メグレ警視(ジョルジュ・シムノン著)

メグレの写真
イタリアの有名な俳優ジーノ・セルヴィ扮する
メグレ警視(イタリアのテレビ局がシリーズ化した)
パリ(株式会社 昭文社発行 DOVE)P.136より

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          目 次

1.ジョルジュ・シムノン(Georges Simenon)の紹介
 一連のメグレ警視物を書いたジョルジュ・シムノンの横顔を紹介します。
2.メグレ警視の横顔
 メグレ警視とはどんな人物か、ジョルジュ・シムノンの作品から、その横顔を紹介します。
3メグレ警視の警察用人相書
 さらに詳しいメグレ警視の紹介です。
4メグレの住まい
 メグレ警視が住んでいたのは、どのあたりか。作品から住まいを描写します。
5.メグレの初捜査
 メグレ警視シリーズからジョルジュ・シムノンの作品に触れます。
6.訳者(荻野弘巳氏)あとがきより
 メグレ警視シリーズの特徴とは、どういうものなのか、多くのメグレ警視ものを訳し、作品を愛している訳者が核心にれます。
7.メグレ警視シリーズ36巻(河出書房新社版)一覧
 いまでは図書館でしか作品に触れることはできませんが、メグレ警視シリーズ36巻の紹介です。
8.参考図書

 メグレ警視を愛する人たちが書いたメグレ警視に関する図書です。
9.私の愛した名探偵
 朝日新聞に載ったメグレ警視の紹介です。
10. 海外事情「シムノンは20世紀年代記」
 日経新聞に載ったシムノンとその作品の紹介です。
11. メグレの誕生
 シムノンがメグレ刑事(後の警視)というキャラクターを案出したのは、オランダ東北部の小都市デルフジールの川に浮かべたボートの上でした。
12. オランダの犯罪
 メグレはオランダに出張し、フランス人教授がまきこまれた殺人事件を解決します。
13. 浦真弓さんからのメール
 オランダ在住の浦真弓さんからメールを頂き、いくつかの項目を追加しました。

 私の本棚には河出書房新社版のメグレ警視シリーズ36巻+αのほか2〜3冊の文庫版などがあります。個人の全集では最大です。メグレ警視の楽しさ、著者ジョルジュ・シムノンの紹介など、警視や著者を知らない人にも、また愛読者にも役に立つ情報を提供して行きたいと思っています。
 まず著者の簡単な紹介、1948年10月の作品である「メグレの初捜査」をとおしてのメグレ警視の横顔、36冊のタイトルなどを掲載し、参考図書からの抜粋も追加しました。

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1.ジョルジュ・シムノン(Georges Simenon)の紹介
 ジョルジュ・シムノン;フランス最大の推理小説作家です。1903年ベルギーに生まれ,1922年以降もっぱらフランスに住んで作家活動をつづけました。多作家として知られ,現在までに400冊以上の小説を書き,約4000万冊が売れたといわれています。メグレはシムノンが創造した探偵で,パリ警視庁所属の司法警察局警視です。メグレが登場するミステリーは1930年から1972年まで,102篇を数えます。 1989年に亡くなりました。(河出書房新社版のメグレ警視シリーズ裏表紙の解説に一部加筆)

2.メグレ警視の横顔
 ジュール・メグレ。身長5フィート11インチ、どっしりしていて、肩幅が広い。ものうい顔つき、いつでもひげを剃っているのは中産階級の生まれのせい。彼のスーツは上等の服地で、仕立てもいい。手はきれいで、よく手入れが行き届いている。ビロード襟の重い外套を着、たえずポケットのなかに両手を突っ込んでいる。帽子は山の部分が丸く、つばの幅の狭い堅いフェルト帽。警察官という一般的な観念からはほど遠い。
 結婚する前の若い時代のメグレは医学の勉強をしたがうまく行かず、二年間巡査をしたあと、パリ警察庁に入る。北駅のパトロール係、風俗取締班、デパートのパトロール係を担当させられる。そのあと階級が次第に上って行き、警部になり最後に警視になる。
 彼はリシヤール・ルノワール大通りの古いアパルトマンに夫人と二人きりで住んでいる。彼はこのアパルトマンを愛している。昼食にはできるだけ家に帰るようにしている。彼の主なリクリエーショソは、夕食後映画に行ったあとで、夫人と散歩することである。パイプを喫う彼ほ、オフィスに十五本のパイプをおいている。
 メグレは他の多くの探偵とちがって推理の方法を取らない。むしろ直観的な探偵である。犯罪捜査のさい、彼は自分自身を現場におく。彼は街々を歩き、何かをーいつもはビールかカルヴァドス、ときどきブランデーか、ペルノー酒か、あるいはアペリチフーを飲むためカフェに行き、数多くのことを自問する。そうしているあいだに、彼の部下であるリュカ、ジャンヴィエ、ラポワント、トランス刑事などが事件の背影をさぐる。
 メグレ自身が新しい雰囲気に馴化するとき、彼は捜査中の事件の関係者たちについて多くのことを知る。最後に彼は犯人を発見するか、あるいは彼のどっしりした肉体で犯罪老を圧倒し、自白に追い込む。
  メグレは人間に対していつくしみの心を持っている。彼のもっとも著しい特徴は非常に忍耐強いことである。

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3.メグレ警視の警察用人相書

 メグレ、ジュール、フランソア、アメデ。
 アリエ県ムーランから25キロにあるマチニョン近傍のサン・フィアークルで出生。エヴァリスト・メグレの一人息子。エヴァリストはロワール河岸の最も古い所領地の一つであるサン・フィアークルのシャトーの管理人を30年間つとめた。
 19歳のころ父を失う。ナントにおける医学の勉強も中絶した。ナントでは叔母の家に世話になっている。
 成年者ー身長1メートル80、体重110キログラム。
 頭髪ー濃い。黒みがかった栗色、こめかみに僅かではあるが白髪あり。
 外観ーがっしりとして強そう。一時期肥満していた。
 ルイーズと結婚。この女性はアルザス生れで、叔父叔母によりパリで育てられた。小肥り。料理上手。
 家庭には子供なし。生れて問もない一女児を死なせている。
 住所ーパリ11区リシャール・ルノワール大通り130番地。五階。
 衣服ー初期のころは、ビロード襟のマント、山高帽、半長靴、丈夫な黒のサージの上下。ネクタイはきちんと結んでいない。その後、おしゃれになった。背広で、白いワイシャツ。ズボソ吊りにチョッキ。厚い外套にソフト帽。
 習慣ーシガレットは吸わずパイプのみ。頭をかいて毛を逆立ててしまう。ダソス、トランプのブリッジなどはしない。自動車の運転はできない。甘い物は好きではない。初期においては、司法警察の自室のストーブの火をかき立ててから手を後に組んで暖まる。
 ドイツ語は片言。英語とブルターニュ語を理解する。
 好みの言葉昔「私は何も信じません。」あるいは「何にもありません。」
 顔を洗うのに、そこら中に水をはねちらす。大理石のテーブルの上で字を書くのが嫌い。まるでしみのような小さい字を書く。妻の留守の時はパリにいるのを好まない。
 勤務中に三回負傷。その仕事ぶりから、同僚によって、いい加減な人間だとしばしば考えられていた。
 退職してから、ムン・シュール・ロワールの小さな家で暮らしている。
 (出典 「シムノンとメグレ警視」)

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4. メグレの住まい
 1912年に結婚式があげられ、間もなく、ジュールおょびルイーズ・メグレ夫妻はパリのリシャール・ルノワール大通りの建物に居を定めるのである。
 このようにして結婚させたのであるが、原作者のシムノンは二人に住居を与えなければならない。シムノンは自らもよく知っているパリ11区を選んだ。十年問ばかりヴォージュ広場に彼は住んでおり、このあたりはとおってよく知っているので、番地は適当にきめた。つまり、130番地と132番地であるが、それはよく考える必要があった。132番地にあるアパルトマンは、シュマン・ヴエール街と数軒離れて、リシャール・ルノワール通りと、レビュブリック大通り、ジャン・ピエール・タンボー街の三つの道路にかこまれた三角形の島のようになっている。その入口はレビュブリック大通りに面している。だから、むしろ130番地の方がよさそうである。何故なら、この建物の二つの面がジャン・ピエール・タンボー街とフォリー・メリクール街にあるが、たしかに入口はリシャール・ルノワール大通りにあるのである。
 メグレ夫妻は、建物の修理のため数カ月離れることはあったが、ずっとそのアパルトマンに住みとおした。離れた時は、ヴォージュ広場の21番地に住んだが、ここは、ジョルジュ・シムノン自身が実際に1923年から24年にかけて住んだところである。最初は一階、次いで1925年にシムノンは三階を買いとっている。
 この夫妻のアパルトマンの買取りは問題なく行なわれた。すなわち、住居を探すことで夏の一部を費やしたメグレはルノワール街のアパルトマンを見つけた。「取りあえずこのアパルトマンにしておこう。刑事に任命された時、また考えようじゃないか。−それほどの値打があるのかしら。ほんのしばらく住むだけね。もっといい地域できっと見つかるわ。」
 メグレ夫妻ほ、30年後においても、同じ住居にいるなどとは考えてもいなかった。ましてや、退職後も、年に何日かしか使わないにもかかわらず、ずっと所有することになるとは想像もしなかった。
 (出典 「シムノンとメグレ警視」 地図は「メグレ警視の料理」)

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5.メグレの初捜査
 
第六章冒頭のパリの情景を描写した部分
 「この日の午後は素晴しい思い出となって彼の心にとどまるだろう。パリの春の最も美しい日で、空気はやわらかく、あまりにもいい匂いに満ちていたので、人々はそれを吸うため立ち止るのだった。おそらく何日も前から、女性は日中の暖いときにはコートをぬぎ棄てて外出しているのだが、彼はいまようやくそれに気がついた。明るい色のコルサージュの花盛りに際会したようだった。もう帽子には雛菊や、ひなげしや、矢車草がかざってあり、一方、男たちは彼女たちのためにボートを漕がされる羽目になる季節。」

6.訳者(荻野弘巳氏)あとがきより
 勿論この好篇を「メグレ・ファンには欠かせない」といったのは、これが一風変っていることだけではない。ここにはメグレの<捜査法>のいわば原点があるからだ。現場に行き、雰囲気にひたり、いわば被害者と加害者にのり移ってー内部から同じ心理的経験をするー、推理する・・・が見事に説明されている。後年のメグレはこのため心がいかに激しく動いても、それを表に出さないだけの貫禄を苦い人生経験のあとで身に備えているのだが、ここでの若いメグレは青くなったり赤くなったり、怒ったり絶望したりーすぐ辞表をたたきつけようとするーしている。真犯人は比較的早くからメグレにも、読者にもわかるのだが、犯罪の真相・動機は、作ってはこわし、こわしては作るカードの城のように、次第に完全なものになってゆく。

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7.メグレ警視シリーズ36巻(河出書房新社版)一覧
1 メグレと殺人者たち 長島良三訳
2 メグレ間違う 萩野弘已訳
3 メグレと火曜の朝の訪問者 谷亀義一訳
4 メグレの途中下車 榊原晃三訳
5 メグレと幽霊 佐宗鈴夫訳
6 メグレと口の固い証人たち 長島良三沢
7 モンマルトルのメグレ 矢野浩三郎訳
8 メグレと首無し死体 長島良三訳
9 メグレたてつく 榊原晃三訳
10 メグレ氏ニューヨークヘ行く 長島良三訳
11 メグレの初捜査 萩野弘巳訳
12 メグレ夫人と公園の女 佐宗鈴夫訳
13 メグレ式捜査法 谷亀義一訳
14 メグレと消えた死体 榊原晃三沢
15 メグレとベンチの男 矢野浩三郎訳
16 メグレと政府高官 長島良三訳
17 重罪裁判所のメグレ 小佐井伸二訳
18 メグレと優雅な泥棒 榊原晃三訳
19 メグレと殺された容疑者 佐宗鈴夫訳
20 メグレと宝石泥棒 長島良三訳
21 メグレ夫人のいない夜 佐宗鈴夫訳
22 メグレと妻を寝とられた男 大友徳明訳
23 メグレの打明け話 長島良三訳
24 メグレと田舎教師 佐伯岩夫訳
25 メグレの財布を掏った男 伊東守男訳
26 メグレとひとりぼっちの男 野中雁訳
27 メグレと録音マニア 佐宗鈴夫訳
28 メグレと老夫人の謎 長島良三訳
29 メグレと善良な人たち 小佐井伸二訳
30 メグレの幼な友達 田中梓訳
31 メグレとリラの女 伊藤守男訳
32 メグレと匿名の密告者 野中雁訳
33 メグレとワイン商 飯田浩三訳
34 メグレと賭博師の死 矢野浩三郎訳
35 メグレと殺人予告状 榊原晃三訳
36 メグレ最後の事件 長島良三訳

8.参考図書
 「シムノンとメグレ警視」 ジル・アンリ/桶谷繁雄訳 河出書房新社 1980.9.25
 「メグレ警視のパリ」 長島良三著 読売新聞社 1984.6.12
 「ベルギー風 メグレ警視の料理」 西尾忠久/内山 正著 東京図書発行 1992.5.22

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[Last Updated 12/31/2003]