Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第881夜

ちゃわんむしのうた



 秋から初冬にかけては忙しい。
 去年と同じである。今年は、ピアノの発表会が別の予定とぶつかってしまって参加できないので、その分は楽だが。
 先週、ゴダイゴ日比谷野外音楽堂でのライブに参加するため上京したのだが、今週 (正確に言えば今日) は、情報処理技術者試験である。
 今回は完全に準備不足。詳しくは書けないが、受験するについてちょっと会社と一悶着あって一時、勉強を休んだのが地味に効いている。
 あと、数字を覚えなければならないのが辛い。以前から、「細かい数字は後から調べればわかる。頭に入れる必要があるのは考え方」というポリシーで仕事をしてきているので、「1000BASE-LX は、IEEE802.3z で規格が定められており、波長 1350nm の光を使い、最長到達距離はシングルモードでは 10km、マルチモードでは 500m」というのを山ほど暗記しなきゃいけない、というのは苦痛である。現実に覚えられないのだが、覚えなければならない、ということ自体が不愉快。きっと今頃、試験会場で傷薬が取れそうな脂汗をかいてるはずである。
 大体、試験前に旅行かよ、という話はあろうが、自分でもそう思って、三連休なのに一泊二日で帰ってきた。
 で、休日の月曜は勉強するつもりだったのだが、あれこれ雑用が片付かず、勉強もピアノの練習もできなかった。きっと時間の使い方が下手なんだろうなあ、とこの年になって思う。

 夏前位から、なんか妙にテレビやメデイアで方言が取り上げられててネタに困らない、という状態が続いてきたが、そろそろそういう状態もおしまいのようである。
 今週はそんな中の一つ、これまでにも何度かネタにしてきた NHK の「にほんごであそぼ」。今回も、HDD レコーダーが拾った。「今回も」とは言っているが、放送されたのは 9/27 である。

 方言ネタは二つ。
 もぐら氏の「うちのとこでは3」を紹介した時にちょっと触れた、鹿児島の「ちゃわんむしのうた」。
 これ、田舎の店で、「ちゃわんむしを出せ」と言われて、なんのことだかわからない、主人が厨房に「客が虫って言ってるが、ちゃんと洗ったのか」と怒ると、厨房の人が怒って言い返す、てな感じ歌である。
 番組では「わらべうた」としていたが、どうやら作詞作曲をした人がわかっているようなので、全文紹介はやめておく。
 冒頭の「うんだも こら いけなもんや」がいきなりわからないが、驚いているらしい、という感じはする。
あたいげどん ちゃわんなんだひにひにさんどもあるもんせば」と仮名で書くとさっぱりだが、「私の家の茶碗なんだ日に三度も洗うものだから」である。
めごなど けあるく むしじゃろかい」の「めご」がわからない。「目籠」という表記が散見されるが、これはどうやら食器とかを入れておく竹で作った籠らしい。
 番組では一番だけだったが、どうやら三番まであるようだ。化粧に精を上げる嫁と、大食いの息子を揶揄している。

 もう一つは、「若返り水」の和歌山県版。山で上手い清水を見つけて飲んでみたら、おじいさんが若返ってしまった。それを見たおばあさんは、おじいさんより若くなろうと大量の水を飲んだところ、赤ん坊になってしまった、というあの話。内容を知ってるだけに、意味が分からない、というところはなかった。
むかーしむかしのことやしてよあるところにおじさんとおばさんとあったんやしてやし」と「やし」という語尾 (?) が印象的。
「おじいさん」「おばあさん」が「さん」「さん」となる。イントネーションは「叔父さん」「伯母さん」とは違うので注意。
 あと「山行たんやと」「(水を) 一口すくて」と促音が落ちるようである。「合点いかなよ」と「い」も落ちているのだが、そういう傾向があるのだろうか。
 最後「赤子ごになってしもうちゃやったんやと」と言っているように聞こえるのだが、書き取り合ってるだろうか。「しもうちゃやった」の「ちゃや」の辺りが気になる。
 閉めの言葉は「話そんだけしりしまい」だそうだが、ググっても一件しか見つからない (「すに」のツイート)。

 多分、欲深いのはいけませんよ、という教訓説話で「物語」ではないのだろうが、この老夫婦はのちにどうなったのだろう。
 おそらくおじさんが先に他界するのは間違いない。15年、頑張れれば赤ん坊になってしまったおばさんも独り立ちできようが、その保証はない。遠い親戚から預かった、とか言って近所に紹介、それで育ててもらうのだろうか。

 と、これだけだとあまりに薄味なので、小ネタを一つ。
 サンクスで買ったおにぎりがなかなか興味深い。
   
「秋田県産あきたこまち使用」とあるからご当地企画と思ったのだが、隣に「焼鮭」もある。
   
 よくみると「ぼだっこ」の方には「塩辛い鮭」と但し書きがある。これをよその人が見たら、「『ぼだっこ』ってのは特にしょっぱいものを言うのだろうな」と思ってしまうんじゃないだろうか。
 具は、おそらくしょっぱいからであろう、普通の鮭より小さかった。それなのにカロリーが「焼鮭」の 2 割増、ってのには納得いかん。  




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