1. から辛うじて、汁ものだろう、という見当はつくが、そこまで。
先週の「
てんばおくもじ」と違って、材料に全く触れられていない。「
わらすぼ」は材料だろうが、方言なので、よそ者にとってはヒントにならない。
これを回答者 (妄想者?) の料理人が:
「
わらすぼ」を良く使うって、ヒントじゃなく無いですかね
と言っていた。「ん?」とひっかかる。
意味は分かる。俺と同じで、「
わらすぼ」がヒントになってない、と言っているのである。が、どうしてもひっかかる。
ひっかかるのは後ろだ。「ヒントじゃなく無いですかね」のところ。
分解してみる。「ヒントじゃなく無い」と「ですかね」。
前半はこれだけで成立する。まぁ、最近 (という言い方はあれだが、30 年遡るかどうかってところだと思う
*1) 使われる、砕けた言い方である。テレビに出る、という文体の高いシチュエーションなのでこれに「ですかね」をくっつけたのであろう。
まず、表記がおかしい。
別の語に置き換えてみる。「これ、高くない?」とか。この「ない」を「無い」とはしないはずである。「高く無い?」という表記はおかしい。つまり「ヒントじゃない」にも「ヒントじゃなくない?」にも「無い」の入る余地はない。
あとは、「ヒントじゃなくない」と「ですかね」の接合。
「これ、高くないですかね」はおかしくない。
正直言うと、かすかに違和感はある。原因は最後の「ね」だ。「これ、高くないですか」だと自然で、テレビでの発言としてもおかしくない。
それと同じで、「ヒントじゃなくないですか」だと「ヒントじゃなくないですかね」よりも違和感は弱まる。それでも、「高くない〜」に比べると「ヒントじゃなくない〜」の方はどうにも落ち着かない。
上に書いた通り、「ヒントじゃなくない」が新しい表現、しかも、砕けた表現であることが原因なのではないか。「ヒントじゃなくない」と言ってしまった後で「です」をくっつけたところで、もう遅い、というか、丁寧さの度合いが違って、不自然なのだと思われる。
長くなった。料理に戻る。
「
わらすぼ」は蕨、これを酢に漬ける、ということで駄洒落的な解決。
で、うれしいとき用には鯛、悲しいときに用は野菜だけの精進料理、という解釈。すって蒸して作った餡を湯葉で包む。四角く作ったものを対角線で切れば三角になる。
金沢らしく、前者には金箔、後者には銀箔。銀って食っていいもんなんだ。知らなかったよ。
もう一組は、白山の旅館。
大将がマタギなんでそうで、石川にもいるの? って調べて見たら、
Wikipedia では新潟まで載せていた。
こちらは、「
わらすぼ」をイノシシで解決。イノシシの子供は「ウリ坊」と呼ばれるが、子供なので「わらべ坊」から、というこちらも駄洒落解決。
ふきのとうを味噌にして、四角または三角の揚げにご飯を詰めて焼く。旨そう。
「春の香りの」とか言ってるが、もう 6 月よ。
正解は、こんにゃくを使った煮物である。凍らせて乾燥した凍みこんにゃくと生こんにゃくが入る。四角三角はその切り方。
三角は不祝儀用で、なくなった人の額につけるあれから来てるんだそうな。
「
わらすぼ」はかまぼこのこと。「藁苞」でくるんであるので、それが変形したものだそうな。
で、この「
わらすぼ」を
Google に突っ込んでみた。ヒットしたのは、有明海で取れる魚である。
ハゼの仲間なのだが、体型はウナギに似て細長い、そのため「藁苞」と呼ばれたのであろう、と
Wikipedia に書いてある。でも「藁素坊」という書き方もある由。
*2
今回は、これで終わらない。福岡県古賀市に飛ぶ。
唐津で「
だぶ」と呼ばれるこの料理、福岡まで海に沿って食べられており、古賀では「
らぶ」と呼ばれるのだとか。これは面白い。
ご当地では、ダ行音がラ行音になるのだそうで、「
そうれすな (そうですな)」「
かろ (角)」などの例も紹介された。
で、「
らぶ」に入れる「
らぶ麩」「
らぶ碗」という専用の食材・食器があるのだとか。でも、こっちはググってもほとんど見つからない。ほとんど、この番組に関する記事なのだが、
一つだけあった。ただし、写真がなくなってしまっている。
ひょっとして、と思って「
だぶ椀」「
だぶ麩」で調べて見たらいくらか出てきた。ただし、佐賀。いや、
ダ→
ラという特徴を自覚してるんだとすると、「
だぶ」が標準形と認識されているのでは、と思ったのだが。
この手の番組では市が登場することが多くなった。市町村合併の結果である。「○○市□□地区」と紹介されたら、元「□□町」「□□村」のことが多い。今回の唐津市七山も白山市鳥越もそうだった。
俺自身は、そうした方が業務の効率化が図れる、というのもわかるので、市町村合併には賛成でも反対でもない。ただ、こうした番組で寒村や鬱蒼とした森が映されるたびに「市?」と思ってしまうのは、なんだか切ない。
*1
更に、「エイリアンのような魚」と言われることがある、とも。
前に「ろくべえ」という料理を紹介したが、その出しは、昔はこのワラスボで取ったらしい。
(↑)
*2
スチャダラパー feat.小沢健二で「今夜はブギー・バック」という曲がある。これに「よくなくなくなくなくなくない?」という歌詞がある。
1994 年の曲で、「〜じゃなくない?」「〜じゃなくね?」という形が一般に使われるようになったのは、その数年前、というところだと思うけど自信ない。
シンプルな「ヒントじゃないよね」の代わりに「ヒントじゃなくない?」というややこしい言い方が作られたのは、やはり断言を避けるためだと思われる。(↑)
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