「ポートレイト・イン・ジャズ」



和田誠 村上春樹共著
(株)新潮社

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             目 次

1. 目 次
2. まえがき
3. あとがき


1. 目 次

まえがき 和田誠 4

チエット・ペイカー 6
ペニー・グッドマン 10
チャーリー・パーカー 14
フアッツ・ウォーラー 18
アート・プレイキー 22
スタン・ゲッツ 26
ピリー・ホリデイ 30
キヤブ・キャロウェイ 34
チャールス・ミンガス 38
ジャック・ティーガーデン 42
ビル・エヴァンス 46
ビックス・バイダーペツク 50
ジュリアン・キャノンポール・アダレイ 54
デューク・エリントン 58
エラ・フィッツジェラルド 62
マイルズ・デイヴィス 66
チャーリー・クリスチャン 70
エリック・ドルフィー 74
カウント・ペイシー 78
ジェリー・マリガン 82
ナット・キング・コール 86
デイジー・ガレスピー 90
デクスター・ゴードン 94
ルイ・アームストロング
セロニアス・モンク 102
レスター・ヤング 106

あとがき 村上春樹

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2. まえがき                       和田誠

 中学生で映画が大好きになった。その頃観た「ヒット・パレード」は、象牙の塔にこもって古典音楽を研究しているコチコチの教授ダニイ・ケイが、ある日ジャズの存在を知り、巷(ちまた)に出かけてジャズを聴きまくる。
 喜劇仕立てのこの映画は、ジャズ入門篇でもあった。ペニー・グッドマン、トミー・ドーシイ、ルイ・アームストロング、ライオネル・ハンプトンなどなど、そうそうたるミュージシャンたちが出演して、演奏を聴かせてくれるのだから。
 そんなわけで、映画とジャズはほとんど同時にぼくのそばにやってきた。ぼくはまず映画が多くとり上げていたスイングに親しみ、さかのぼって古いジャズを聴いた。高校時代にはジャズの歴史に興味を持った。一方、ビ・バップも生まれていた。新しいジャズも聴かないわけにはいかない。
 大学の頃には、セロニアス・モンクやマイルズ・デイヴィスはすでに大物であったし、サッチモもデューク・エリントンも活躍していた。ジョージ・ルイスもキッド・オリイも、まだまだ元気だった。いろんな時代のいろんなタイプのジャズをたくさん聴いた。
 そうして大人になった。音楽は大好きだったが仕事にはせず、イラストレーターを選んだ。たまに展覧会を開く。個展は日常の仕事と違ってテーマを自由に選べる。そんな時、好きな映画や音楽を題材にすることが多い。
 92年に開いた個展のタイトルは″JAZZ″だった。20人のジャズメンを勝手に選んで描いた。その時の絵が村上春樹さんの目にとまり、エッセイをつけてくれることになった。97年には″SING″という展覧会をした。その中のジャズ系の人たちと、描きおろしを加えた26人で一冊の本になる。
 村上さんのジャズへの想いは、ぼくよりも熱く深い。展覧会の絵は方々に嫁入りをしてちりぢりになるが、村上さんの文章を得て、ぼくが描いたジャズメンがまた一堂に会することができた。嬉しいことです。
  1979年5月

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3. あとがき                     村上春樹
 ジャズという音楽にあるときふと魅せられて、それ以来、人生の大半をこの音楽とともに暮らしてきた。僕にとつて音楽というのはいつもとても大事なものだったけれど、その中でもジャズはとくべつな位置を占めているといってもいい。ある時期にはそれを仕事にまでしていたくらいだ。
 しかしそういうせいもあって、ジャズについてあらためてなにかを書くというのは、いささかしんどいところがある。あまりにも密着しすぎていて、なにから書けばいいのか、どこまで書けばいいのか……と考え始めると、だんだん気が重くなってくるのだ。
 でも和田誠さんの描いたジャズ・ミュージシャンのポートレイトを何枚か見せてもらって、「うん、なるほど、これならなにか書けるな」とすぐに思った。和田さんの絵を見ていると、そのミュージシャンに染み込んだ固有のメロディーのようなものが、僕の頭にすっと浮かんできて、それをそのまま文章に移しかえれば出来上がりという感じだった。だからとても自然に、とても楽しく仕事をすることができた。つまり「まず絵ありき」で、そこに僕があとから文章をつけるという作業の手順が、この本の場合とてもうまくいったわけだ。
 とくに僕が感心したのは、和田さんのこの26人のミュージシャンの選び方で、ほんとうにジャズが好きじやないとこういう人選はできないだろうなとつくづく思う。そういうところにも、すごく個人的に共感することができた。ソニー・ロリンズもジョン・コルトレーンも入っていないけれど(そのかわりにちゃんとビックスとティーガーデンが入っている)、それがつまりこの本の素晴らしくかっこいいところだと思って下さい。

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[Last Updated 5/1/2002]