Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第964夜

うちトコ4 (2)



 もぐら氏の「うちのトコでは4」に乗っかった文章、二本目。

 動物ネタ。
 栃木で、「もろ」「さがんぼ」と言ったら鮫のこと。
 言い方の問題ではなく、種類が違う模様。「もろ」はネズミザメ、「さがんぼ」はアブラツノザメだそうだが、どう違うのかはよくわからない。
 前者はモウカザメ・カドザメ、後者はムキサメ・ボウザメという呼び方もある由。ただ、アブラヅノノザメの皮をむいたものをムキサメ・ボウザメと言うのだ、という記事もある。レシピの記事がたくさん出てくるのだが、そういう記事では調理用にむいたものにしか言及しないので、判然としない。あと、アオザメのことをモロサメ (こっちの「サ」は清音) とも呼ぶそうで、ややこしいことこの上ない。時間かけて整理しないとだめか。
 鮫は泌尿器系が不完全なため、体内にアンモニアが漏れ、その結果、腐りにくいので日持ちがする。そのため、栃木のような内陸県で魚に替わる蛋白源として重宝されていた、ということはたまに聞く。北陸ないし中国地方で「ワニ」と呼ばれたりする、というのは有名な話か。
さがんぼ」については、尖った形が氷、「さが」に似ているからそう呼ばれる、という記事が散見される (「さが」自体は隣の茨城でも使われるようだ)。秋田でいうところの「しが」と同じ語かと思うが、ちょっと民間語源っぽい感じもしないことはない。
 実は、「ボウザメ」という呼び方は「さがんぼ」かの「」から来たのではないかと思ったのだが、「ボウザメ」の使用範囲は結構広く、見当違いの想像だったようだ。

 愛知でカブトムシを意味する「ごっとー」。ただ、成虫ではなく幼虫のことだ、という記事もある。
さいかち」という形はか紹介した記憶がある。
 茨城の「ちゅんちゅんめ」は雀。幼児語みたいな響きだが、そういうわけでもないらしい。「ちゅんちゅんめ」が変化して「すずめ」になった、という記事を見て「は?」と思ったが、「すずめ」が鳴き声から来てるのは確かなようだ。
 動物というくくりでいいのかどうかって話はあるが、「ごんご」は岡山で河童。そういう名前を付けた呑み屋があるらしくて方言の記事を見つけるのに一苦労なのだが、津山市ではごんごまつり、そのキャラクターごんちゃんごんご通りという商店街、ネットワークサービスに「ごんごネット」という名前を付けたケーブルテレビ局など「ごんご」で押している。
 そうかと思うと、県北部には「ごんご」を冠したバス路線があったりして、河童はかなり愛されている模様。晴れの国で水の妖怪。
 なお、河童の俚言形は全国に山ほどある。多すぎるので一々挙げない。
 秋田市の下浜羽川に「河童長根」という地名がある由。他にもあるかもしれないね。
 最後、広島で「たいたい」は魚、こちらは幼児語。「鯛」から連想してしまうが、淡水魚も指すらしい。広島カープグッズのうち、乳幼児向けのものには“taitai”というブランド名が付けられている由。「とと」と似てる感じもしないことはない。九州や四国の一部では「じじ」だそうだ。

 話は変わるが、広島の県魚は「カキ」らしい。
 魚か? と思った人もあろうが、秋田の県の花は「ふきのとう」である。植物だから花には違いないが、あれを花だと思って見る人もそんなにいないよな (生け花に使う人はいるらしいが)。
 面白そうなので、微妙なシンボルを調べてみた。
富山県の魚 ホタルイカ、シロエビ
福井県の魚 越前がに
愛知県の魚 クルマエビ
広島県の花 モミジ (正式には定められていないらしい)
三重県の魚 伊勢えび
熊本県の魚 クルマエビ
 どうも、魚で頑張る県が多いようである。
 ダブってるのも多い。
 長野岐阜・富山の県の鳥はどれも雷鳥だが*1、これは「ご近所だからねぇ」と納得できる。かと思うと、秋田群馬が やまどり、宮崎がコシジロヤマドリである。
 まぁ、これで、北海道の花と沖縄の花が同じだったらびっくりするが、さすがにそこまで離れてるのは見当たらない。

 あれ、もう紙幅が尽きちゃったよ



*1
 細かいことを言えば、富山と岐阜は「ライチョウ」、長野は「らいちょう」。(
)





"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第965夜「うちトコ4 (3)」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp