「
琉神マブヤー」を見た。
秋田に来たわけではなく、
BS11 で放送していたのである。
「琉神マブヤー」は、ニライカナイの戦士で、沖縄を守るヒーロー。
「超神ネイガー」に似てるように思えるかもしれないが、それは気のせいでもなんでもなく、デザインしたのが同じ人だからである。顔が三つある意匠とか、腰に巴紋がくっついてるとか、共通点は多い。その辺は
前に紹介した「
『超神ネイガー』を作った男」に書いてある。
最初に思ったのは、「何を言ってるのか全然わからん」。
ひょっとしたら県外での放送は頭になかったのかもしれないし、逆に、それで押し出してしまえ、という勢いの賜物かもしれないが、基本的にウチナーグチなのである。当然、字幕なんぞない。
この、取り残され感は新鮮だった。誰も説明してくれないんだもの。
ただし、筋はわかる。15 分のヒーローものだし、そう小難しい話になってたりはしない。それに、ウチナーグチ濃度は人によって差があって、かなり標準語よりの登場人物もいるので、そうした台詞を手がかりにすることもできる。
とは言いながら、どうやらウチナーヤマトグチだったのではないか、って感じがする。
実際問題として、今はもうかなりウチナーヤマトグチらしいし、おばあ以外はみんなそうだったんじゃないんだろうか。沖縄といえば、って感じの「
〜さー」という語尾も、元々の琉球方言のものではないらしい。
で、言葉のほうである。
まず「マブヤー」は「魂」のことだそうだ。ちょっと語尾には自身がない。「
まぶい」だって書いてるページもあって、よそ者には判別がつかない。
いずれ、そんなわけで琉神マブヤーのロゴにはでかでかと「魂」と書いてある。
本来は上にも書いたように 15 分番組なのだが、BS11 での放送はスタッフや出演者へのインタビュー、マブヤー ダンスの幼稚園への出前なども追加して 30 分弱の番組にしてあった。
もう一つ追加されていたのが、「ガンジロー先生のウチナー口講座」。
ガンジローというのは、ドラマで主人公の育ての親である福地岩次郎のことで、娘の紅亜 (クレア) の進行でウチナーグチを紹介してくれる。
「
めんそーれ」は説明の必要はないだろうが、語源がはっきりわかっていないとは知らなかった (番組中では語源の説明はほとんどない。これは俺が自分で調べたことである)。
「
はごー」は「汚い」。戦闘員の「クーバー」がこういう奇声を上げている。
「
てぃーだ」は「太陽」。
日産の
TIIDA はこれを意識したネーミングらしい。“I”が一つ多いように見えるが、これは「自分」を指しているそうだ。
「
でーじ」は「大事」。意味としては「だいじ」ではなく「おおごと」。「すごい」「大変」てな意味。BS11 での放送で追加されている部分は、「沖縄が琉神マブヤーでデ〜ジなってるスペシャル」という名前で、これは「沖縄が大変なことになっている」という意味。あと、歌にも出てくるが、それは後ほど。
「
ひんぎれー」は「逃げろ」。マジムンが最後に逃げるときにいつもこう叫んでいる。
「
てーげー」は「大概」で「大体」。沖縄の人のおおらかな県民性を表現するときによく引き合いに出される。
「
はいさい」「
はいたい」は「どうも」「こんにちは」だが、男性は「
はいさい」、女性が「
はいたい」である。この語尾の違いは、「ケータイ刑事
銭形雷」でも犯人を特定する手がかりとして使われたことが
ある。尤も最近は、「
はいさい」と言う女性も多いらしい。
「
いちゃりばちょーでー」も有名か。「行き会えば兄弟」だと思う。
「
かちゃーしー」は名詞としては踊りらしいのだが、もとは「かきまわす」だそうだ。あの手つきのことか、それとも踊る動作自体を指すのか。
これにも男女差があって、男性は手がグー、女性は開いているんだとか。
「
わじわじ」は感情というか感覚のものだから説明が難しい。ネイティブに聞いたって、「
わじわじって、
わじわじだよ」と言われかねない。不快感は不快感なのだが、苛々とも違う。ググってもわかりやすい説明が見つからなかったので、パス。
大辞林には「恐ろしさや寒さのためにふるえるさま。わなわな」とあるが、それとの関係はあるのだろうか。
「
めーごーさー」は「拳骨」。マブヤーの必殺技は「スーパーメーゴーサー」である。かっこいい。語呂もいいし。
沖縄から「
てーげー」が失われる、というエピソードがあるのだが、そのときマブヤーは、いつもなら大声で張り上げるこの技の名前を途中でやめてしまっていたりする。ヒーローもてーげーなのである。
「
がんじゅー」は「頑丈」で、健康だ、ということ。「
ちゃー」がついた「
ちゃーがんじゅー」になると「いつも健康」という意味になるらしい。
つづく。