一週置いて、医療と方言の話はつづく。
今度はマンガ。
「ラディカル・ホスピタル」。
まんがタイムオリジナル、まんがタイムファミリー、まんがタイムに連載中の4コマ。作者は、ひらのあゆ。
現在、第 20 巻が発売中。第一巻が出たのが 2000 年だから、なんと前の世紀から続いている長寿シリーズ。
舞台は、どこかの中規模総合病院の外科。主人公は…誰なんだろう。外科医の榊忠嗣だろうか。看護士の山下まりとダブル主役と考えるべきか?
その 20 巻で、方言を扱ったエピソードがまとまっているのでご紹介。いや、出たの 1 月頭なんだけど、今まで忘れてた。
最初は、
前にも紹介したことのある、「
ボケたリンゴ」。
長野の言葉で、リンゴが古くなって水気を失いスカスカなことを言う。
なんか、北海道でも言う、って情報もある。
山形辺りは「ミソ」らしいのだが、理由は不明。その代わり、長野にはリンゴで作った味噌があるらしい、ということがわかった。
二つ目は、方言話者が急患で来た時の発話。
「
たわんけぇ台に乗ったらこけて爪うげてあおじになって消毒はしゅんではしるし。
包帯もええがにいかんかった」
たわん: 届かない
うげて: はがれて
あおじ: 青い痣
しゅんで: しみて
はしる: 痛む
ええがに: うまく。いいように。
この患者は広島出身だろうか。
「
たわん」は、中国から九州にかけて見られる。終止形は「
たう」らしい。「届いた」が「
とうた」という形になる、という記事もあった。
「
うげる」は、爪だけでなく、かさぶたや塗装・ポスターなども言うらしい。頭髪については使わないような気がする。自動詞形は「
うぐ」だそうだが、古語辞典にあったら「穿ぐ」という表記があった。これは「穴が開く」だが、これだとしても、「剥ぐ」の変化だとしても、そう離れてないような気はする。
痣はよく方言のネタとして取り上げられる。
知覚過敏の人むけの練りハミガキに「
シュミテクト*1」ってのがあるが、これって「
しゅむ」から来てるのかなぁ。広島弁でなくとも「沁みる」の変形かもしれないし。
製造販売はイギリスのグラクソ・スミスクライン。
Wikipedia によれば、日本でだけ「シュミクテト」って名前らしいから、その可能性は大いにある。
次のエピソードは、その類似例紹介。
「
にがる」が「痛む」なのは、同じく山陽地方。用例は「腕」だった。
「
腹がもぎれる」も腹が痛いらしいのだが、ググると、大笑いしたときにも使うらしい。そのときの腹痛と、激しい便意を催すような腹痛とは違うような気がしないこともないが、まぁ、この語に限ってはそこまで細かく分けてない、ってことなのかもしれない。人や地域によって違ったりするのかな。
「
熱でものい」。これは北陸らしい。発熱して生じるだるさ。こっちも北陸らしいのだが、「
腹がものい」という記事もわずかにある。
この語は、ググってもノイズが多すぎてどうにもならんかった。「ものに」のタイプミスが多量に見つかる。
話は医療用語に向かい、空腹時血糖値のことを“Glu”と言ったり“BS”と言ったりするという話になる。
また「頭蓋骨」は、整形では「とうがいこつ」と読むそうだが、正確には、解剖学分野の読み方らしい。
こういう「方言」はきっとほかにもたくさんあると思う。
そのエピソードでは、榊が「(患者が使う)こうした方言を集めて全国に広めれば診察の時、役立つと思うんだ」と言いながら、「受けてれくるかなぁ? 消化器学会で」と弱気になり、同僚が「退会を勧告されかねんな」と答える。
でも、それをやってる人がいる、というのを紹介したところ。
研究は必要だが、広めるのは難しかろうなぁ、というのも
こないだと同じ結論。