤って飲みこんだと自覚して受診したケースも27%ありました。

患者の原疾患
 PTP誤飲患者の原疾患は、高血圧、不整脈、高脂血症などの循環器疾患、痴呆、老人性痴呆、パーキンソン病、うつ病、自律神経失調症などの神経系疾患が多くみられます。

 その他として慢性腎不全、慢性膵炎、慢性中耳炎など慢性的な疾患が多くなっています。

 男性24名、女性32名で若干女性の方が多いが、特徴的な傾向はみられません。
  誤飲発生時刻と発生要因
 PTP誤飲の発生時刻は夕方および夜が多く、その要因として、「薬を一度にまとめて飲んだ」
「粉薬(他の薬)と混ぜて飲んだ」「脳貧血でふらふらしながら飲んだ」「あわてて飲んだ」などが大半で、PTPから錠剤・カプセルの取り出し方法が分からずに誤飲したケースはありませんでした。

考察
 PTPの誤飲は、何でも口に入れてしまう乳幼児でなく、中高年齢層に多く、慢性的な疾患が多く、比較的長期に服用を続け、薬剤の服用に慣れている患者に多くみられます。

 これらのことより、誰もが錠剤・カプセルのPTP誤飲を起こしうる可能性があります。

 PTPの誤飲は非常に重篤な症状を呈し、長期入院した事例も報告されています。

 今後、老人には、one dose package(一包化)などの対策も考えていく必要があると思われます。


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シリーズ:情報を考える2  

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<<用語辞典>2003年10月 1日号  No.369

モノクローナル抗体
単クローン抗体               関連項目:
バーネットのクローン選択説


 免疫によって生体内に生じる抗体は、単一な抗体ではなく多クローン抗体(ポリクローナル抗体)です。

 しかし、1個のB細胞は1つの特異性をもった1種類の抗体しか産生しないことを利用して、免疫したB細胞を同種あるいは異種の骨髄腫(ミエローマ)細胞と融合させ、1個の融合細胞(単クローン)から出発して、増殖可能で均一な抗体をつくり続ける抗体産生融合細胞株(ハイブリドーマ)を得ることができます。

 B細胞は数日で死に絶えてしまい、継続的に増殖、抗体産生は続きませんが、B細胞をマウスBリンパ腫(ミエローマ)細胞と融合することで、この問題を解決することができます。(1984年ノーベル賞;ケラー&ミルシュタイン)

 融合細胞(ハイブリドーマ)は、B細胞の抗体を産生する能力とミエローマ細胞の増殖し続ける能力を持ち、それぞれのハイブリドーマクローンを培養することにより、抗原特異的な均一なモノクローナル抗体を大量に手に入れることができるようになりました。

 このモノクローナル抗体作成法の非常に画期的な点は、免疫する抗原が癌細胞等の混合物であっても、個々のハイブリドーマクローンが分泌するモノクローナル抗体の中から、正常細胞を対照におくことにより、癌細胞にだけ結合する抗体を選択することが可能となることです。

 更に、得られたモノクローナル抗体から逆に、特定の細胞にだけ発現している蛋白質分子を同定することが可能となります。この方法で、B細胞やT細胞等特定の血液細胞、あるいは特定な癌細胞にだけ発現する蛋白質分子のみに結合する多くのモノクローナル抗体が作成されました。

 1980年代には、モノクローナル抗体での癌治療、自己免疫病、臓器移植時の免疫抑制などの期待が高まりました。しかし、ヒトへの免疫原性に起因する繰り返し投与時の効果の減弱、アナフィラキシーショック(マウス抗体と抗マウスヒト抗体によっておこるアレルギー反応)の危険性もあり、ほとんどの場合承認を得られるには至りませんでした。

 現在、治療用抗体として承認されているマウスモノクローナル抗体は、CD3抗体(臓器移植時の免疫抑制薬)とラジオアイソトープを結合させたCD20抗体(非ホジキンリンパ腫)のみに止まっています。

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ADCC
antibody dependent cell cytotoxic                関連項目 Her2ヒト化抗体

CDCC:complement-dependent cell-mediated cytotoxicity
補体依存性細胞障害活性

 細胞上に発現している受容体蛋白質等に対するモノクローナル抗体は、受容体に結合する本来のリガンド様の活性、受容体とリガンドとの結合を阻害する中和活性、補体結合細胞傷害活性(CDC活性)あるいはNK細胞、マクロファージを介した抗体依存性細胞傷害活性により抗体が結合する標的細胞への殺活性(ADCC )を持つことが分かっています。

抗体医薬

 人体には免疫力という防御システムが本来備わっており、病原菌などの異物が入ってくると抗体が作られ、病気になるのを防いでいます。こうした働きを活かそうというのが抗体医薬で、その治療効果を発揮するメカニズムには、1,癌細胞が増殖するシグナルを阻害する。2,癌細胞シグナルを活性化して癌細胞を殺傷する。3,補体依存性細胞障害(CDC)、4,抗体依存性細胞障害。などがあります。

 抗腫瘍効果を発揮するADCC活性抗体を医薬品として活用したのが、「ハーセプチン」(転移性乳癌治療薬)、「リツキサン」(非ホジキンリンパ腫治療薬)です。

 出典:日本病院薬剤師会雑誌 2002.8 等

       関連項目:バーネットのクローン選択説 、 Her2ヒト化抗体

 

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