Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第847夜

うちのトコでは 3 (前)



御かぞくさま御いっこう」のもぐら氏の人気シリーズ、都道府県を擬人化した「うちのトコでは」の第三巻

 冒頭のイントロ漫画は、各地方の名称。東京 (以下、都道府県ではなく擬人化キャラを指す場合、「人」を付加する) が「けっこー地名ってまんまなんですね」と言っているが、本当だよ。「東北」「関東」「中部」「四国」「九州」…知ってるからわかるけど、固有性がほとんどないもの。外国の人なんか、「北陸」がなんであんな西にあるの、とか思うんじゃないんだろうか。
 紹介コーナーでは各都道府県の出身有名人が書かれているが、入れ替わりがあり、サンドウィッチマン (宮城)、夏菜 (埼玉) などが入っている。まぁ、誰がいなくなったかは書かない。浅香唯は相変わらず入ってない。スペース空いてるのになぁ…。

 一本目は、よそから見たら苛々するような性格や、自己嫌悪するような性格も、県民性のせいにすると落ち着く、という話。
「そんなもんだよ」という姿勢で読むシリーズ。県民性などというもの、100% 真に受けてはいけない。

 漫画は北から始まる。
 北海道のところで、「ドサンコ」を「北海道民や北海道出身者の総称」としているが、調べたらやっぱり元は馬のことなんだよな。Wikipedia しかり、大辞泉しかり。逆の方向の解説をしているもいるが…。

 食べ物の話題いくつか。
ぽっぽ焼き」は、南部 (青森西部から岩手北部) ではイカを焼いたものだが、新潟では小麦粉を使ったお菓子。どちらも露店に出るのでややこしい。Wikipedia に作り方が載っている (イカ菓子)。
 が、ググると圧倒的に後者の記事が多い。イカの方は、「AND イカ」にしないとなかなか出てこない。
 露店でいうと、北海道の「フレンチドッグ」。ソーセージ丸ごと料理した奴だが、似たものに「アメリカンドッグ」というのもある。これも、Wikiepdia に記事がある。Wikipedia ってほんとに何でも書いてるねぇ。
 岐阜の「からすみ」は、これまたお菓子。
 北海道の「毒まんじゅう」、奈良の「鹿のフン」はすごいが、最近はお土産用の菓子で「〜のハナクソ」とかいうのがあちこちで売られている。
 伊勢海老の漁獲高日本一なのは千葉、というのも楽しい。

 で、ちょっと飲み物に流れて、1988 年の「東北は熊襲の産地。文化的程度も極めて低い」。遷都や第二首都の話題が盛り上がっていた頃の、サントリーの社長の発言。
 当時、俺は就職年齢だったんだけど、サントリーって人気企業だったんだよな。確かに状況は状況だったけど、そんな程度か、って笑ってた。一方で、やっぱり「道の奥」、辺境なんだな、とも思ったが。間違えられた九州も含め。同じことが一昨年の地震のときにも現れているよね。
 一時、金麦を好んで呑んでたこともあるから、別にサントリーがどうこうとは、俺は思わないが、当時の不買運動でサントリーのものを買う習慣がなくなってしまった、という人もいる由。飲食物は容易に代替が利くからねぇ。

 静岡 (人) が山梨 (人) に遊びに行ったエピソード。
 山梨ははりきって寿司を振舞うが、マグロ漁獲高日本一の静岡がガッカリする。
 こういうのは今でもあるねぇ。山の温泉宿で刺身とかエビフライとか。
 別の切り口では、徳島 (人) が島根 (人) にすだちをプレゼントしたエピソードも。
 島根からのお礼は徳島にとって珍しいものなので、「こんな高級品ばかり送られん (送るな)」と言う。
 高級品だと思った理由は、「すだちはどこでも見る (ありふれたものだ)」ということなのだが、すだちの生産は 98% が徳島。

「茶碗虫の歌」というのも初めて聞いた。ググったら「茶碗蒸し」と書いている人もいる。
 鹿児島の俗謡で、客から「茶碗蒸しが食べたい」と言われた女中が、「茶碗に虫がいる」というクレームだと勘違いした、というもの。もちろん全編かごんま弁だが、俗謡だけに歌詞の細部には異同があるようだ。あちこちで動画が公開されているが、素朴で楽しい歌である。

 あれ、ご当地ネタを紹介しただけで紙幅が尽きてしまった。
 三回くらいの予定。




"Speak about Speech" のページに戻る
ホームページに戻る

第848夜「うちのトコでは 3 (中)」へ

shuno@sam.hi-ho.ne.jp