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1997年1月15日  214

輸血用血液によるGVHD  緊急安全情報

 


 輸血後GVHD(移植片対宿主病)は、一度発症するとほぼ全例が致死的な経過をたどる重篤な副作用です。日赤では1996年4月に「緊急安全情報」を配布しました。
 
 しかしその後の輸血でも引き続き7例が報告されています。輸血後GVHDに対する有効な治療法は未だ確立されていませんので、発症予防が唯一の対策です。

 

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1.輸血の適応と使用血液の選択を厳密に

同種血輸血は、他に治療法が存在しない場合に限定することが求められています。採血後まもない血液は免疫応答と増殖能力のあるリンパ球を含んでいるので、輸血後GVHDが発症する危険性が高いとされています。

2.輸血用血液の放射線照射による防止を

 輸血用血液を15〜50Gyの線量で照射することにより、輸血後GVHDを予防することができるとされています。特に、高齢者の場合には、発症の危険性が高いので照射血の使用を十分に考慮して下さい。ただし緊急に輸血が必要と判断される場合で放射線照射が即座に使用できない場合は、未照射血を使用し患者救命を優先した輸血療法が求められています。

3.血液センターでも放射線照射に協力しています

 当院でも、あらかじめ放射線照射した血液を注文できるようになります。詳細は薬剤部注射室に問い合わせて下さい。

*放射線照射しても、赤血球、血小板、顆粒球の 寿命及び機能にほとんど影響はありません。

◎輸血用血液に照射を必要とする患者

1.先天性免疫不全症
2.造血幹細胞移植患者
3.胎児、未熟児
4.胎児輸血後の交換輸血
5.心臓血管外科手術
6.担癌症例の外科手術
7.近親者(親子、兄弟)からの輸血

◎輸血用血液への照射を考慮すべき患者

1.ホジキン及び非ホジキン・リンパ腫
2.白血病及びその他の造血器腫瘍
3.強力な化学療法、放射線療法を受けている 固形腫瘍
4.臓器移植を受け免疫抑制状態にある患者
5.採血後72時間以内の血液(新鮮血)
6.その他医師が適応を認めた場合

◎照射済み血液の扱い。

1.照射後の血液はK(カリウム)値が上昇す るので、小児、腎障害患者、大量輸血患者 では速やかに使用すること。
2.原則として返品できません。(担当医の了 解のもとで転用するのは可能。)  
 GVHDの典型的な症例

第11病日より発熱。
第13病日より皮疹。
第14病日には皮疹が上半身全体に広がる。
第19病日には全身症状が悪化し、GOT、GPT、T.bilの上昇
第15病日からWBCが急激に減少
第24病日に死亡


Ca拮抗剤 パニックinUSA
シリーズ:情報を考える

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医薬品副作用情報 No.140

1)α-グルコシダーゼ阻害剤と低血糖症状

 グルコバイ:低栄養状態又は食事摂取が不十分な高齢の患者で、他の
       糖尿病用薬非併用時に、低血糖又は低血糖症状が発現したとの報告がある。
 ベイスン:重篤な肝障害のある患者で、他の糖尿病用薬非併用時に低血糖症状が発現したとの報告がある。

2)アセナリン(消化器運動賦活調製剤)

*まれにQT延長:動物実験でQT延長等の心血管系副作用が示唆された との報告がある。

 これまでアゾール系抗真菌剤、エリスロマイシン、クラリスロマイシン併用での心血管系副作用(心室性不整脈、QT延長等)については、既に記載されていましたが、今回動物実験で本剤がQT延長を誘発する可能性が示唆され、国内で2例の併用外で本剤との関連性が否定できないQT延長が報告されています。


<用語辞典>

バーネットのクローン選択説

   出典:日本病院薬剤師会雑誌 2002.8

 リンパ球には、液性免疫(抗体)担当のB細胞と細胞性免疫担当のT細胞があり、BとTの相互作用によって、互いの免疫機能が活性化されます。

 B細胞が様々な抗体を作ることができる理由は、バーネットのクローン選択説で説明されています。

 骨髄で作られる成熟前のB細胞は、抗体遺伝子の再編成(後述)により細胞ごとに異なる配列を持つ抗体分子で(膜型IgM)を細胞表面上に発現します。この時点で自己成分に反応する抗体を持つB細胞は細胞死が誘導され除かれます。残ったB細胞は成熟B細胞へと分化します。

 外来から生体へ侵入してくる物質(抗原)に対して反応性を持つB細胞は、表面上の抗体分子抗原の結合がシグナルとなり、細胞分裂を起こし数を増やします(クローンの増加)。この時ヘルパーT細胞等から分泌されるシグナル物質がインターロイキン(IL-4、IL-5、IL-6)で、その助けを借りて、B細胞は、抗体分泌細胞へと分化します。

 抗体刺激を受けたB細胞は、細胞分裂と並行して抗体遺伝子に変異が入ります(体細胞変異)。
抗体と抗原が結合する部分(超可変部位、CDR)に集中してアミノ酸変異が入り、そのような変異B細胞の中から、元の抗体よりも強い親和性の抗体を作るB細胞が脾臓中の濾胞樹状細胞上で選択され、増殖します。

 その間にIgMから、IgG1〜G4,IgA1〜2、IgE抗体分子を作るB細胞になる(クラススイッチ)抗体のクラス(M、G、A、E)は抗原の種類や免役され方などによって異なります。

 分裂したB細胞の一部は、記憶B細胞として残り、抗体分子を表面に発現させたままで、後に同じ抗原が侵入してきたときに備えているため、同じ抗原が侵入してきても、素早く抗体がつられて、簡単に除去されてしまいます。

<抗体遺伝子の再編成>

 抗体遺伝子が再編成されて、多様性のある抗体が作られることを初めて実験的に証明したのは利根川進教授です。

 成熟前のそれぞれのB細胞で、抗体遺伝子の再編成が起きて、異なる配列の抗体遺伝子が作られ、異なる抗体が細胞表面に発現します。

 抗体分子は、重鎖と軽鎖蛋白質からできています。重鎖はヒトでは14番染色体長腕の端にあり、V,D,Jのセグメントから1個ずつ選ばれて、抗体遺伝子の再編成が起きます。

 再編成が起こるときには、V−D、D−J、V−Jのつなぎ目のDNAが削られるか、新たに付け加えられ、更に体細胞変異が起こることから、多様性は無限に広がります。


    <医薬トピックス>

希酢酸洗浄の有用性(熱傷創に対する)


 熱創傷の局所療法で、ポピドンヨードやクロルヘキシジンなどで消毒した後、治療薬の塗布、被覆剤の貼付という従来の治療方法に変わり、0.2%希酢酸を使用した場合、下記のような比較的良好な治療効果が得られています。

・創部に対する刺激性がほとんどない(pH3.13/25℃)
・U度浅度熱傷(SDB)、U度深部熱傷(DDB)、V度熱傷いずれにも有用
・広範囲熱傷にも容易で実施可能
・不良組織が一目瞭然で、デブリードマンが容易になる
・創面のすぐれた壊死物質除去作用がある
・感染創も容易に洗浄可能
・感染コントロールに優れているため、肉芽形成も優れている。

   出典:建栄製薬KK 資料 2009年 No.4

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