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1996年9月1日号 206

患者の専門用語の理解度

 

  ヒートシールは温湿布?

 患者さんに、服薬指導を行う時に、専門用語を避け出来るだけ分かりやすい言葉を使わなければならないのは当然ですが、何が専門用語なのかという議論はあまりなされていませんでした。

 郡山市にある大田総合病院付属大田西ノ内薬剤部で、入院患者と市内の中学3年生を対象に、専門用語の理解度調査を試みた結果、患者と医療者の常識にズレがあることが分かりました。
 入院患者20〜80歳の67名、中学3年生131名

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【おもな不正解】

・頓服〜太りすぎの腹のこと。風邪のときに飲む
    熱が高いときに飲む、痛いときに飲む
    間を離して飲む。効くといわれる薬
・坐薬〜座って使う薬、痛み止め、熱を下げる薬
・半減期〜薬を半分に減量して使う期間
     体重が減ること。
     食欲が無くなること。
     病気が半減すること。
     半月が過ぎたこと。
     薬の効力が一時的に無くなるとき。
     死にそうな時期
・分包〜何分か毎に何袋ずつ飲むこと。
・食間〜食事中、食道の中の空間、食道と胃の間
    間食のこと。
・点眼〜目が点になること。目が悪くなること。
    鳥目のこと。目の中の黒い部分、目の点検をすること。目の点滴
・ヒートシール〜温かくなる湿布
        火傷のときに貼るシール
        病気の状態を書くもの
        オブラートのこと  

・顆粒〜植物などから採った薬の粉
・外用〜家の外で使う。外科用の薬、院外
・止瀉剤〜薬を止めること。吐き気止め。
     化膿止め。血を止める薬
・下剤〜食べたものを吐かせる薬
    熱を下げる薬
・調剤〜体の中を調節する薬。薬を調べること。
    食事で足りないものを補うこと。
・内服〜いつも身につけておく薬
    疲れをとる働きのあること。
    内科検診のこと。
・湿布〜薬を塗った布のこと。
・禁忌〜身内が死んだときのこと。
    病気の人に使えないこと。
    命が危ないこと。
・含嗽〜漢方薬、癌の薬

【考察】
 半減期や顆粒、ヒートシールなどはともかく、薬袋に書いてある内服(正解率:53.3%)、外用(同:46.3%)、食間(58.2%)でも正解率が低く、頓服に至っては正解率6.0%なっているなど驚かされる結果となっています。最終的に正しく服用してもらうには、色々な立ち場の人と話しをして検討していくことが必要と思われます。
   
 <正解率:入院患者での>

   食前 76.1%
   効力 67.2%
   下剤 68.7%
   内服 53.3%
   点眼 62.7%
   外用 46.3%
   坐薬 49.3%
   塗布 49.3%
   剤形 32.8%
   禁忌 25.4%
   含嗽 14.9%
   頓服  6.0%

* 入院患者と中学生との理解度の差

    入院患者%  中学生%
 
 正解率   42.2  33.4
 不正解率  12.2  16.5 

 わからない 45.7  50.1


<<用語辞典>>

熱中症(日射病、熱射病)  こちらにも記事があります。熱中症(新しい重症度分類)
heat-related illness


 熱中症とは高温環境によって生じる生体の障害を総称したものです。

 不適切な水分・電解質補給、過酷な労働や運動のスケジュールによる体液・電解質喪失と体温調節機構の破綻が病態の中心です。

 高温環境暴露による40℃以上の発熱、意識障害、発汗停止は迅速な処置が必要です。

 日射病、熱痙攣は涼しい場所で安静にし、経口的にスポーツドリンクや食塩液(水500mlに食塩5g)を摂取させます。症状が強いときは生理食塩水、乳酸加リンゲル液500〜1000mLを点滴します。熱痙攣でミオグロビン見られるときは入院させ十分な利尿を確保します。

 熱疲労は血液性化学検査、血液ガス、心電図などの検査を行います。深部体温38℃以下を目標に氷嚢などのクーリングします。生食、乳酸加リンゲル500ml〜1Lを点滴します。

 これらの治療で改善傾向が無ければ高度救急施設に転送します。転送までの間に生食1Lをさらに1時間程度で点滴します。高Na血症が存在する場合は1号または4号輸液と5%ブドウ糖液を点滴します。

 現場では救急隊が到着するまでの間に涼しい場所に移し、水をかけて送風したり、体表面の全身の冷却を行います。なお、冷水浴などの体表面冷却は深部温度と皮膚体温との格差が大きくなり、戦慄(shivering)を誘発するため、緊急時のみの対応処置と考えるべきです。同時に意識レベルの低下や痙攣、誤嚥、ショック状態に対して気道確保、循環動態をチェックします。

 中枢神経障害、
ARDS、急性腎不全、DICなど多臓器不全の予防、治療が必要であり高度救急センターなどに搬送します。

 高度救命救急センターでは中止静脈圧、心エコー、場合によってはSwan-Ganzカテーテルによるモニタリングを行いながら輸液、昇圧剤、利尿剤を用います。

    出典:治療 2003.2    熱中症(新しい重症度分類)


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2006年1月15日号 No.421

老化を抑制し寿命を延長するホルモン発見!!

〜〜不老長寿の薬の開発は可能か?〜〜



 米テキサス大学医療センター、東京大学、大阪大学などの共同チームはラットを用いた実験で、老化を抑制して寿命を延長するホルモンの同定に成功しました。

 1997年、老化モデルマウスの原因遺伝子として新規の膜蛋白質をコードする遺伝子を同定し、ギリシャ神話の“生命の糸を紡ぐ女神”の名にちなんでクロトー(klotho)と命名されました。

 このクロトー遺伝子を過剰に発現させると普通のマウスよりも20〜30%長く生存することが明らかになりました。この遺伝子はヒトでも見出されています。

 寿命の延長を巡っては、これまでミミズ、ハエ、マウスでインスリンの作用を抑制することが寿命の延長をもたらすと報告がなされています。クロトー蛋白質もその一部が血液中に分泌されて全身を巡り、インスリンの作用を抑制するホルモンとして働くことが明かにされています。

 また、クロトー蛋白質がインスリン受容体以外の受容体に結合することや、インスリンの細胞内情報伝達の抑制を介してインスリンの作用を抑制されることも示されています。また、インスリンの細胞内情報伝達を抑制するとクロトー遺伝子のノックアウトマウス(老化モデルマウス)の老化症状が軽減しました。

 インスリンは血糖を下げるホルモンとして知られていますが、その他にも代謝全般の制御に重要な役割を果たしています。もちろんインスリンの作用を過度に抑制すると糖尿病になってしまいますが、糖尿病を発症しない程度の適度の抑制は寿命の延長につながることが明らかになりつつあります。

 このクロトー蛋白質は老化の診断や治療への応用が最大の関心事ですが、単に寿命を延ばすというのではなく、成人病のリスクを一括して抑える治療に使われることにも期待が寄せられています。

 老化は、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、癌、糖尿病、骨粗鬆症、認知症、パーキンソン病などあらゆる成人病に共通する危険因子です。老化そのものを少しでも抑制できれば、あらゆる成人病の発症を抑制できる可能性があります。

 今後の展開については、クロトー蛋白質の受容体の同定が最優先とされ、それにより治療への応用の道が開けるとされています。臨床研究では既にクロトー遺伝子の遺伝子多型が寿命や成人病のリスクと関係することが見出されていますが、クロトー蛋白質の血中濃度と病態の関係など、蛋白質レベルでの解明は今後の課題です。

{参考文献} メディカルトリビューン 2005.12.1
 



医薬トピックス(20)  BCG瘢痕サイズは、その後の喘息発症リスクと関連がある。

                         はこちらです。


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幸福感は健康に好影響

   〜〜〜〜グルココルチコイドで恐怖感も和らぐ!〜〜〜〜

2007年1月15日号 No.444


 毎日を幸せな気分で過ごしている人は、いくつかの基本システムで生物学的機能の健康度が高く、コルチゾールレベルが低いだけでなく、血漿フィブリノーゲンレベルに見られるストレス応答も弱く、昼夜の心拍数も少ないことが、報告されています。

 前向きな精神状態は健康に係わる生物学的プロセスに直接関連するという従来からの概念を支持するものと言えます。

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 この研究は、ロンドン大学によるもので、相対的に健康状態にある男性116例、女性100例を対象に行われました。

 中年男女では、前向きな気分は神経ホルモン、炎症、心血管活動の低減と結びついていることが示されています。また、幸福感を感じた時点での経験をサンプリングし、それを集計して評価した結果、年齢、性、社会経済的地位、BMI(肥満度)、喫煙の有無とは関係なく、コルチゾールの1日分泌量に反比例していたとのことです。

 幸福感は、24時間測定した心拍数とも反比例していました。最近の研究で、心拍数の増加は死亡および心血管リスクと相関しており、幸福感が高まるにつれ心拍数は減少することは、死亡リスクを軽減することになります。

 今回の研究では、幸福感と年齢、性、婚姻状況、社会経済的地位との間に関連は認められず、また平日に幸福感の高い人は、休日も幸福感が高い傾向にあったとのことです。
                    {参考文献}メディアカル・トリビューン 2005.12.22

<グルココルチコイドで恐怖感和らぐ>(前述の記事とは関係ありません。別の記事です。)


 チューリッヒ大学では、社会恐怖症患者(40例)にコルチゾン、そしてクモ恐怖症患者(20例)にコルチゾールを用いて二重盲検対照試験を行い、グルココルチコイドが恐怖症の恐怖感を軽減したと発表しました。

 いずれの試験でもグルココルチコイドにより、刺激された恐怖と不安は軽減しましたが、恐怖症とは無関係の一般的な不安は軽減しなかったそうです。

 恐怖を催す状況では、高レベルのグルココルチコイドが恐怖症患者の恐怖症状を軽減することはコルチゾール分泌が適応的応答であることを示唆しています。この概念は、急性ストレス下でのグルココルチコイド分泌が適応的応答で、多様な内的、外的要求に対応するよう生体を支援するという、より広い視点にも整合しています。

 高レベルのグルココルチコイドは情動喚起的情報の想起を阻害することはすでに知られていましたが、今回の研究では、グルココルチコイドは嫌悪記憶の想起を阻害することで恐怖を軽減したことが分かりました。

 さらに、内側側頭葉(MTL)が記憶想起に決定的に関与していることを示す様々なタイプの数多くの研究と、恐怖症で記憶想起が重要であることを示すいくつかの研究があります。

 ある論文では、コルチゾンの急性投与が記憶想起中のMTLの血流を減少させ、この効果が記憶想起障害の程度と相関している結論しています。

 今回の研究でも高レベルのコルチゾールが刺激誘発恐怖を軽減した基本的な機序は、記憶想起中のMTL活動の阻害であろうと推測されています。

 {参考文献}メディアカル・トリビューン 2005.8.17 


<医学トピックス>  鍋焼きうどんとお粥 風邪をひいたときはどっちはこちらです。

 

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