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1996年4月15日号  197

医薬品副作用情報 No.136

厚生省薬務局安全課

  ・ヒスタミンH2受容体拮抗剤(H2ブロッカー)による血液障害

・非イオン性X線造影剤による副作用

・子宮収縮剤による子宮破裂、胎児切迫仮死等の重篤 な副作用

・H2ブロッカーによる血液障害

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 H2ブロッカーの使用にあたっては、常に慎重な観察を行い、全身倦怠、脱力、皮下・粘膜出血、発熱、咽頭痛等障害を疑わせる症状がみられた場合には、直ちに血液検査を実施するとともに異常がみられた場合には与薬を中止するなど適切な処置を行うことが必要。

・タガメット、ザンタック、 ガスター、アシノン等

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・非イオン性X線造影剤による副作用

・イオメロン、イソビスト
 オプチレイ、オムニパーク
 ヘキサブリックス

 イオン性造影剤、非イオン性造影剤のいずれも、いわゆるヨード過敏症の患者に禁忌。かつて造影剤を使用したときに蕁麻疹、悪心、嘔吐などの過敏症状を認めたか否かをよく問診してその既往歴がある場合は使用しない。

 遅発性副作用を示す非イオン性造影剤等を使用した場合には、帰宅後、遅発性の重篤な副作用を起こす危険性があるので、観察を十分にできる入院患者に使用し、外来患者への使用は避けることが望ましい。

 確実な予知テストがなく、予知テストによってショックになることもあるので、テストを行うよりも検査時に医師が患者の傍らで注意深い観察を行うことが重要。

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・子宮収縮剤による子宮破裂、胎児切迫仮死等

・アトニンO、プロナルゴンF
 プロスタルモンF
 プロスタルモンE錠

 子宮収縮剤の適応としては胎児側因子と母体側因子が考えられる。胎児側因子としては過期妊娠、胎盤機能不全、子宮内胎児発育遅延などで、子宮内環境が悪く、分娩させて体外で管理した方がよいと判断される場合で、母体側因子としては前期破水、妊娠中毒症など、妊娠を維持することで母体に危険があると判断される場合。

 いずれの場合でも、胎児、母体のいずれもが子宮収縮剤の投与に耐えられるか十分検討し、子宮収縮剤の使用中に胎児や母体に異常がみられた場合は直ちに中止し、適切な処置を講じることができる条件下で使用すべきである。

 帝王切開の既往、子宮筋腫摘出術の既往などのある患者に使用することはできるだけ避けるべきで、止むを得ない場合は極めて慎重に使用する。
また陣痛誘発の場合は子宮頸管の成熟度が問題でビショップスコアーが低い未熟な状態で分娩誘発を行っても効果が少ないばかりで、分娩が遷延することが多い。何らかの方法で頸管の成熟度を上げてから子宮収縮剤を使用すべきである。過強陣痛にならないように少量から開始し、用量を調節できる輸液ポンプを用いることが望ましい。(下記参照)

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*過強陣痛が生じた場合の処置
 投与中は必ず分娩肝障害装置を使用し、陣痛と胎児心拍を監視し記録する。その上で陣痛状況をみながら少量ずづ点滴速度を上げていく。
・子宮収縮剤を直ちに中止する。
・ウテメリン等β2刺激剤を使用する。麻酔器がある場合は吸入麻酔剤を使うことも有効
・胎児仮死が発生した場合は酸素吸入するが、回復しない場合は帝王切開を行う。


《EMIとは》
 
電磁干渉:Electromagnetic Interference

 携帯電話を、電磁環境の影響を受けやすい医療機器に近づけない配慮が必要です。


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炎症性疼痛と神経因性疼痛

    基礎研究から見た慢性疼痛    関連項目
慢性疼痛について考える。 癌疼痛(モルヒネの効きにくい場合)

2003年7月15日号 No.364

 癌に代表される慢性疼痛は、主に炎症性疼痛と神経因性疼痛に大別されます。炎症性疼痛はNSAIDsやオピオイド系鎮痛剤により効果が得られるのに対し、神経性疼痛患者ではこれらの薬物が無効の場合があり、有効な治療法も確立されていないのが現状です。

 炎症は、有害刺激(抗原抗体反応、外傷、物理的・化学的刺激、微生物その他の寄生による刺激)に対して生体組織が示す局所の防御反応で、局所の浮腫や自発的な痛みあるいは痛覚過敏症反応などの疼痛症状を惹起させます。

*炎症性疼痛〜組織の損傷

*神経因性疼痛〜神経の損傷や機能障害

※ 可塑性〜物体にある限度以上の力を加えると連続的に変形し、力を除いても元に戻らない性質。→弾性。


 神経因性疼痛の原因となる疾患には帯状疱疹後神経痛、開胸術後痛、糖尿病性ニューロパチー、四肢の外傷・切断、進行癌などがあります。

 神経因性疼痛患者は同一の原因疾患であっても、神経の損傷、障害の程度などにより異なった症状を呈する場合があり、また他の神経因性疼痛と同様の症状を示していても、同一の治療法で疼痛が改善されない場合があることなどから、神経因性疼痛の発症と維持機構は、非常に複雑であることが想定されています。

 神経損傷により引き起こされる痛覚過敏反応や
アロディニアといった症状の原因の1つには、末梢からの入力に対する脊髄後角の反応性の亢進が示唆されています。この反応性の亢進に対して重要な役割を担う蛋白の1つとしてプロテインキナーゼC(PKC)があります。

 PKCは神経可塑性を引き起こす主要因子の1つで、このPKCの持続的な活性上昇がwind up現象やcentral sensitization(右欄参照)といった脊髄後角の可塑的変化を引き起こしている可能性が想定されています。

 一方、慢性炎症性疼痛には脊髄のプロテインキナーゼA(PKA)に関連した疼痛伝達機構が存在することが見出されていて、神経因性疼痛と慢性炎症性疼痛の脊髄を介した疼痛伝達機構は、異なる細胞内情報伝達系が関与することが見出されています。

※神経可塑性

 ・wind up現象〜末梢神経をある一定の強度と頻度で刺激すると、脊髄後角細胞の反応が刺激ごとに増強していく現象

 ・central sensitization;中枢感作〜さらに刺激が長期間続き、脊髄後角細胞が過敏状態になり、弱い刺激に対しても過剰に反応する状態

 このように、痛覚伝達の中継地点である脊髄後角では、記憶・学習に深く関与していると考えられている海馬でのシナプス長期増強(long-term potentiation;LTP)と非常に類似した神経の可塑的変化が惹起され、脊髄後角での神経の可塑性が痛覚過敏反応や
アロディニアといった異常感覚発症を引き起こす主な要因である可能性が示唆されています。

 また、炎症時の脊髄後角でプロスタグランジンE2(PGE2)の遊離が引き起こされ、これが痛覚過敏反応を誘導する原因の1つであると考えられています。

        関連項目 
慢性疼痛について考える。 癌疼痛(モルヒネの効きにくい場合)

   {参考文献}治療 2003.7    


2003年7月15日号 No.364

医学・薬学用語解説(ホ) クリック→ 
ボーダーライン症例


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