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1996年5月15日号  199

モルヒネの効きにくい癌疼痛

NeP:NeuropathicPain 

    Neuropathic Pain 

 モルヒネの普及にともない、多くの患者さんが痛みという苦痛から解放されてきました。 それでも、10人に一人の割合で、モルヒネで痛みは軽くなっても、完全には痛みが取りきれない患者さんがいます。

  

{参考文献}JJSHP 1996.4  昭和大学病院外科緩和ケアチーム 高宮有介


*Neuropathic Painとは
 
 腫瘍が神経に直接浸潤した場合や、癌が脊椎に転移し、骨折を起こし脊髄神経を圧迫した場合などではモルヒネはあまり効果がありません。

 前者では直腸癌や子宮癌などの骨盤内腫瘍が仙骨神経叢や大腿神経に直接浸潤した場合、またPancoast型肺癌などが腕神経叢に浸潤した場合などがあります。
 後者では、安静時の痛みはモルヒネで軽快できますが、身体を動かしたときの痛みはモルヒネでは取りきれない場合が多くあります。
 このような痛みは、Neuropathic Painと呼ばれています。

 これは、末梢神経あるいは中枢神経に損傷や障害によってもたらされる痛みです。この場合、損傷された神経の支配領域の感覚低下や痺れ感がみられたにもかかわらず、その部分が痛んだり、軽く触れたりすることにより痛みが生じる状態が出現します。
 
 痛みの性質としては、灼熱痛、ズキズキした不快感のある痛み、自発性の刺すような痛み、あるいは放散する痛みのこともあります。

 Neuropathic Painに対しては、モルヒネの増量で痛みが軽減せず、副作用のみ増強する場合は、モルヒネに固執せず、神経ブロック療法や放射線療法などを考慮する必要があります。また、鎮痛補助薬をモルヒネとうまく組み合わせることも有効です。鎮痛補助薬には抗痙攣薬、抗うつ薬、コルチコステロイド、抗不整脈薬があります。

〔鎮痛補助薬〕

1)抗痙攣剤
 ・テグレトール:ビリビリした電撃痛、刺すような痛みに効果的
2)抗うつ剤〜鎮痛効果は、抗うつ効果が発する週単位より速く(4〜7日)、うつ病に 
 必要な投与量よりも少量で鎮痛効果がみられる
・アミトリプチン:ピリピリした表面の違和感に効果的
3)コルチコステロイド〜鎮痛剤として用いる他、患者さんの気分を高揚させたり、食欲を増進させたりする目的でも使用される。    
  神経や脊髄の圧迫に関連した痛み、頭蓋内圧亢進による痛み、骨転移の痛みにも有効
・リンデロン、ソルメドロール
4)抗不整脈薬〜膜安定化作用:局所麻酔作用
・メキシチール:neuropathic painに対しては、抗不整脈薬の中では第一選択

"Not doing,but being"
 何かをすることではなく、そばにいること。
 英国のホスピスの理念の一つ。

医療者は痛みがあれば、すぐにモルヒネを増量したり、神経ブロックをしたり、何かをすることに気を取られますが、案外そばにいて痛い所をさすっているほうが効果的な場合も多くあります。このbeingが緩和ケアの原点であることは言うまでもありません。
 しかし、少しの薬の知識で軽快し得る苦痛症状に対しては、beingだけでなく、その知識の取得も心掛けなければなりません。これからは、doingとbeingのバランスが大切だとおもいます。

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NeP:NeuropathicPain   2008.11 追加記事

 疼痛機序解明と副作用の少ない新世代薬物開発、疾病と治療に関する情報の電子データベース化によって、抗てんかん薬と抗うつ剤は神経障害性疼痛(NeP)の治療に最も重要な第1選択薬としての地位を確立しています。

 抗うつ薬はNeP以外の慢性疼痛にも応用されています。これらの薬物は本来疼痛治療目的に創られたものとは異なる鎮痛補助薬で、カルバマゼピン以外は疼痛治療への適応が承認されていません。しかしこれらの薬物はNeP発現機序に最も即した治療薬で、急速に進む高齢化社会では、必要不可欠な薬物といえます。

 NePは慢性疼痛の中核的存在で、疼痛機序解明と薬物治療のエビデンスが最も充実している病態です。

  出典:薬事 2008.11

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鎮痛補助剤

副腎皮質ステロイド
    デキサメタゾン:低用量 1〜8mg
           :高用量 60〜96mg
    プレドニン:7.5〜10mg
    メチルプレドニゾロン:16〜50mg
抗うつ剤
    アミトリプチリン:10〜150mg
    イミプラミン:10〜150mg
    クロミプラミン:25〜100mg
    ノルトリプチリン:10〜150mg
    トラゾドン:75〜200mg
    マプロチリン:30〜75mg
抗不整脈剤
    メキシレチン:150〜300mg
    フレカイニド:100〜300mg
    リドカイン:2〜50mg/kg
抗けいれん剤
    テグレトール錠:200〜800mg
    フェニトイン:300〜500mg
    バルプロ酸:400〜1200mg
抗不安剤
    クロバゼパム:0.5〜3mg
    ジアゼパム:4〜10mg
NMDA受容体拮抗剤
    ケタミン:0.1〜0.15mg/kg/時(持続皮下・静注)
    デキストルメトルファン:90〜270mg
骨代謝改善薬
    ビスフォスフォネート:30〜45mg(点滴静注)



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癌疼痛にアセトアミノフェン

2010年10月1日号 NO.530

 WHOの3段階ラダーでは、第1段階の主薬は非オピオイド鎮痛薬ですが、アセトアミノフェン(ピリナジン末、カロナール錠)も推奨されています。また第2段階と第3段階では非オピオイド鎮痛薬とオピオイドの併用が基本となりますが、その場合でもアセトアミノフェンは基本薬となっています。

 癌疼痛治療を必要とする患者の多くは高齢者であること、化学療法などの癌治療を妨げないことなどから、副作用の少ないアセトアミノフェンを第1段階の基本薬とすべきとされています。

 通常、NSAIDsは末梢にシクロオキシゲナーゼ(COX1、2)を阻害することによりプロスタグランジン(PG)産生を抑制し、解熱鎮痛効果を発揮します。

 しかし、アセトアミノフェンではCOX−1とCOX−2の阻害が弱く、中枢性に存在するCOX−3を阻害することが近年指摘されています。

 COX-3についてはいまだに議論されている最中ですが、このCOX-3阻害が視床下部の体温中枢に働き、体内の水分移動と末梢血管の拡張作用によって、発汗に伴う解熱疼痛閾値の上昇を引き起こすと考えられています。

 COX−1は胃粘膜、腎血管、血小板に発現しており、恒常性の維持に重要な役割を担っています。そのため、COXを非選択的に阻害するNSAIDsのように、胃粘膜障害や血小板凝集抑制作用が少ないとなされています。

 これらの欠点を克服するために開発されたCOX−2選択的阻害剤も、その長期使用により心血管系の合併症を発生する可能性があることが指摘されています。

 アセトアミノフェンでは、COX−1とCOX−2の阻害が弱く、そのためNSAIDsに認められるような副作用発現はまれです。

 現在、アセトアミノフェンは”古き良き薬”として再び注目を集めています。  現在日本での用量設定は1日最大量1,500mgで海外に比べて低く、日本ではアセトアミノフェンは癌疼痛には効かないとされてきました。

 WHO方式癌疼痛治療ガイドラインの推奨量で治療された量を調査したところ、開始量で平均2,757mg/日、維持量で2,900mg/日であったとされています。他にも1回900mgを1日4回、1日3,600mgで有効という報告があります。

 今後アセトアミノフェンノの用量設定については、さらなる検討が必要と思われます。


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*アセトアミノフェンの有用性

・鎮痛剤として長い歴史があり使用経験が豊富
・安価、安全域が広い、長期使用が可能
・痛みが出てからの服用が可能で、むしろ疼痛時の服用により効果発現が促進される。
・消化器系に対する副作用が少ない。
・腎機能障害が非常に弱い。
・血小板凝集抑制作用が少ない。
・ニューキノロン系抗菌薬を安全に使用できる(他のNSAIDsでは痙攣が発現する可能性がある)

*アセトアミノフェンの短所

・日本で設定されている用法・用量では効果が弱い。
・大量の服用により重篤な肝障害の可能性がある。

{参考文献}薬局 2010.9




     かゆみとオピオイド受容体  はこちらです。


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POSSIBL理論

   〜〜〜緩和医療では患者や家族にどうしたらよいのか〜〜〜

2009年8月15日号 No.504

 緩和医療では、身体的痛みや精神的痛みなどが複雑に絡み合っているため、薬物療法のほかに患者とのコミュニケーションを深めることが大切です。

 患者さんが本音で伝えることができ心が開けば、痛みの根幹を緩和する一助となり得ます。

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 POSSIBL理論

P〜Positive:積極性
O〜Observation:観察
S〜Seamless:シームレス
S〜Simple:簡潔
I〜Integral:積み重ね
B〜Balance:均衡
L〜Listening:傾聴
E〜Evidence:エビデンス

・P〜Positive:積極性

 積極的な姿勢は、他の医療スタッフとの連携も深まりコミュニケーションを円滑に行う上で大切です。また患者さんとの初対面の挨拶は第一印象に左右されるため、丁寧さが要求されます。

 比較的に患者さんは入院時の面談の場合、心のゆとりがないことも少なくないため、面談の時間も短めにする。

・O〜Observation:観察

 入室時から多くの患者情報を入手することが可能でれば、患者さんと面談する前に、大部屋であれば同室患者の状況、個室であれば部屋の様子が普段とどう違っているかを意識し勘案することが必要です。

 面談直前まで患者がどのような状況であるかを意識するだけでも情報入手量に差が出てきます。

 例えば、読書、テレビ視聴などに集中している時には面談の時間配分にも考慮が必要であることもおのずとわかってきます。

・S〜Seamless:シームレス

 可能であれば、入院時から患者さんと関わる“つなぎめのない医療”がベストです。医療スタッフは緩和医療に焦点を当てるべきではなく、癌医療と緩和医療とはシームレスな関係でなければなりません。

 抗癌剤は、一般的に正常細胞までダメージを及ぼすことから、よりいっそうの薬の知識とリスクマネジメントが必要です。

 一方、緩和医療では終末期のイメージから脱却し、早期から心と身体の痛みを和らげることがQOLを保つものと考えられています。

 これら2つの医療がすべての病期に融合し、患者や家族が日常生活を送れるように支援していくのが医療従事者の役目です。

・S〜Simple:簡潔

 服薬指導では、患者さんが気になる点の多くは副作用です。しかし説明に対してうなずき、理解を示したように見えても、実は上の空の場合も少なくありません。次の面談時にしっかり理解できているかどうかの再確認を怠ってはなりません。

 したがってシンプルな内容を繰り返し説明し、理解の確認を図ることが望ましいのですが、ワンパターンな聞き方は避けるべきです。

<緩和医療での面談スキル>

・I〜Integral:積み重ね

 特に、症状が日々変化している癌患者さんでは長期的に関わること(線の関係)が重要です。
 単発的な関わり(点の関係)では、良好なコミュニケーションを図ることが困難になりかねません。

・B〜Balance:均衡

 その患者さんが、必要としているのは薬なのか、心のケアなのかを常々考える柔軟性が求められます。また、治療のうえで患者さんが今後の治療方針がわからない、理解できない、医療者の説明が乏しいなどの不安や不満が募り、心的バランスが崩れることがあります。
 患者さんが自分の状況を素直に伝えることができる環境であれば、心の負の要因を軽減することが可能となります。

・L〜Listening:傾聴

 医療従事者は聞き上手にならなければなりません。患者さんにとって話やすい環境を作ることで、話題も拡大していきます。また傾聴することが大切で、会話の中で時折見られる「沈黙」も焦らずしっかりと受け止めなければなりません。

「沈黙」の中には、自分の感情を抑えている、次の言葉が見つからない、話したくないなど多くの状況が想定されます。

・E〜Evidence:エビデンス

 コミュニケーションスキルは、知識の裏づけのいないままに技術だけを習得するものではありません。なぜこの薬が必要なのかという問いかけに対し、エビデンスを持って対応し理解が得られれば、患者や家族の不安感を軽減することも可能となり、服薬コンプライアンスを高める要因ともなり得ます。

   {参考文献}薬事 2009.5
 


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緩和ケアにおけるセデーション

2009年9月1日号 no.505

 緩和ケアにおけるセデーションとは、日本緩和医療学会の「苦痛緩和のための鎮静のガイドライン」での定義では、「苦痛緩和を目的として患者の意識を低下させる薬物を用いること、あるいは、苦痛緩和の為に用いた薬物によって生じた意識の低下を意図的に維持すること」とされています。

 集中治療室や救急室でのセデーションは、「人工呼吸や侵襲的処置を行う際に、一時的に意識レベルを低下させ、処置に伴う苦痛を少なくすることにより、安全かつ効果的に医療を行為を行うための補助的治療」として以前より通常の医療行為の中で行われてきました。

 緩和ケアにおいてもセデーションの必要性が述べられるのは、終末期に出現する強い苦痛の緩和のためには、セデーションが症状緩和の治療の 1つとして認識されるようになったからと考えられます。

<緩和ケアにおけるセデーションの適応>

1.耐え難い苦痛がある。
2.有効と考えられる緩和治療がなく治療抵抗性である。
3.予測される生命予後が2〜3週間以下である。
4.患者が明確に希望している。
5.患者の意思決定能力がない場合、患者の推定意思で患者が希望している。
6.家族の一致した希望がある。
7.医療チームの合意がある。

<使用薬剤>

 報告されたセデーションのための薬剤としてはミダゾラム注(ドルミカム)が最も高頻度で使用されており、ガイドラインでも第1選択薬とされています。

 その他ジアゼパム(ホリゾン注)などのベンゾジアゼピン系抗不安剤、ハロペリドール(セレネーズ)、クロロプロマジンなどの抗精神病薬、フェノバルビタールなどのバルビツール、プロポフォール(ディプリバン)の使用が報告されています。

 日本での報告では、これらの薬剤によるセデーションにより83%の患者で苦痛症状の緩和が得られました。

 副作用としては、呼吸循環抑制が20%で認められ、致死的な状態に陥ったのは3.9%でした。

 呼吸循環抑制は、せん妄に対して行われ、その程度の強い患者ほど有意に多く認められたとの報告があります。

 また複数の観察研究でセデーションを受けた患者と受けなかった患者で初診から死亡までの期間に差がないことが示されています。

<セデーションの倫理的要件>

1.意図:鎮静は苦痛緩和を目的としていること。
2.自律性〜(aまたはb)かつc
a)患者に意思決定能力がある場合、必要十分な情報を知らされた上で明確な意思表示がある。
 b)患者に意思決定能力がない場合、患者の推定意思がある。
 c)患者の同意がある。

3.相応性(proportionality)

 患者の状態(苦痛の強さ、他にに緩和される手段がないこと、予測さる生命予後)、予測される益(benefits:苦痛緩和)、および予測される害(意識・生命予後への影響)から見て、鎮静がすべてのとりうる選択肢の中で、最も状況に相応な行為であると考えれる。

     {参考文献} 薬局 2009.8


<医学事典>
         ロコモティブ・シンドローム(ロコモ:locomotive syndrome)はこちらです。


<医学用語辞典>

サーベイランス
surveillance
疾病監視

 サーベイランスは本来は検疫における対人監視を意味しましたが、現在では種々の伝染病の動向に関する継続的な疫学的観察を意味し、疾病監視とも呼ばれています。

 これを定義すると、有効な対策を樹立するために、疾病の発生と蔓延に関与するすべての面を継続的に精査することです。その実際の活動は情報の収集、その整理と解析、結果の迅速な配布の3段階に分けられ、対策実施後の評価も含まれます。

 この情報源としては、罹患届、死亡登録、流行調査報告、検査室成績、防疫用製剤・薬品の情報、集団の免疫情報などが利用されています。

 実例としては厚生省の結核感染症サーベイランス事業が実施されており、事業開始時の1981(昭56)年には18疾患を対象としていましたが、1987年には結核とSTDが追加され27疾患が対象とされています。

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感染オーディット

Hospital Infection Control Audit Pack

            Audit:監査報告書

 英国で病院感染予防対策の新概念として登場した「感染オーディット」が、注目され始めてきています。

 この概念の最大の特徴としては、従来行われてきたサーベイランスより効率的で、感染対策の数値化が確実に出来る点にあります。

 この概念が登場した経緯として、英国の医療機関で院内の病棟別、外来別等、ここの部署でラウンドやサーベイランスを行ってきたが、これを推進していく上で人員や時間を細部の問題も把握できないことが判明し、そのことが深刻な問題となったことがあります。

 一般的に感染対策の基本は、サーベイランスを行うことですが、それを実施する際に施設で共通の基準を決めるなど事前準備が必要となり、それを怠るとデータ自体の信頼性に欠け他施設とのデータ比較が困難となります。

 一方、オーディットに関してはサーベイランスを行う部門(例えば救急部門等)ごとにチェックシート項目が明確化されていて、判断も容易に出来る特徴があります。

 出典:日本病院薬剤師会雑誌 2003.2


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新しい腎臓病の概念:CKD

     CKD:chronic kidney diseae(慢性腎臓病)

2007年3月1日号 No.447

 最近新しく提唱されたCKD(慢性腎臓病)という概念が注目され、日本でも話題となっています。CKDが注目されているのは、末期腎不全の予備軍であると同時に、心血管系イベント発症のリスクとして、糖尿病や高血圧症とならび対策の重要性は国際的に強調されていることにあります。

 CKDは2003年に米国腎臓財団がガイドラインを提唱しました。その定義は
1)腎障害が3ヶ月以上継続(腎障害とは腎臓の形態的または機能的な異常を指し、GFR糸球体濾過値)低下の有無を問わない。
2)GFR<60mL/分/1.73m2が3ヶ月以上継続

 1)、2)のいずれかをみたす場合

 これまでの慢性腎炎、糖尿病性腎症、慢性腎不全といった腎臓疾患のうちごく一部の急性疾患を除く全てを統合する概念です。この定義に従って、CKDの早期発見に努め、CKDの存在が確認された場合には、GFRによりCKDの重症度をステージ分類し、それぞれのレベルにあった治療を計画することになります。

 大多数の症例での検討結果から、CKDが死亡や心血管イベント発症、全入院のリスクであることが世界中で認知されるようになってきました。

<透析患者とCKD>

 近年増加し続ける透析患者の背景には膨大な数の予備軍が存在すると考えられており、原因疾患としては糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、腎硬化症などがあり、それらを一括してCKDとして捉え、より簡便で分かりやすい診断基準とステージ分類を決めて、専門医だけでなく一般医や患者自身も共通の言葉と概念で腎臓病の克服に向かって行動できるようにしようとする運動が世界中で始まっています。

<心血管病の重要なリスク要因としてのCKD>

 CKDが近年注目されてきた理由は、とくに腎機能が中等度以下に低下した患者では、心血管病(CVD:cardio-vasculae disease)の発症リスクが有意に高く、また、原因の如何を問わず死亡や入院のリスクも高くなるということが明らかにされたからです。

<CRA症候群:cardio-renal anemia>

 近年、うっ血性心不全、慢性腎臓病、貧血が相互に関連しあって悪化しているとする仮説CRA症候群が注目されています。

 心血管病(CVD)は、慢性腎臓病を(CKD)併発し、また慢性腎臓病は、心血管病の有意の危険因子として作用しますが、貧血はその悪循環の鍵因子として病態を増悪させます。

 CRA症候群は、是正可能な因子の中で、特に貧血を認識して積極的に治療しなければならない強調しています。今後、心臓専門医と腎臓専門医の連携強化の中で、rHuEPO(エリスロポエチン製剤)の治療に習熟した腎臓専門医は、心血管病の治療体系として貧血治療が重要であることを啓蒙しなければなりません。

{参考文献} 日本薬剤師会雑誌 2007.2 
       治療 2007.1
       医薬品ジャーナル 2006.9

CRA症候群
cardio-renal anemia

 近年、うっ血性心不全、慢性腎臓病、貧血が相互に関連しあって悪化しているとする仮説CRA症候群が注目されています。

 心血管病(CVD)は、慢性腎臓病を(CKD)併発し、また慢性腎臓病は、心血管病の有意の危険因子として作用しますが、貧血はその悪循環の鍵因子として病態を増悪させます。

 CRA症候群は、是正可能な因子の中で、特に貧血を認識して積極的に治療しなければならない強調しています。今後、心臓専門医と腎臓専門医の連携強化の中で、rHuEPO(エリスロポエチン製剤)の治療に習熟した腎臓専門医は、心血管病の治療体系として貧血治療が重要であることを啓蒙しなければなりません。


 出典:医薬品ジャーナル 2006.9

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CKD-MDB

 CKD-MDBとは、慢性腎臓病(CKD)に伴う骨ミネラル代謝異常(MDB)のことです。
CKDでは骨病変が起こるだけでなく、血管を含んだ全身の石灰化を介して生命予後に影響することが明らかになり、近年、全身疾患としてCKD-MDBの病態には、低カルシウム血症、高リン血症や腎臓でのビタミンD活性化障害が複雑に絡んでいます。

 CKDの進行とともに血清Ca値は低下し、血清P値は上昇し、副甲状腺ホルモン(PHT)が上昇します。

 CKD-MDBの概念から生命予後を第一と考えた場合、血清P値、血清Ca地、intact PTH(iPTH)の順に寄与度が高いとされています。そのため、血清P値が管理された上で血清Ca値の管理が重要となり、CaとPが管理された後にiPTHの管理を行うのが推奨されています。

 日本では、P値が高い場合には低蛋白質食でPのコントロールを図り、効果不十分ならば炭酸CaなどP吸収薬が用いられています。

 またステージ5D(透析患者)なら、セベラマーや炭酸ランタンといったP吸着薬も使用します。P値コントロールができ、Caが低値あるいはiPTHが高値であれば、活性型ビタミンD製剤を用います。しかし、今のところステージ5Dを以外のCKD患者でのCa値やP値の指摘管理目標とP吸収薬の効果に関するエビデンスはありません。

 活性型ビタミンD製剤に関しては、iPTHの上昇を抑制し生命予後を改善する可能性がありますが、腎機能障害の進行抑制効果は明らかではありません。

  出典:日本病院薬剤師会雑誌 2009.12

 


<医学トピックス>

 友人がいれば、血圧は下がる。はこちらです。

 

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