Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第980夜

やばたんやこっせん4 (前)



 去年も紹介したが、NHK 宮崎放送局の「宮崎熱時間」枠でやっている宮崎弁を扱った番組。HDD レコーダーがキャッチしていた。
 いかに新聞を見てないか、という証拠。見るのが決まってるやつは時刻指定で録画してるから見逃すことはないんだけど、テレビ欄を丁寧に見てないから、まぁ大概、見落とす。
 火野正平のとうちゃこもこないだ宮崎編 (の再放送) をやったらしい。見た人から話をふられるんだが、見てないもんだから答えようがない。また来るらしいから、それはしっかり見ようと思う。

 杉尾宗紀アナが仙台放送局から戻ってきてて驚いた。
 というより、こないだ帰省した時、仙台放送局からのニュースを杉尾アナが読んでて、「え?」と驚いたのだった。
 例によってイカレポンチな格好で、「おばんでござりすです」と一生懸命に仙台弁でアピールしていた。

 さて、いまどきの高校生は LINE で会話する。NHK も「ライン」って言う。そういや「サラメシ」で「インスタグラム」って言ってるのも聞いた。
 会話例。
10 時集合!
宿題だりー!
それな
試験は?
やばたんやこっせん (‘?’がつくべきだと思うが放送ではついていなかった)
 まぁ、大体わかると思う。「り」は厳しいかもしれないが「了解」の短縮形だそうだ。前までは「りょ」だったのがさらに短くなったとのこと。
 念のために言っておくと「り」「りょ」は宮崎弁ではない。全国で使われている。ググってみると、「最近の若い者は」という記事が山ほど見つかる。「りょ」は、2013/11 の時点で流行語だったらしいから、すでに二年の歴史を持っていることになる。
 面白いと思ったのは、いきなり「り」にはならなかったんだ、ということ。というのは、スマホの場合、「りょ」の「ょ」がものすごく入力しづらく、それに比して入力の楽な「うかい」を落としたところでさほど楽になったという感じがしないからである。やはり、「『り』はまずいか」という判断が働いたのであろう。それが定着してからだと、「『り』でもいいか」となるわけだ。

 番組中では、宮崎弁は短縮しないでしょう、という指摘があった。
 これに対しては、「短縮したら理解不可能になる」という実利的な理由と、「宮崎弁はしみついてしまっている」という回答が。
 これについては、十文字学園女子大学松永修一教授が、方言はアイデンティティ、自分らしさに関わる、とコメント。
 前に紹介した『宮崎あるある』では、宮崎弁は小文字 (拗音) が多いので、スマホでメールするときは標準語になってしまう、というのがあったな。

 あと、「“OK”でいいじゃん」という指摘もあったのだが、それは年寄り臭いらしい。その感覚は分からんが、つい笑ってしまった。若ぶりたい人たちは注意されたい。

 今回の高校生は、延岡宮崎市から二校、都城からも二校、日南。前回より地域的なバリエーションは少ない。

 冒頭で寸劇がある。友達と待ち合わせしていたが、一人だけ遅れているのがいる、というときのラインのやり取り。
とりまラインしようや」の「とりま」も、宮崎特有の表現ではない。
まじおこやっちゃけど」の「まじおこ」も同様だが、後ろの「〜やっちゃけど」は宮崎弁ね。

 家で方言を使うと怒られる、というコがいた。
 お母さんが方言で苦労したらしい。
 松永教授は、最近は方言話者であることが肯定的に捉えられている、と「温和、堅実、律儀、実直」というような評価語を挙げてコメントしていたが、どうだろうね。それはまぁ色んな調査結果からも事実で、そういう人もいなくはないだろうけど、標準語が操れないとしたらそれはマイナス要素だよな。宮崎弁押しでアピールした、という酒井瞳の話は特殊例だし。
 まぁ、前途ある高校生に聞かせる話ではないかもしれないけど、方言である、というだけで否定する人は決して少なくないわけで。その辺は、英語ができると就職に有利だよ、というのと同じレベルでとらえておくべきだろう。そもそも、ここのところの流れは、方言をツールとして使うというアプローチの結果、肯定的にとらえられるようになった、っていうことなわけだし。

 つづく。



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