Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜



第860夜

ロコドル曲名編



 結局、ロコドルの第二弾。
 前回、グループ名には方言はほとんど使われていないが、曲名だったらあるんじゃないだろうか、と書いたが、一応、調べてみた。
 調査方法は、Wikipedia の「ローカルアイドル」の項にある一覧から、個々のグループに関する Wikipedia 内の記事で、「楽曲」「ディスコグラフィー」などの項目を確認する、というもの。超手抜き。先に書いちゃうと、それだけでは数が集まらなかったので、先週、紹介した『ローカルアイドル パーフェクトガイド (イカロス出版)』を見直して、リストに載ってないグループをピックアップしてみた。

 これで思ったのは、Twitter は当然のことながら、ブログはストック情報の保管には向かない、ということ。オフィシャルサイトがなくてブログだけ、というグループがいくつかあるのだが、そういう人たちの曲の一覧を確認するのはものすごく手間がかかる。たまにブログの記事を「リリース情報」とかいうグループに分けてくれてるところもあるが、そうでないものは膨大な記事の中からタイトルなどで検索しなければならない。実は、面倒くさいのでそういうグループは調査対象から外した。
 尤も、ホームページがあるからって一覧が容易に手に入るとは限らないが。
 各グループとも事情はあろうが、後から関心を持った人のことを考えていただきたいものである。

 さて、北から行ってみよう。
 青森「りんご娘」の「なんぼめじゃ! アポーパイ」。「めじゃ」は「美味じゃ」で、「なんておいしいのでしょう」ということ。「アポーパイ」は方言ではなく“apple pie”を耳から聞いたとおりに表記したもの。
 次、茨城「水戸ご当地アイドル」の“NEBAPPE☆MITOPPO”で、親切に仮名表記すると「ねばっぺ☆みとっぽ」。納豆の産地ってことから「粘る」と持ってきたのだろうと思われる。「みとっぽ」は「水戸っぽ」で「水戸の人」かと思ったらそうではなく、「怒りっぽい・理屈っぽい・骨っぽい」の水戸人気質を指すらしい (Wikipedia の記事)
「っぽ」が人を指すのは「薩摩っぽ」だっけね。
 飛んで大阪“JK21”には「ちゃうねん!」「ちゃう×3」「JK21 やねん」などがある。
 和歌山“ZagaDa”の「イエヤン★コンプレックス」は、オフィシャルのプレスリリースで歌詞の一部が紹介されており、ザ行とダ行の混同の実例が確認できる。これから想像するに「イエヤン」は「言えない」「言うことができない」だと思われる。
 岡山“S-Qty”には「BOKKE!OKAYAMA!!〜ぼっけぇ!おかやま!!〜」がある。
 また同じく岡山の美作地域をベースとする“SakuLove”には「ほんならね」という曲がある。
 広島「まなみのりさ (個人ではなくグループ)」には「会いたくなったらたちまちおいで」という曲がある。この「たちまち」は「すぐに」ではなく、そうだとしても使い方に違和感があるのだが、「とりあえず」という意味である。アクセントは最初の「ち」にあるらしい。

 高知「はちきんガールズ」を発見。「はちきん」は「男勝りの女性」のことで、高知の女性気質を示す時に使われるが、ニュアンスとしてプラスなのか、地域おこし系ではいろいろと使われているようである。
 この人たちの曲には方言が多い。詳しくはオフィシャルの「CD 情報」を見てもらうとして、「たたき うまいき 高知やき」なんかリズムもあって上手いと思う。

 博多“HR”の「バリカタ」については説明の必要なはかろう。
 鹿児島“S★UTHERN CROSS”の「チェスト!〜ゲンキのしるし〜」もそうで、「チェスト」は鹿児島のかけごえ。

 なお、我らが pramo には、曲名や歌詞に秋田弁が入っている曲はない。あきたこまちきりたんぽなど、秋田の文物が入った曲はある。

 最後にちょっと『ローカルアイドル パーフェクトガイド』に戻る。
 コラムで、アイドルグループの肥大化について触れている。いや、「肥大化」とは言ってないけど。
 全国区とローカルとを合わせたアイドルの人数をざっと 1,500 人と見積もっており、そうすると、全女子高校生のうち 1,200 人の一人がアイドル、って計算になるんだとか。
 まぁ実際問題としては、ボリュームゾーンは高校生だとしても、小学生から大学生あたりまでいるので、実際はもっと少なくなるんだろうけど、多いって感じはする。
 地域限定だから、よっぽどのことがなければ食い合うことはないだろうけど (大都市圏には複数のグループがいることが多く、ちょっと心配になるが)、全国区の人たちの方には食えてない人がいるような気がする。




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