もぐら氏の「
うちのトコでは4」に乗っかった文章、四本目。
面白いと思った表現、いくつか。
京都で「知り合いが多い」ことを示す「
お門 (かど) が広い」。マンガでは、お土産を貰った時に、「こういうのを配らなきゃいけない相手は多いでしょうに、申し訳ありませんねぇ」というような文脈で使われている。
「多い」とも言うようだが、ググってみたら愛知と鳥取の記事も見つかった。
日本 UNISYS の
中部支社がなぜか方言のページを持っていて、
そこにも書いてある。
愛知・京都・鳥取とつながっているのかと思ったが、ほかの地域の記事が見当たらない。
熊本で、寒くなることを「
身寒 (みがん) のよか」と言う由。「良い」なら暖かいことを言うのではないのかと思ったりもしたが、主体は「身寒」なので、そういう意味になるのだろうか。いずれ、なんか雅な響きのある表現。
滋賀の津は世界で最も短い市名ということでギネスに登録されているらしい。確かに仮名では「つ」一文字だが、アルファベットなら“Tsu”で三文字、そんなに短くないのでは、と思ったが、さにあらず。“Z”なのであるらしい。そう来たか。
マンガでのツッコミはそこではない。近畿なら「
つー」と二音節になるはず、と。確かに。
特集マンガは二編で、秋田と山梨が主役。
秋田の方は
大曲の花火大会。
まず、日本の花火の歴史から書き起こしているのだが、想像の通り、元は鉄砲である。火薬の技術者たちが花火を手掛けて広がった。
本によれば、戦国時代に日本にあった鉄砲の数は、ヨーロッパ全体にあった鉄砲の数より多かったんだそうで、輸入するだけの後進国かと思ったらとんでもない。それにしても、どれだけの金
(かね) が出てったのやら。
大曲の花火は、今でこそ有名な大会だが、そうなったのはやっと 30 年、というくらいのとこらしい。そう言えば、子供の頃に聞いた記憶がない。
1987 年にベルリンでやったときに、「地上には壁があるが、空にはない。東西で楽しんでほしい」というようなことを言った、と書いてあって、失礼ながら「ほんとかよ」と思って調べたら、本当だった(例えば、大仙市の
記事)。大胆なことを言ったもんだ。なお、ベルリンの壁が崩壊したのは 1989 年。
山梨の方は、日本住血吸虫症という病気。記録は戦国時代までさかのぼり、原因となる寄生虫は明治 37 年に特定されたものの感染経路がわからないため感染を抑えることができず、皮膚から侵入することがわかっても、中間宿主である巻貝の生命力と、その貝と接触した水に触れれば感染する可能性がある、という特徴から対策は困難を極め、最後の患者が報告されたのは 昭和 53 年、終息宣言が出たのはついこないだの平成三年、寄生虫が特定されてから 80 年もかかった、というすさまじい話。
マンガで「地方病」って書いてるので、「差別されたりした悲しい歴史もあるから、ぼかすためにこう言ってるのか」と思ってたら、本当に「地方病」って呼ばれていたことを知ってびっくり。
山梨は今や果樹王国だが、それには、原因となる寄生虫の宿主である巻貝の住処となる田んぼをつぶした結果という、これまた辛い事実がある。
*1
この特集マンガで方言を拾うことはあまりないが、今回は「
江戸わずらい」というのをピックアップ。
これは脚気のこと。参勤交代で江戸に行った武士たちが、江戸で白米ばかり食べるようになると、地元では玄米で補給していたビタミン B
1 が欠乏してしまう、というお話。
美食は人生を貧しくするよね、ほんと。
この特集マンガは、主役の県だけで話が進むのでなく、他の都道府県も有機的に絡んでくる。例えば山梨のエピソードの場合、同じような病気に悩んでいた広島や佐賀も一緒になって研究を進めていくところなんか、熱血展開である。
最後に方言から離れる。
地震の速報で「埼玉沖」という表現が出たことが取り上げられている。ネット上のネタかもしれないが、としているけど、なんか事実っぽいね。
こないだは、鉄道でアクシデントが起こった時、駅の電光掲示板に「安産確認が済むまでお待ちください (「安全確認」のタイポ)」てな表示が出た、という話を聞いた。「インド5強 (「震度5強」のタイポ)」、というのも時折ネットで見られる。
(擬人化キャラの) 滋賀を怒らせると、どういう報復を受けるか。
「日本晴 (米) をおいしく作るぞ!」と言われる。
何を言ってるのかと言うと、コメのおいしさの基準になっているのが滋賀の日本晴という米なので、これを美味しく作られてしまうと検査のハードルが上がっちゃって困るだろ! ということ。地味だが笑った。
群馬のゆるキャラ「
ぐんまちゃん」だが、前は
別のキャラだったんだそうで。秋田市ではスギッチがもうすぐ
リストラされる予定である。
今年のカレンダーの理不尽さについては
前に書いたが、GW が終わったらもう海の日まで祝日はない。その海の日だが、内陸県の奈良では「
山の日・川の日」となっているんだそうだ。
というわけで「うちのトコでは4」で四回連載になってしまった。
眉をひそめている人もいるやに聞き及ぶが、「完全に真に受ける」と「全否定する」の間のところに遊ぶってのもなかなかいいもんだと思う。
*1
Wikipedia の記事では、田んぼがつぶされたのは高度経済成長期の開発によるもので、副産物に過ぎない、と読めるが。
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