樋口一葉の足跡を辿る



本郷菊坂の住居跡 震災にも戦災にも遭わず昔の面影を残している

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 V Ageクラブの「新書を読む会」では平成13年3月に森まゆみ著「一葉の四季」(岩波新書)を採り上げ、5月にはその足跡を辿ってみようということになりました。私は本郷湯島に生まれ、上野元黒門町で育ったので、一葉の移り住んだ所、本郷・下谷・浅草には縁があります。そこで4月には一人で本郷、浅草を歩き、5月には会の連中約十人で、ほぼ同じコースを歩きました。このコース案内は、そのとき調べた内容をもとに、まとめてみました。
 本郷は上掲の写真の住居跡や、伊勢や質店が昔のままの面影を伝えているのに対し、浅草竜泉寺や吉原は神社などを除き全く変わっていました。ただ一葉記念館には貴重な資料がよく揃えてあります。

「樋口一葉の足跡を辿る」コースと所要時間(単位は分)
         
本郷コース(本郷三丁目−春日)の徒歩時間は、歩くだけでおおよそ1時間、浅草コース(三ノ輪−浅草)は1時間半です。

詳しくは本郷の地図および浅草の地図を参照して下さい。

次表で( )内の数字は「一葉の四季」に出てくる頁と明治の年月日を示します。
本郷薬師
本郷薬師
1 本郷三丁目−本郷薬師(P.159)
 本郷三丁目には二つの地下鉄が通っています。都営の大江戸線と営団丸の内線です。交差点にある交番の北隣りに「本郷薬師」と書かれた額があり、そこをくぐって少し歩くと真光寺の本郷薬師(小さなお堂)があります。一葉の日記には「日暮れて後、母君と共に薬師に参詣す。(24.10.8)」とあります。

法真寺
2 本郷薬師−法真寺(P.8 本郷5-27)
 本郷薬師の前を更に北に向かって歩いて行くと、間もなく右手に東大の赤門が見えてきます。赤門の先あたり、道を隔てて左側に法真寺があります。
「上杉の隣家(となり)は何宗かの御梵刹(おてらさま)にて寺内広々と桃桜いろいろ植えわたしたれば、此方(こなた)の二階より見おろすに雲は棚引く天上界に似て、腰ごろもの観音さま濡れ仏にておはします」(ゆく雲)。
 境内の一葉会館は一葉に関するもの関係ないものが雑多に並べてあります。 

菊坂の路地
3 法真寺−菊坂町七十番地(P.28 本郷4-32-3)
 本郷通りを三丁目の方に戻ると本郷薬師の少し手前にパチンコ屋があります。そこを西の方に向かう通りが菊坂です。1キロほど坂を下ったところに左に階段があり、これを下ると、かって溝川だった菊坂下通りがあります。更に坂を少し下った石畳の路地の奧に一葉の使った井戸と住居跡があります。
 「我が家は細道一つ隔てて上通りの商人どもが勝手とむかい合い居たり。されば、口さがなきものどもが常にいひかわすまさなごとどもいとよく聞ゆるに」(26.3.12)。
伊勢屋質店
4 菊坂町七十番地−伊勢屋質店(P.39、P.47、P.82、P.165)
 坂の少し下って次の階段を元の菊坂に戻り、坂を少し下ると菊坂下の信号が見えてきて坂が終わろうとする右側に伊勢屋質店があります。向かって左側に蔵があり、昔の面影をよく伝えています。
 「夕刻より着類三つよつもちて本郷の伊せ屋がもとにゆく」(26.8.6)

丸山福山町四番地
5 丸山福山町四番地(P.46 西片1-17-8)−春日
 坂を下りきると言問通りにぶつかります(地図参照)。左に折れると春日からの大通り(白山通り)にぶつかります。交差点を北に渡って少し行くと道の右側に一葉の碑があり、ここが一葉終焉の地、丸山福山町四番地です。
 「家は本郷の丸山福山町とて阿部邸の山にそひてささやかなる池の上にたてたるが有りけり」(27.4)
 白山通りを南に戻ると、さっき渡った交差点のところにある地下鉄春日駅に着きます。
6 春日-上野摩利支天-三ノ輪
 春日から三ノ輪に出るには、都営地下鉄大江戸線で上野御徒町に出て、営団地下鉄日比谷線の仲御徒町から三ノ輪まで行くのが一番早いと思います。時間があれば上野御徒町から上野摩利支天(P.159)などに寄ることができます。
 「薄暮より国子と摩利支天に参る」(24.10.4)

住居跡の碑
7 三ノ輪−住居跡(P.38 竜泉3-15-2)
 三ノ輪は道が複雑なので少し判りにくいと思いますが、国際通りを南に向かいます。竜泉二とある信号から二つ先の信号を左に折れると飛不動前の信号があり、その少し手前の左側の道端に住居跡(竜泉3-15-2)の碑が建っています。
 「此の家は下谷よりよし原がよひの只(ただ)一筋道にて、夕がたよりとどろく車の音、飛びちがふ灯火の光り、たとえんに詞(ことば)なし。行く車は午前一時までも絶えず。かへる車は三時よりひびきはじめぬ」(26.7.20)

一葉記念館
8 一葉記念公園(P.41)-一葉記念館(P.41)
 飛不動前の信号の次の四つ角を左折すると次の四つ角の先の右角に一葉記念館が、左角(記念館の向かい)に一葉記念公園があります。
 一葉記念公園には一葉をたたえる碑があり、一葉記念館には一葉に関する貴重な資料が数多く揃っています。
 「ここは明治文壇の天才樋口一葉旧居の跡なり。一葉この地に住みて『たけくらべ』を書く。(旧居跡の碑)」

鷲神社
9 見返り柳(大門)−吉原神社−吉原弁財天-鷲(おおとり)神社を経て浅草
 一葉記念館を見たら東に向かい、一度土手通りに出ます。通りを東南に向かって10分位歩くと、交差点の先にあるガソリンスタンドの前に見返り柳があります。そこを右に折れると大門があり、其の先が新吉原の遊郭跡で吉原神社、吉原弁財天、鷲神社と廻ると吉原の概要がわかります。最後は国際通りを南に向かえば浅草寺(浅草観音)、浅草神社があり雷門は目の先です。ここからは営団地下鉄銀座線浅草または都営地下鉄浅草駅が数分のところにあります。

出典 森まゆみ著「一葉の四季」(岩波新書) 
山内住夫著 東京半日散歩(新潮社 とんぼの本)

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[Last Updated 4/30/2006]