Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第981夜

やばたんやこっせん4 (後)



 NHK 宮崎放送局のローカル番組「宮崎熱時間」の「やばたんやこっせん」に借りた文章、後編。

 信号が点滅している状態を「パカパカ」と表現する。
 実はこれも『宮崎あるある』に書いてあったのだが、違和感がなかった (方言だという感じがしなかった) のでスルーしていた。どうも本格的に方言らしい。調べて見たら、愛知・岐阜・静岡の一部でも言うそうだ。
 なんで違和感を持たなかったんだろう。ああいう大きめのものが点滅するのって「パカパカ」でいいような気がするんだよな。LED みたいに小さいものだと「チカチカ」なんだけどさ。でも、番組でも言ってたけど、「パカパカ」ってオノマトペは馬のひづめの音だよなぁ。
 だが、もうちょっと調べて見たら、アニメーションで背景を点滅させる技法を「パカパカ」って言うらしい。「パカパカ AND 点滅」でググると、ほとんどがこの話題なんだが、点滅する様子を当然のように「パカパカ」で描写している人もいる。やっぱり、俺の感覚はおかしくはなかったんだと思う。
 ただ、「そう言う」と「言われて理解できる。違和感を持たない」というのとは別の現象である。したがって、「信号がパカパカ」は方言ではない、ということにはならない。
てかてか」という人もいる由。

 アクセント。
「下記に柿と書き、牡蠣を食べる」という、いかにもな例文を発音させているが、全正解者はいない。
 というか、正解を言われてもわからない、違いがわからない、という人もいたんじゃないか。
 十文字学園松永教授は、「崩壊アクセント」という語を使っていたが、出演者は驚いていた。そりゃそうだよな。自分の使っている言葉が「崩壊している」と言われたらショックだよ。
 俺も一応、気を使って「無アクセント」と言ってきたのだが、まぁ、学者さんの場合、学術的に適切かどうか、という観点で名称を選ぶのであろうから、しょうがないか。
 教授は、縄文以前の日本語はアクセントによる区別をしていなかったんじゃないか、と言っていた。俺が覚えていたのは、言語はアクセントを失う方向に変化する、というものであった。改めて調べてみたら、両方の説があるのね。きっと、最初に聞いたのを覚えてて、もっと他を見る、ということをしなかったせいだろう。
 ちなみに浅香唯は、ライブなどで張り切りすぎて足を攣ることがあるのだが、それを「攣っ」と言う。今まで聞いた範囲では「攣った」になったことがない。それが持ち味だと思って誰も指摘しないのだと思うが、本人も気づいてなかったりするかもしれない。

 宮崎弁で怒ってみる、というコーナーがあった。
 最初は「まこち」で、「本当に」。
 次が「ほがねぇ」。「だらしない」ということらしいのだが、これ秋田弁の「ほじねぇ」と同根だったりしない? 確か「ほじね」の語源は「これ!」ってのがなかったはずだし。
ほがねぇ」は、「穂がない」「帆がない」などの説がある由。

 宮崎弁を世界に広めよう、その前に隣県から、というコーナー。
 去年は大分からだったが、今年は鹿児島から高校生を招いている。テロップに出た学校名が間違っていて大変に失礼。
 宮崎では「てげ」は「大変に・非常に」だが、「てげてげ」は「適当」である。一方、鹿児島では「てげ」と「1てげ」で「適当」になるらしい。この「1てげ」が若者らしくて楽しい。
 鹿児島の高校生に勧めたい宮崎弁の一は「いっとんすかん」。
 これ「いっちょん」じゃないの、と思ったんだが、まぁ、ネイティブが言ってるんだから間違いってことはあるまい。ただし「いっとんすかん」では全くヒットしない。逆に「いっちょんすかん」だとほぼ九州全域で使われている感じ。
 音から「一番」だと思ったんだが、意味は違うようだ。「全然〜しない」の「全然」に相当する模様。
 二番目は「何しちょん」。去年、宮崎弁には「ちゃちゅちょ」が多い、というようなことを言われてたような気がするが、これもそう。
 三番目は「好きやっちゃけん」。ニュアンスがいまいちわからないんだが、「好きなんだよ」てな感じでいいのかな。
「よかにせ」は都城の高校生から出た表現だが、それは既に鹿児島で使われている。
 鹿児島勢が選んだのは「好きやっちゃけん」。恋に恋する少女たちだからかぁ、と思ったら、これに相当する鹿児島弁独自の表現がないのだそうだ。へぇぇ。

 後ろの黒板に色々な宮崎弁が書かれていたのだが、その中に「なんじゃこら大福」があった。
「なんじゃこら」自体は宮崎弁でもなんでもないが、「なんじゃこら大福」は宮崎名物である。
 にしても、それをそのまま映すとは、ほんと NHK も柔らかくなったねぇ。



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