前に『
はじめての秋田弁』を取り上げたことがある、
こばやしたけし氏の新作『あきたをおしえて!! (
くまがい書房)』。
お試し版については 2 月に紹介したが、その正式版。
もう一回概略を説明しておくと、横浜からの転校生・神宮寺みなせと、本荘ユリ・六郷ミサト・井川わかみなどの友人達が登場する。
『あきたをおしえて!!』は、みなせの質問に友人達が答える、という体裁の四コマ集である。
若い女の子達ではあるが、ときどき悪い言葉を使うこともある。
「
ばがけ」が取り上げられているのだが、そういえばこの「け」って何だろう。『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』は「けし」という「罵る意の接尾語」としているが、手元の古語辞典にそういう語は載っていない。「
たぐらんけ」の「け」と同じ、と言われればなんとなく納得はするが。
「やっぱり綺麗な人が多い気がします」
秋田美人の秘密を知りたいと思うみなせは、ユリが「
私さ聞げ」と言うと、「お呼びじゃないよ」と答える。すっかり仲良くなっている。
個人的には、「秋田は平均点が高い」と思う。ものすごい美人はやっぱり都会に多いと思うんだが、その正反対は秋田には少ない様な気がする。みながみな
佐々木希なのではないが、磨けば佐々木希になれそうな人は一杯いる、って感じ。
秋田観光コンベンション協会が一月に、七人の美女が一音ずつ何か言っている写真を並べて、「何て言ってるんでしょう」という観光キャンペーンをやった。正解は三月に示されたが、思ったとおり「あきたにきてね」であった。
それはいいとして、その彼女達、確かに美人なんだが今風の茶髪だ、ということで文句を言う向きが少なくなかった。
でもさ、絣のもんぺに笠、って女性、どこにいるのよ。観光用の遺跡と勘違いしてないか、と思った。
「知ったかぶりをすることが多くないですか?」
「
おべたぶり」は直訳すると「覚えたふり」だが、正確には「知ったかぶり」である。秋田では「
おべる」は「覚える」という動作ではなく「覚えている」「知っている」という状態を示す、ということは大分、前に書いたような気がする。
だから「
おべれ」というのは「覚えなさい」という動作の方の意味になる。状態を示す動詞は命令形にはなれないわけなので。
「『
きかねー』って言葉がわかりません」
前作発売以降に登場した尾去沢かずのは気が短い。校内でぶつかったみなせに「
ばかけんがー」と思いっきり罵倒するのだが、そんな彼女を友人の八竜みたねは「『
口悪ぃぐってきかねー』秋田県人の負の部分が多目」と説明する。
「
きかね」は、言うことを聞かない、負けん気が強い、てなことだが、「きかん坊」という語は全国で通用するはず。MS-IME は変換してくれなかったけども。
この説の主題はそこではなく、「
〜の負の部分多目」という言い方は、中々強烈だな、ということ。機会があったら使ってみたい。
この本を読んでて、いくつか聞いた事のない表現が見つかった。
最初は「
やちまげだ」で、「大変だ」という意味。『語源探求』によれば、「
やちまげる」という「取り返しのつかないことをする」という意味の動詞が元らしい。これ自体は、「
やづがね (ダメ)」と同じで「埒が明かない」の「埒」であるようだ。
もう一つは「
腹つえ」で、「満腹だ」というのは何度も紹介していると思うが、「態度がでかい」「思いあがっている」「慢心している」という使い方もあるらしい。これはこれで納得性がある。
「方言カモフラージュ」という語が出てくる。
濁点を取ると標準語っぽく聞える語で、「気づかない方言」の一バリエーションと考えるといいだろう。
ここでは「
でがす (完成させる)」「
うるがす (水に漬けておいてふやけさせる)」が取り上げられている。
「突然、動物の名前を発するのは何なんですか」というのは、「
さい!」と「
あやしかだね」のこと。
間投詞に語源もへったくれもないのかもしれないが「
さい」って何が元なんだろうねぇ。
「
しかだね」は「しかたない」だが、謝罪の言葉として使われることもあるので、直訳すると誤解を招いて面倒なことになる。
めんどうくせぇなぁ、と思う向きもあろうが、構造は「申し訳ない」と同じである。これだって字面だけ見ると謝ってない。
「五城目」を「ごじょうめ」というか「
ごじょのめ」というか、というトピックがあるのだが、そういやどっちなんだろうね。
町名の由来は、この地域に城が五つあって、その中心だから「目」なのであるらしい。だとすれば「
ごじょうのめ」が元々の形なのだろう。
ところで、中心部を「目」っていうのはなんでなんだろうね。英語もそんな感じあるけど。
目は二つあるのに対して、口は一つ、顔の中心は鼻。
「へそ」とか「心臓」ならわかるけど。
「汽車」の話題。
前にも書いたような気はするが、電化はされているものの、通勤通学用に使われているのはディーゼル車なので、「電車」ではない。
「だまこかきりたんぽか」。
みなせの横浜の友達が、「だまこの方がつぶして握るだけだから楽じゃないか」と言っているらしい。ユリは「
横浜市民でねくて秋田県民だべ」と詰め寄る。
この本の中で一番笑ったエピソード。
なんか知らんが、きりたんぽについては、「発祥の地が鹿角、本場が大館」ということになってるらしい。なんじゃそりゃ。関係者の気持ちはわからんことはないが、そんな鞘当、すこぶるどうでもいい。
漫画では、「合併しちゃえば」と言ってかづのに「
ばがしゃべすんなー」と罵倒されているが、そら怒るわ。
「米粉の生産が盛んですが、どんなものが作られているの?」
米粉で作ったパンに米で作った麺を焼きそばにして挟めば、夢の競演、てな話。
そういやまたダイエットしないと。この冬、きっちり太ったし。晩飯を食う時間が遅い(寝るまでの時間が短い)のに変わりはないから、三ヶ月弱、徒歩通勤したところで、全く意味なし。
あ、年とって根性なくなったのか、朝はほとんどバスだった。それも一因かね。
つづく。