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アルツハイマー病

1993年9月1日号 No.136

    AD:アルツハイマー病

FAD:常染色体優性遺伝を示す家族性AD


 アルツハイマー病については原因が良く分からない疾病とされてきましたが、最近になって脳に蓄積するβ蛋白およびその前駆体蛋白(APP)に関して興味あるデータが続々と報告されており治療薬への光明が見えはじめてきました。
APP:アミロイド前駆体蛋白質は膜レセプター様構造を持つリン酸化蛋白質で、神経細胞内情報伝達機構の乱れとの関連が示唆されています。

 アルツハイマー病患者脳では特徴的な病理的および生化学的病変を示すことが知られています。すなわち神経細胞の脱落に伴う脳の著しい萎縮の他に、1)アセチルコリンに代表される神経伝達物質の障害、2)アミロイドβ蛋白の脳内への蓄積に伴う老人斑の形成、3)神経原線維変化と呼ばれるリン酸タウやユビキノンなどからなる異常線維PHF(paired helical filamnt)の神経細胞内への蓄積等が特徴的です。

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 老人斑は、β蛋白と呼ばれる約40のアミノ酸から極めて難溶性のペプチドを主成分として構成されています。老人斑周辺の神経突起は腫大し変性しており、老人斑の形成と神経伝達物質の障害は関連しているものと考えられます。

 また、痴呆度との相関といった観点からも、老人斑と痴呆度との間には正の相関があることが知られており、さらにβ蛋白そのものが神経細胞を生化学的に障害することが明らかになるにつれ、前駆体APPからのβ蛋白の沈着、そして神経の障害へ至る過程の解明が病態の謎を解く重要な鍵となっています。


<アルツハイマー病治療薬の現状>

 アルツハイマー病の患者の脳内で、アセチルコリン系神経の障害が病態の原因であるとする考えが一時注目を集め、これに伴い脳内のアセチルコリン量を増加させるような薬剤、すなわちアセチルコリンエステラーゼ阻害剤を中心に、コリン作動生の神経賦活薬など多数が開発の途上にあります。

 現在では、神経伝達物質の異常はノルアドレナリン、γ-アミノ酪酸(GABA)をはじめ広範囲に渡っていることが知られています。それぞれの異常がアルツハイマー病患者で見られる周辺症状等に影響しているものと考えられ、治療薬の開発という立場からも、病態と各神経伝達物質系の障害との対応の解明が望まれているところです。

関連項目:
老化と異常蛋白質

2001.5追記

 理化学研究所と米ハーバード大学は、遺伝的な背景を持たない孤発性アルツハイマー病の原因について「ネプリライシン」という分解酵素の働きが低下し、アルツハイマー原因物質のβアミロイドの脳内蓄積量が増えることによって引き起こされる可能性が高いことを突き止めた。(日刊工業新聞 2001.5.25)

 アルツハイマー病の原因遺伝子による脳神経細胞の死滅を防ぐ物質を慶応大医学部で突き止められた。この物質はヒューマニン(HN)と呼ばれ、24個のアミノ酸からなる小さなな蛋白質。(読売 2001.5.22)


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認知症について最近の知見

2005年8月1日号 No.411

 「生後いったん正常に発達した種々の精神機能が、慢性的に減退・消失することで日常生活・社会生活を営めない状態」を認知症と呼ぶことになりました。

 後天的原因により生じる知能の障害である点が、知的障害とは異なります。中枢神経系の疾患を始めとして、様々な疾患が認知症の原因になり得ます。

*アルツハイマー病と老人性認知症(痴呆)

 いずれも病理学的には老人斑と神経原線維変化という構造物を特徴とし、臨床的には記憶障害を中心とする広汎な認知機能障害を呈します。

 原則的に、65歳もしくは60歳以下で発病するものをアルツハイマー病(以下AD)。それより遅く発病するものを老人性認知症(SDAT)と呼んでいますが、最近では両者をまとめてアルツハイマー病と呼ぶ傾向にあります。

*アミロイドカスケード仮説

 現在のところ、ADの病因は老人斑を構成するアミロイドと思われています。

 アミロイド蓄積→神経原変化線維→神経細胞死

*MCI:mild cognitive impairment

 以前からADの前駆期・初期の症状として様々な概念が提唱されてきましたが、最近最も注目されているのがMICです。

 現時点では認知症でも正常でもなく、近い将来ADへと進行する可能性の高い疾患です。

 MICと診断された人の10〜12%が1年以内に、最終的には約半数がADへと進行したという報告があります。したがってMCIは、早期のADを意味すると考えられています。

*MCIの定義  

1.自覚的な記憶障害の訴えがあり、家族によってそれが確認される。
2.運転や家計などの日常生活能力は保たれている。
3.記憶以外の全般的な認知機能は正常
4.年齢に比し記憶力が低下している。
5.痴呆は無い。

 記憶障害については、本人による訴えよりもむしろ家族の評価が当てになることが多く、例えば家族によって無理に受診させられた人では、かたくなに物忘れを否定しがちです。逆に能力の高い高齢者では記憶力の低下を嘆きがちです。

*IADL(Instrumentaru Activity of Daily living)

 交通機関の利用、旅行の計画と実行、金銭の取り扱い、電話をかけるなどができなくなり、普通のADLには支障が無くても、IADLは起こりやすくなっています。

 その他、作る料理のレパートリーが少なくなり単純なものを繰り返し作るようになる。症状が進むと、買い物で計算がとっさに出来ないので1万円札ばかり出す、などの行動が見られるようになります。

       {参考文献} 薬事 2005.7

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アルツハイマー病の発現機序

臨床と薬物治療 2000.1

 アルツハイマー病(以下AD)脳では、神経原線維変化、老人斑および神経細胞の脱落が起こる。神経原線維変化は異常にリン酸化されたタウ蛋白が構成成分であり、一方老人斑はアミロイド蛋白からできている。

 脳ではムスカリン(M)性とニコチン性受容体の2者が分布している。その中で、M性受容体の方が多く分布しており、サブタイプとしてM1〜M3の3つの受容体に大別される。

 M1受容体は学習・記憶に関与する大脳皮質や海馬に多く、M2受容体、M3受容体は心血管系などの副作用を引き起こすことに関与することが報告されている。したがってADの治療には非選択的なM受容体作動薬より、選択的なM1受容体作動薬が望ましいと考えられている。

 また、M受容体のうちM1とM3の賦活が、アミロイドβ蛋白(Aβ)の前駆体であるAPP(amyloid precursor protein)の代謝を促進し、分泌型のAβ前駆体蛋白(αAPP)を増加させるという報告もある。

 一方、ニコチンもAβ蛋白誘発神経細胞死に対して保護作用を有するという報告がある。これらの受容体の賦活が原因療法にもなり、ADの進行を止める可能性がある。

 ADの発現機構には諸説あるが、どの説も脳が障害を受けると、APPの過剰生産が起こり、Aβ分泌が増える。

 その結果APPの過剰産生→Aβ分泌→Aβによるシナプス脱落→ニューロンの死という連鎖が出来上がる。

アミロイドカスケード仮説〜Aβの分泌抑制、分泌促進あるいは凝集・沈着の抑制の作用を持つ薬物の開発


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亜鉛と認知症

2012年4月15日号 No.565

 亜鉛(Zn)は必須元素で、亜鉛を必要とする生体にとって重要な300以上の生化学反応が知られており、近年の研究からは細胞内情報伝達系に関与することが明らかになっています。

 亜鉛欠乏は、味覚障害や嗅覚障害がよく知られていますが、成長期での亜鉛欠乏症は、心身の成長障害や骨代謝異常、免疫異常など起こし、亜鉛トランスポーターの機能不全は腸性肢端性皮膚炎やEhlers-Danlos症候群などの原因となることが知られています。

 人の体内には約2gの亜鉛が含まれていますが、その約2割が脳内に含まれており、海馬、大脳皮質などには100〜200ppmの高濃度で存在しています。

* 脳血管性認知症と亜鉛

 通常、亜鉛はNMDA型グルタミン受容体に作用しその興奮を阻害することにより抑制的に働きます。ところが虚血時では、過剰な亜鉛がシナプス間隙に高濃度で放出され、その結果、亜鉛が海馬の神経細胞内に蓄積し、亜鉛自体がアポトーシスを引き起こし、グルタミン酸による神経細胞死を促進します。

*アルツハイマー病と脳血管性認知症の発症における亜鉛の関与

 亜鉛はシナプス小胞体にグルタミン酸と共に含まれ、神経細胞の興奮と共にシナプス間隙に放出されます。

 アルツハイマー病では亜鉛はβアミロイド蛋白質(AβP)の多量体化を促進します。βアミロイド蛋白質は、膜内に侵入してアミロイド-チャネルを形成し、Ca++ホメオスタシスの異常をもたらすことによって神経細胞死を引き起こしますが、亜鉛はアミロイド・チャネルを阻害します。

*亜鉛とプリオン病

 プリオン病は、クールー病、クロイツフェルトヤコブ病、動物では牛海綿状脳症(BSE)などとして知られる難治性神経疾患です。

 その発症には、体内に侵入してきた感染型プリオン蛋白質が、脳内の正常プリオン蛋白質を感染型に変化させることが発症の原因と考えられています。

 感染型と正常との間には化学的な差異はなく、βシート含量(下記参照)だけがことなっていることからプリオン蛋白質のコンフォメーション変化(下記参照)が発症に重要であると考えられています。

 βシート構造は、蛋白質の代表的な二次構造の1つで、まっすぐに伸びたポリペプチド鎖が平行または逆平行に並び、隣り合ったポリペプチド鎖と水素結合によって結びつき、安定した平面を形成しています。

 βシートが集合することにより、アルツハイマーなどの神経病を引き起こすことが知られています。

 βアミロイド蛋白は、水溶液中でランダムコイル構造をとる単量体から、βシート構造をとる多量体へと自己重合しやすい性質を持っていて、単量体では、神経毒性を持ちませんが、多量体となることによって毒性が増強されるという性質を持っています。

 単量体から多量体へ変わることをコンフォメーションといいます。このコンフォメーション変化を促進する因子としてアルミニウム、亜鉛、銅などの微量元素です。

 この意味でプリオン病はアルツハイマー病や他の疾患と同様に、疾患関連蛋白質のコンフォメーション変化が発症に大きく影響します。

 プリオン蛋白質自体がCu,Zn結合能を持つことなどから、正常プリオン蛋白質は脳内でCuやZnのホメオスタシスに関与している可能性が考えられています。

コンフォメーション病

 アルツハイマーの病理的特徴は、老人斑と神経原線維の蓄積、シナプスや神経細胞の脱落です。老人斑の主要構成成分はβアミロイド蛋白(AβP)です。このAβPの異常蓄積による神経細胞死が発症に重要な役割を果たすという“アミロイド・カスケード仮説”が発症の原因として有力視されています。

 またAβPは活性酸素産生など様々な悪影響を起こすことが報告されています。AβPがリボソーム膜に結合し、カチオン(陽イオン)選択的なイオンチャネル(pore)を形成することが見出されていて、この“アミロイド・チャネル”によって生じる細胞内Ca++ホメオスタシスの異常が細胞死をもたらすという“アミロイド・チャネル仮説”が提唱されるようになってきています。

 亜鉛は、形成されたアミロイド・チャネル内部に結合することによって、アミロイド・チャネルを阻害し、AβPによる細胞内Ca++流入を阻害することから、AβPによって生じる神経細胞死に対して保護的に働くことが示唆されます。

 このようなことから亜鉛はアルツハイマー病の発症においては、促進的、保護的両方の側面を持っているのではないかと考えられます。アルツハイマー患者脳内の亜鉛濃度に関しても正常高齢者と比較して上昇しているという報告もある一方、有意差がないという報告もあり、確定的ではありません。

<まとめ>

 アルツハイマー病、プリオン病、パーキンソン病、ハンチントン病などの難治性神経疾患では、βアミロイド蛋白室(AβP)プリオン蛋白質などの疾患関連蛋白質がβシート構造を形成し、神経細胞死を引き起こすという共通点を持つことから、これらの疾患に共通した“コンフォメーション病”という概念が提唱されています。

 これらの疾患関連蛋白質にはいずれも金属結合が報告されており、“微量金属によるβシート構造”“チャネル形成”“細胞内Caホメオスタシス異常”をキーワードとして統合できると考えられています。

     {参考文献} ファルマシア 2012.3


Humanin
ヒューマニン

アルツハイマー病関連神経細胞死を抑制する因子

 ADの主要な病因は神経細胞死で、これを抑制する因子の遺伝子をAD脳後頭葉cDNAライブラリーより単離しヒューマニンと名付けられました。

 ヒューマニンは24アミノ酸からなるポリペプチドで、インビトロにおいてADに関連する全ての侵害刺激による神経細胞死を抑制し、エトポシドなどの非AD関連因子の誘導する神経細胞死は抑制しませんでした。
 
 社会の高齢化に伴い、アルツハイマー病(AD)の患者が増大しており、根治的な治療薬が待望されている中、治療薬としてのヒューマニンの可能性が期待されています。

    出典:治療 2004.5


アルミニウムと痴呆


 飲料水や鍋などから溶出したイオン化したアルミニウムは一旦脳内に移行すると容易には排泄されません。

 アルミニウムは必須元素ではなく神経毒性を持っていることが明白です。
アルミニウムによる中枢神経毒性のメカニズムは完全に解明されていませんが、低カルシウム条件下でアルミニウムの曝露があると神経障害(精神活動遅延、言語障害、人格変化、幻覚、痙攣、貧血、骨軟化症)を起こすことが想定されています。

 アルツハイマー病では、飲料水中のアルミニウム量と発病危険率が相関するという報告があります。アルミニウムイオンはアポリポ蛋白E4同様に、βアミロイドの不溶化を促進する因子の1つに上げられていて、遅発性アルツハイマー病の発症に重要な関わりを持っていると考えられています。

 Desferrioxamineによるアルミニウムのキレートがアルツハイマー病の進行を緩やかにするとした報告もあります。

  出典:治療 2004.5

「アルミニウムと健康」連絡協議会という団体は、アルツハイマーのアルミニウム原因説はすでに過去のもので、アルミニウムを危険因子とする説には根拠がないとしています。

「アルミニウムと健康」連絡協議会 http://www.aluminum-hc.gr.jp


アルツハイマー病にヒスタミンH3受容体遮断薬

出典:ファルマシア 1999.7

 当初病因と考えられていたアセチルコチン系の機能低下以外に様々なニューロン系との関わりが判明しつつある。

 それらの中で、最近ヒスタミンニューロンとの関係について、ヒスタミンH3受容体遮断薬が痴呆の治療薬としての可能性があることを含めて興味ある報告が多数なされています。

 臨床的には、アルツハイマー病患者の死後、脳でヒスタミン量とヒスチジン脱炭酸酵素(ヒスタミン合成酵素)活性が減少することが報告されています。

 これはダウン症候群の患者にも見られ学習記憶障害のみられる患者に共通の現象です。

 また、組織学的には、アルツハイマー病患者の死後脳の視床下部でのヒスタミンニューロンの細胞体が存在する乳頭体近傍で、多くの神経原線維変化が認められています。

 これらのことから、ヒトでのヒスタミンニューロンの活性低下が学習・記憶障害に結びつくことが示唆されます。これを裏付けるものとして、アルツハイマー病の治療薬としていられるアセチルコチンエステラーゼ阻害剤(タクリン)がヒスタミンN−メチル基転移酵素の阻害作用も有しており、脳内のヒスタミン濃度を上昇させます。

 そのID50はアセチルコチンエステラーゼ阻害の用量よりもはるかに低いことから、ヒスタミンニューロンの活性化がアルツハイマー病の治療に有用であるということになります。

 そこで抗アルツハイマー病を目指して、中枢のヒスタミンニューロンを活性化するための有用な手段としてヒスタミンH3受容体アンタゴニストの開発が世界中で行われています。

 これらヒスタミンH3受容体アンタゴニストは、てんかん、睡眠障害、多動症(ADHD;attention-deficit hyperactive disorde)への有用性も検討されています。

 学習・記憶の過程は単一の神経系によって支配されるものでなく、様々なニューロナルネットワークによって制御されているものです。

 ヒスタミンは神経伝達物質であると共に神経調節物質ともいわれており、NMDA受容体の活性を調節し、長期増強(LPT)の形成を促進すること、さらに、ヒスタミンはバゾプレシンやTRHなど学習・記憶に関連する神経ペプチドの分泌も調節しており、ヒスタミンが中枢で様々な神経系の活性を調節して記憶学習等の高次機能に関与していることが伺えます。


カルパインとアルツハイマー病

出典:ファルマシア 2001.1

 カルパインは哺乳類にだけが持っている酵素で、プロテアーゼの活性とカルシウム結合EFハンド構造を分子内に持つシステインプロテアーゼです。(注:プロテアーゼはペプチド結合を加水分解する酵素の総称です。)

 カルパインは様々な生理的な機能の重要性に加えて、アルツハイマー病の原因酵素だと考えられています。

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γセレクターゼとプレセニリン(PS1)

 アルツハイマー病の病理学的特徴の1つは、大脳皮質でのアミロイド繊維の沈着です。

 その主成分はアミロイドβ-ペプチド(Aβ)であり、βアミロイド前駆体蛋白質(βAPP)が切断されて生じます。その切断を担うのがβセレクターゼ、γセレクターゼという2つの酵素です。

 γセレクターゼはプレセニリン1(PS1)と呼ばれる8回膜貫通蛋白質と密接な関係があり、最近PS1がγセレクターゼ活性を持つことが実証されています。

 このことにより、PS1がγセレクターゼの活性部位を有することが示されたことで、PS1はアルツハイマー病治療薬開発の重要な標的の1つとなりました。

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<医学用語辞典>


逆遺伝学:reverse genetics〜原因遺伝子変異と発症の対応関係。上流から下流への流れ原因遺伝子を出発点とする分子細胞生物学的アプローチ


レビー小体型痴呆


レビー小体型痴呆(DLB)は、注意力障害、認知機能の変動、現実的で繰り返される幻視、被害妄想、認識妄想、パーキンソン症状などが特徴です。

アルツハイマー(AD)のBPSDと比べると、厳格の頻度が高く、特に幻視が多く、妄想もしばしば見られます。

 DLEの患者は動作が鈍くなっていて、転倒しやすいために注意が必要です。
身体症状を伴っているので、早期に寝たきりになる可能性も高いので早めの対応が必要です。

<薬物治療>

 ドネペジルなどのコリンエステラーゼ阻害剤は、DLEの幻視などのBPSDや注意障害を中心とする認知機能障害に対して、ADよりも比較的効果があります。その理由として、以前からDLBではAD脳よりもさらにコリン系伝達が減少していることが知られていて、皮質シナプス後ムスカリン性受容体はADに比べて保たれていることから、ADよりも有効性が高いと考えられています。

DLEにドネペジルが通常の常用量よりも低用量で治療に使用されていますが、適応はまだ通っていません。

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脳血管性痴呆

 脳血管性痴呆は、中大脳動脈などの大きな血管の閉塞によるもの(広範塞栓型)、視床・海馬などの限局した病変によるもの(限局梗塞型)、脳の深部白質や大脳基底核周辺に大小様々に不完全な梗塞が多発した結果生じたもの(多発小梗塞型)などに分類されます。
また、多発小梗塞型の中でも、特に皮質下の白質全体が慢性に強く障害されたものはビンスワンガー(Binswanger)型と呼ばれています。
 

     出典:薬事 2005.7
 

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