Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第692夜

出会う前 - My Old NX (2)



 俺は長らくペーパードライバーだったが、そういえば、自動車学校を出るのにも苦労した。
 第二段階で苦戦し、嫌になってしばらく行くのをやめてしまった。しかし、金はもう一括して払ってあり、それを捨てるわけにも行かないのでおもやみでとは思いつつ再開した。第二段階は確か規定で 4 時間だったと思うが 8 時間かかった。
 勿論、その後も苦戦。
 一回の教習が終わると足がガクガクになるくらい力みまくっていた。ひどいときにはクラッチを踏んでいられなくなってエンストしかけるくらい。
 足元がいい加減だと運転しづらいということがわかったので、スニーカーではなく革靴を履いていくようになった。スニーカーのときは紐をきつめに締めるようにした。改まってもいない場面で靴を履くようになったのはその頃からである。

「自動車学校」の省略形の地域差についてはに触れた。「じしゃが」でググってみると 600 件ちょっとで、あんまり多くない。津軽や山形でも言うらしいのだが。

 靴は、秋田では「けり」。『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』によれば、「蹴る」とは関係なくて、アイヌ語起源らしい。
 ちょっとググってみたが、「靴」自体の俚諺形は見当たらなかった。いいとこ 150 年の単語だろうから、バリエーションが生まれる余裕はなかった、ってことだろうか。
 ただ、藁沓の類はたくさんあるようだ。
 ところで MS-IME. 「かわぐつ」が「藁沓」なのはいいとして、「くつ」で変換しても「鞜」が出てこないのはいいのか? (「くつ」としての「沓」は「鞜」の略字) でも大辞林は「わらぐつ」に「藁沓」の表記しか認めてないなぁ。
ズックって方言ですか」には今更驚かないが、「スニーカーって方言ですか」には大いにたまげた。そういう人には、「スニーカーズ」って映画については説明の必要があるんだろうな。

 教習料金は大学生協のパックで、教習時間が標準より多少オーバーしても大丈夫だったのだが、第二段階での躓きを筆頭にそれでは間に合わず、何度か自分で追加料金を払った。
 卒業検定は、車道で端に車を停めて終了だったが、その場所に違法駐車している車がいて、端に寄せることができず、もう一つのポイントである、まっすぐ (進行方向に平行) 停めるのが精一杯。しかも俺だけでなく、同時に検定を受けたほかの生徒も皆、同じだった。検定員の、どちらかといえば、まっすぐ停めることよりも、端に寄せることのほうが重要、というコメントが記憶にある。とは言え、寄せようがなかったのは事実なので、全員が合格した。
 ものすごい解放感だった。鼻歌とか歌いそうな勢い。
 勢い余って、本番免許を受けに行くのをさぼってまたしばらく放置。結局、合格したのは教習所に通い始めてから丁度、半年後のことだった (確か)。試験が終わってから発表までの間、落ちたらもう一回勉強すんのか、とうんざりしたのを覚えている。
 実際に車を運転するようになるには更に 10 年近く待つことになる。
 あ、実家に帰ったときにちょっと運転させてもらったことがあるな。坂道発進をしようとしたら案の定、エンストしてしまい、後ろのドライバーが笑っているのがルームミラーに映って見えた。

 第二段階が 4 時間だってことを確認しようとして調べたら、今って、全体で二段階しかないのね。びっくりしたわ。
 一応、解説すると、第一段階は初歩、第二段階はその延長、第三段階はちと実際的で、「無線教習」とか言って無線で指示を受けながら一人で運転したりすることもある。第四段階が路上教習。
 無線教習で、「行けそうですか」という質問に「多分」って答えて怒られたことを思い出した。

 で、その 10 年が過ぎて、先週、書いたように中古専門の業者にお願いして探してもらって、めでたく NX クーペ納車。
 たまたまその日は東京にいたときの友人が遊びに来ていて、宿代の代わりにアパートまで運転させたのだが、車屋の人が、この人は何やってるんだ、という顔で見ていた。
 まずはペーパードライバーから脱却する必要がある。運転の練習をいつやるか。平日昼間は仕事だし、土日は何かと混みそうだし、ということで平日の早朝にした。5 時半起きである。
 数 km 先のちょっとした丘に一ツ森公園というのがあり、そこまでの往復。エンストは一度もしなかったはずだが、途中に狭い道があって、自分が通過するときに起こした風が道沿いの車庫のシャッターにぶつかってものすごい音がしてビビった。

 ちょっとしたことがあるとものすごくビビるのは今も同じである。




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