Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第859夜

ロコドル



 今週も本、というかムック。
ローカルアイドル パーフェクトガイド (イカロス出版)』。
 この領域については、2006 年に紹介したことがあるが、この時は『産地直送! アイドルまるかじり名鑑 2005 (小野澄恵、ぴあ)』を買うのが本当に恥ずかしかった、と書いてるが、今回は平気。ネット書店だから。
 これまでpramo を取り上げているが、その流れで買ってみた。

 pramo は、4 月から第三期生二人を迎えて再スタート、と思っていたら、その 4 月末にもう一人の加入が発表されて 8 人体制となった。
 エフエム秋田でやってる“pramo+”も、改変期をなんということもなく乗り越えて続行中。
 6/8 から公開される秋田出身の長澤雅彦監督作品「遠くでずっとそばにいる」にゲスト出演している由。オフィシャルの写真はどうやら秋田市役所前のようだが、楽しみである。『青空のゆくえ』『夜のピクニック』以来、好きな監督なので、そのうち取り上げてみたい。

 前に『産地直送!〜』を紹介した時は、結構、方言に関する言及があったのだが、今回のこのムックには驚くほど方言色がない。
 何が変わったのかは不明。書いた人も出版社も違い、当然、方針も違うだろうから、環境に変化があったとも限らない。
 ローカルアイドル(最近は「ロコドル」という呼び方もあるらしいが)は地域限定でなくなってきている、ということは言えるようだ。地域色が薄まったのではなく、そのアイドルに会いたくて他県からイベントにやってくる、ということが前よりは高頻度になっている感じである。
 まぁ七年も経ってるし、高速交通体系は充実している (秋田空港の東京便が一日 9 往復になるなんて誰が想像しただろう) が、それよりも、ネットに載る情報の量が全く違う。YouTube が日本語化され、ニコニコ動画が正式サービスを開始し、iPhone が発表されたのは奇しくも同じ 2007 年で、そのころから動画が一般的なものになってきた。アーチストが PV をネットで公開することが普通になり、その結果、全国各地のローカルアイドルの曲やパフォーマンスを確認することが容易になったのが大きいのではないかと思う。
 まぁ、これと方言色が薄まったこととの関係は不明。ロコドルも県境をまたいで遠征することはあり、その際には方言を使った自己紹介やトークなどはよく行われるらしい。

 まずユニット名だが、このムックを見た範囲では、名古屋の“dela”、和歌山の“ZagaDa”、鳥取の「だいやぁ☆もんど」しか見当たらない。
“dela”は説明の必要はあるまいが、“ZagaDa”はザ行とダ行が入れ替わる特徴を指している。『最新 一目でわかる全国方言一覧辞典(学研、1998、ISBN4-05-300299-0)』によれば、ラ行も含まれるのだそうで、「ドーキン (雑巾)」「レーキン (税金)」「クザサイ (ください)」などの例が挙がっている。
「だいやぁ☆もんど」は、前半の「だいやぁ」がそうらしいのだが、今イチ説明が不親切である。「だよ」に相当する語尾なんだろうか。

 ユニット名で一番は、奈良の“Le Siana”であろう。ありがたいというか畏れ多いというか。
 石川の「おやゆびプリンセス」は、石川県を親指を立てた右手に見立てたもの。うまいと思う。
 岩手県を左手の握りこぶしに見立てることがあるが、秋田だって握った手の間から親指を出せばできる。ただし、とてもじゃないが人に見せられない。

 コメントで方言に触れているのはわずかに二人だけ。北海道「フルーティ」の東理沙が「海鮮がなまらおいしい」、鹿児島“S★UTHERN CROSS”の愛華が「温かみがあり、“ザ・カゴシマ”と言える鹿児島弁。メジャー方言にも負けないくらい素晴らしい言葉です」。鹿児島弁は、話者数はともかく知名度という点では立派にメジャー方言だと思うのだが。

ロコドル大作戦」というゲームがあるそうで、ゲームの中で行われる人気投票上位5名で結成されたのが「チーム ハイカラさん」。我らが pramoMAYU を含む五名の対談記事があり、これは方言について触れている。ちなみにメンバーは、福岡“HR”の安田玲國本満里菜、フルーティのあんずと りさ*1
 それによれば、HR のふたりはバリバリ方言で話をするのに、ほかの三人は標準語だとのこと。方言に関する西高東低 (北低) の姿勢が出たようだ。実際、國本が「ばり大変っちゃん」と発言している。
 面白いのは、安田が「北海道と (秋田は) どっちが自然なんかなぁ?」と言うと、あんずと りさが声をそろえて「秋田!」と答えていること。MAYU が紹介しているように、県庁所在地でカモシカがポクポク歩いているようでは反論が難しい。

 曲名には比較的方言が登場するようだが、紙面も尽きたし、探すのが面倒臭い (これに載ってるグループだけで 40 を超える!)。今回はここまで。




*1
 コメントのところで紹介した東理沙のことだが、ムックでの表記に倣っている。なお、彼女と あんずはフルーティを卒業している。 (
)





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