HS病院薬剤部発行     

薬剤ニュース  

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1994年

年末・年始号

NO.167

  医薬品副作用情報 NO.129    

       ****厚生省薬務局安全課****  

  1)グルコバイと腸閉塞様症状、低血糖

 グルコバイによって放屁増加、腹部膨満・鼓腸が発現することはその薬理作用からみてやむをえない症状であると考えられています。しかしこれらの症状が患者の無理な我慢や、薬剤の継続により重症化した場合には腸閉塞様症状にまでいたるおそれがあります。

 これらの症状はいずれも「腸管閉塞」として報告されたものですが、実際に腸管が閉塞しているわけではなく「仮性腸閉塞」、「イレウス様症状」、「腸閉塞様の症状」等が適切と思われます。

 ◎ グルコバイの効能・効果は「インスリン非依存型糖尿病における食後過血糖の改善」で、経口糖尿病病用剤(グリミクロン等)、インスリンとの併用は承認されていません。しかし市販後の副作用症例報告の中に、経口糖尿病用剤インスリンとの併用例で低血糖症状を起こした症例が報告されています。使用上の注意に従った適性な使用をお願いいたします。

 {使用上の注意}

他の糖尿病薬と併用した場合に低血糖が発現する場合があるので、原則として単独で与薬すること。やむを得ず併用する場合には慎重に与薬すること。

 患者に対し低血糖症状及びその対処方法について十分説明すること。

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腸管嚢腫状気腫症

  グルコバイの添付文書 2002.1

 主として腸管の一部にガスを満たした多発性の嚢胞が存在する病態で、圧力を持ったガスが腸管粘膜の潰瘍や裂け目などを通って腸管壁内に侵入し、発症するという説が一般的です。

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2)バップフォ−と緑内障発作

 バップフォ−は平滑筋直接作用と抗コリン作用による膀胱平滑筋の異常収縮抑制により、排尿運動抑制作用を示す尿失禁・頻尿治療剤です。

 これまでにバップフォ−により緑内障発作が発現したとする症例が3例報告されています。

 報告された3例の年令は73〜88歳で、いずれも女性でした。本剤の与薬開始から緑内障発作発現までの期間は23日〜約3ヵ月半であり、いずれも嘔気、眼痛を伴う視力低下があらわれています。

{使用上の注意}

 まれに眼圧亢進があらわれ、急性緑内障発作を惹起し、嘔気、頭痛を伴う眼痛、視力低下等があらわれることがある。

(このな場合には与薬を中止し直ちに適切な処置を行うこと)

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3)ベザト−ルSRと横紋筋融解

 ベザト−ルSRはこれまでにも、腎機能障害患者への与薬についての注意や横紋筋融解症の発現に関する注意事項が記載されていましたが、その後の報告では本来禁忌である重篤な腎機能障害を有する患者への与薬症例が多いことがわかりました。

{使用上の注意}

腎機能については与薬中も血清クレアチニン値を定期的に確認するなど注意すること。


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HDACの役割とテオフィリン

2003年5月15日号 No.360

    Hダック:ヒストン デ アセチラーゼ

 ヒストンとは、単純蛋白質の一種で、すべての真核生物の体細胞(クロマチン)の中に、DNAと複合体を形成して存在しています。

 刺激を受けていない非活性化状態の細胞では、DNAはヒストン蛋白にしっかりと格納され、転写因子などのDNA結合蛋白がアクセスしにくい状態にあります。しかし、細胞がいったん刺激されると、ヒストン蛋白はアセチル化され、それによってDNAとの結合が弱まり、各種DNA結合蛋白が結合しやすい状態(活性化状態)になります。

 DNAは遺伝子などの遺伝情報を保存し、ヒストンや非ヒストン蛋白質と結合してヌクレオソームを構成し、ヌクレオソームが基本染色体原線維を形成し、さらにその高次な構造としてクロマチン(染色質)を形成します。細胞が活性化されて遺伝子を発現する過程で、クロマチン構成蛋白であるヒストンのアセチル化、脱アセチル化にHAT、HDACが関わっています。
 つまり、細胞の遺伝子発現を促進するのがHATで抑制するのがHDACです。

 ヒストンをアセチル化して細胞を活性化する酵素が HAT(ハット):Histon acethltransferase

逆に脱アセチル化して活性化を抑制する酵素がHDAC(Hダック):Histon deacethlaseです。

 気管支喘息患者や
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者などでは、HDACの活性が低下しており、またHDAC活性の低い人ほど炎症性サイトカインの産生能が高くステロイドに対する感受性が低いことが分かってきました。

 HATとHDACのバランスが、細胞の活性化をつかさどっています。また、ステロイドの作用機序にもこのHATやHDACは深く関わっていることが分かってきました。

 HDAC活性の低下→
サイトカイン産生増加→炎症増強+ステロイドに対する感受性低下

 テオフィリンはHDAC活性を増強し、それによりステロイドの抗炎症活性を高めることが見出されています。

 テオフィリンによるHDAC活性の増強効果はPDE阻害作用やアデノシン拮抗作用とは全く関係のない新しい機序によるものです。

<ステロイドとHDAC>

 IL-1βで刺激された細胞では、転写因子の
NF-κBが核内へ移行しますが、その結合部位ではHAT複合体が形成され、ここでヒストンがアセチル化され転写が活性化されます。こうしてサイトカインなどの遺伝子が発現します。

 ところが、ステロイドが存在すると、ステロイドにより活性化されたグルココルチコイドレセプターがHAT複合体に結合し、直接その活性を抑制するとともに、HDAC複合体とも結合することによって反応局所にHDACを呼び込み、脱アセチル化を促進します。 ただし、ステロイドにはHDACを直接的に活性化する作用はないので、ステロイドがHDACを介して作用するには、HDACの活性化が必須であることが分かってきました。

{参考文献} 第50回日本アレルギー学会総会 イブニングシンポジウム7 (2002.12.1)


医学・薬学用語解説(ハ)

           ハーブで癌治療はこちらです。


クロマチン
chromatin
染色質

 真核細胞の核内にある、デオキシリボ核酸(DNA)と核タンパク質の複合体。

1つの個体を構成している細胞は、すべて同じ遺伝子をもっているにもかかわらず、発現している遺伝子は細胞によって異なっています。

真核細胞では、DNAと蛋白質の複合体であるクロマチンの構造変換により遺伝子発現を調節しています。

クロマチンは適切な場所で適切なタイミングによって遺伝子発現を制御するため中心的な役割を担っています。そしてこのようなDNAの塩基性配列を変えることなく遺伝子機能を変換するような分子機構は、エピジェネティックスな変換と称されています。

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 クロマチンはタンパク質として塩基性タンパク質ヒストンhistoneを主成分とし、非ヒストンタンパク質と少量のリボ核酸(RNA)を含みます。

 DNAは遺伝子などの遺伝情報を保存し、ヒストンや非ヒストンタンパク質と結合してヌクレオソームを構成し、ヌクレオソームが基本染色体原線維を形成し、さらにその高次な構造としてクロマチンを形成します。

 細胞周期のM期ではクロマチンの高度な濃縮が起こり、光学顕微鏡で観察可能な染色体という形態をとります。

 クロマチンは染色体chromosomeから由来し、形態から命名された用語でしたが,現在ではDNAを含む核タンパク質の物質としての名称となっています。クロマチン構造は静的な安定したものではなく、細胞周期や遺伝子発現、複製などに応じて動的に変化します。

 逆にクロマチン構造の変化が転写や複製の調節に一定の役割をもつと考えられています。活発に転写が行われているクロマチン部分はよりルーズな構造となっており、ユークロマチンeuchromatin(真正染色質)と呼ばれ、一方,転写が不活発なクロマチン部分は多量のヒストンと結合して、より堅固な高次構造を保ち、ヘテロクロマチン(異質染色質)と呼ばれています。

 ユークロマチンとヘテロクロマチンでは構成する一部のヒストンの種類が異なり、クロマチンの構造と機能の制御にヒストンの種類が関係しています。

  出典:不明 

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