冬である。田舎の方はよく知らんが、秋田は冬だ。
山の中では動物達が冬眠を始めている。昨今は、食いだめしようにも木がなくなってきて大変だそうだ。だからって里に降りてきたりすると撃ち殺されて、自分が食べ物になったりして、全く住みにくい世の中である。
そんなわけで
動物の話。
聞くところによると、
魚の名前にはずいぶんと方言があるらしい。残念ながら、俺は釣りをやらないのでその辺に関しては全く知識がない。
他をあたって欲しい。
大した根拠はないのだが、海にしろ川にしろ、漁師というのが、あまり広範囲の移動をしない職種だからではないか、と思っている。まぁ、遠洋漁業あたりはともかく。
「雑魚」のことを「
じゃっぱ」という、と言う話は
既にした。
逆に、陸上動物については、あまり秋田独自の呼び方というのはない。かなりじっくり考えたのだが、「
べご (牛)」しか思いつかない。この「べご」も語源不明だ。
*2
「えんこ (犬)」というのは前にも取り上げたが、これは「犬っこ」や「犬ころ」の訛りであろうと思うので、ちょっと俚言とは言いにくい。
勿論、アクセントが違うというのなら、「
うさぎ」「
きつね」「
たぬき」「
くま」といくらでも出てくるのだが。
名前の話にしよう。
「ポチ」なら犬、「太郎」は猿、「サクラ」は馬と相場が決まっている。
では、東北から北海道にかけて「
チャペ」と名付けられることの多い動物は何か。
答えは、
猫である。
どうやら、
アイヌ語で、猫のことらしい。
実家の猫は、代々「
ハナコ」であったが、今は「
シジミ」である。小さい頃、「シジミ貝」のような小さな目をしていたかららしい。今では、すっかり家主の座に納まり、ちょっと恰幅もよくなってわがままし放題。拾われてきた頃の、すぐに死んでしまうのではないかとやきもきさせた面影はどこにもない。や、別に、
俺と遊んでくれないから悪口を言っているわけではない。
猫というものは、よく言えば
哲学者、悪く言えば
傍若無人で、他人の都合などお構いなしである。
さっき柱で爪を研いで怒られていたくせに、次の瞬間には、自分のえさ場に行って「早くしろ」と催促していたりする。
こういうのを「
ずらっとして」と表現する。「
じらっとして」とも言う。厚顔な、とでも言おうか。何かの本で「
しれっとして」という表現を読んだことがある。これと同根の単語かもしれない。
「
ずらっとして」は猫専用の単語ではない。人間にも使える。
俗に、敵もさる者ひっかく者、と言う。
猫もひっかくものである。ひっかき傷の一つや二つは猫を飼ってるものの勲章だ、とまで言う人もいる。
これは「
かっちゃぐ」と言う。「
爪切ってやるど思ったっけ、かっちゃがいでしまった」なんてのはよくある話だ。
「
かっちゃぐ」は猫専用の単語ではない。人間にも使える。
これは犬も同様だろうが、心を許した人間のことを舐めることがある。
そんな時、人間は「
久しぶりに会ったのに、ちゃんと舐めってけだー」と喜んだりする。
タイプミスではない。
「
舐める」は特別な活用をする単語ではないが、「た」や「て」に先行するときに限り、「
舐めった」「
舐めって」と「っ」が入る。確かに、この方が発音しやすいとは言える。
「
舐めって」は犬猫専用の単語ではない。人間にも使える。
なんか気がついたら猫の話になってしまった。
では、寒さ厳しき折、みなまには
つつがなきよう。
あぁ、この「つつがない」は、「恙虫 (ツツガムシ)」に由来する。
ツツガムシにさされてリケッチアに感染する「ツツガムシ病」はかつては死亡率の高い病気
*1であった。それから転じて「恙」が病気・憂いそのものを指すようになった。
だから、「つつがない」は「健康である、平安無事である」という意味なのである。