もぐら氏の「
うちのトコでは４」に乗っかった文章、三本目。
時期的に雨の話をいくつか。
京都の山の方、丹波では、降り始めの弱い雨を「
ピリピリ」と表現するらしい。うーん、なかなか難しい。
でも、それがかすかに顔にあたる感じは、わずかに痺れるという「ピリピリ」に似ていないこともないような。
「
傘にのせる」
本では香川・岡山が挙げられているが、中四国の一部で言う。これは、一緒の傘で歩く、つまり、「傘に入れる」という意味。
NHK の「
気になる言葉」は、「誘いに乗る」「話に乗る」を挙げて、「乗る」に「仲間に入る」という意味がある、としているが、ちょっと納得できない。
「誘い」や「話」だと、持ち込まれたものに上がり込む、というか、そのまま連れていかれる (「口車」なんかまさに!) という感じがあって「乗る」がふさわしいような気がするのだが、傘の場合、どうもその「
乗る感」がない。
まぁ、傘の場合は上から差し掛けるものだ、という物理的特性にひっかかっているのか、「誘いに乗る」「話に乗る」が方言ではなく馴染んだ表現だからそう感じられるのか、その辺は微妙だと思うのだが。
香川の一部では、濡れることを「
くさる」と言う由。一歩進んでいる。
梅雨に入ると苦労する作業の洗濯。
宮城の「
はしゃぐ」は「乾かす、干す」だが、ググったところ岐阜の例も見つかった。
さらに探すと、また NHK の「気になる言葉」だが、洗濯物が乾いて気持ちいい、という長野の「
はしゃばしゃする」という表現が
紹介されている。
これには、「乾く」に関連した「
はしゃぐ」系の表現が、静岡・富山・愛知などにもあることが報告されている。
こちらの記事によれば、「はしゃぐ」は元々「乾く」で、「浮かれる」というのは派生だとのこと。
田んぼやなんかで土が乾くと割れて端が浮いてくるが、それからの連想らしい。またケチをつけてしまうが、具体的過ぎて逆に眉唾に感じられてしまう。手元の古語辞典では確認できなかった。
同じく静岡では、洗濯物を取り込むことを「
寄せる」と言う由。
季語、特に春の季語は東北では実感に合わない、という話。
福島の三春町については、桃・梅・桜の三つが一気に咲くからその名前になった、という俗説があるらしい。たとえ俗説であっても、そう感じられる状態だ、というのはあるわけ。
ステロタイプ的には、卒業式や入学式は桜だろうが、北国ではそれはあり得ない。秋田市の場合、桜の時期は 4 月上旬ないし中旬あたりなので、気象条件によっては入学式がひっかかるかもしれない、というレベル。少なくとも、卒業式ということは絶対にない。 ということで、ここから地域相互の違い。
「
言えへん」は地域によって意味が違う。大阪では単に「言わない」だが、京都では「言うことができない」。漫画では、(擬人化した) 大阪が (同) 京都に「
京都は、奈良の悪口言えへんなぁ」と言う。これは、京都には「奈良の悪口を言えない」と理解されてしまうので、なんか弱みでも握られてんの、というような裏を読まれちゃったりして摩擦が起こる。最近は、近畿全体で「
言われへん」という言い方を導入して体系が整理されている由。
「
〜よる」は、兵庫の播磨地方では「〜するところだった」という意味なので、「
車にぶつかりよってん」と言っても本人は無事、と言うことが起こる。
さらにこの「
〜よる」は山口では敬語表現なので、「
先生が来よった」という言い方ができる。これはほかの地域の感覚では「来やがった」という感じなので、誤解が生じる。各地の方言について「乱暴」「怖い」というイメージが生まれるのには、こういう誤解が関係してるのかもね。
東北から北関東、中部の一部で「
はそんする」「
はそんじる」という形があり、これは「修理する」「直す」という意味らしい。めっさ誤解生みそう。
島根で「
がいな」は「大きい」だが、高知では「粗暴」。
本では石川としているが、「
りくつな」が「よくできている」という褒め言葉である地域がある。これも、「理屈先行」「考えすぎ」みたいな受け止め方をするところも多いだろうなぁ。
「塩分が多い」の表現も各地で違う。近畿方面では「
からい」、北陸辺りでは「
くどい」。まぁ「塩辛い」という言葉もあるし「
からい」は地続きな感じがするが、マスタード類の味も「からい」らしいから、文脈を読む必要はあるんだろうな。「
くどい」は「味が濃いこと全般」らしいので、これも同様。
秋田では「
しょっぺ」だが、「
しょっけ」という人もたまにいるような気がする。
この項、来週で終わる予定。
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