山洋の東北弁綿棒を使った文章、後編。
福島
のぐちひでおせんせいは福島生まれだぞい
野口英世さんは福島県出身です
ここにも誤植が。
念のために、ググってみた。
前に、広島では、ほかの地域で「ぞう」と発音される名前が「そう」である、という話を紹介したが、そういうこともあるかと思った。
その結果、「ひでお」だと思っている人はかなり多いらしいことがわかった。たしかに、そっちの方が名前としてはポピュラーだもんな。
一応、野口英世記念館の
URL を根拠としておく。
この綿棒、つかったらよがんべ/
使ってみっせ
この綿棒を使ってみてはどうですか?
これは地域差だろうか。確かにデカい県だからな。
因みに福島は、東から浜通り・中通り・会津に分かれる。一般的なイメージとしては福島イコール会津だと思われるが、そうではない。
食ってぬくくなった
喜多方ラーメンにほっこり
究極の意訳。
しかも、「東北弁綿棒」であることを隠して、文だけをポンと出されると、どっちが方言文なのかわからない。いや、「
ほっこり」はすでに京都弁を離れて、しかも意味も変わって、全国区の表現だと考えるべきか。
あるいは、この方言を集めたスタッフの中に、喜多方ラーメン愛好家がいるのかもしれない。
秋田
まんず秋田さ来てたんせ
どうぞ、秋田に来てください。
密かに秋田弁の横綱だと思われる「
まんず」。
「ほかの県より先に秋田に来てください」と言っているのではない。「
まんず」は強調というか、既に副詞ではなく間投詞で、この場合は「是非」あたりが近い。
たとえば、かわいい孫が事前の連絡もなしに突然、遊びに来てびっくり、すっげぇうれしい、というようなとき「
なーんと、まんずまんずまんずまんず」とか言ったりする。
『語源探求 秋田方言辞典 (中山健、秋田協同書籍)』は、何はさておき自分の気持ちを表現したい、というときに使われる、としている。巧い説明だと思う。
「
まんつ」と言う地域もある。
秋田こまちはうめぇな〜
秋田こまちはおいしい〜
前にも書いたが、米の名前としては「あきたこまち」が正しい。商品名、固有名詞だから気をつけていただきたい。
死んだげうめぇ〜稲庭うどん! 食ってけろ
繊細な上品な味! 稲庭うどん! 食べてみて
食べ物の紹介が多い、というのもこの綿棒の特徴。
「
死んだげ」と漢字で書くとなにやら物騒だが、これはもはや単なる強調。生死の問題ではない。「
しったげ」と言うこともある。
勿論、「繊細」「上品」という意味はない。どうもこの綿棒を作ったスタッフ、食い物が絡むと熱くなる人が多いようである。
山形
米沢牛は口とろげっがら、一度食べでみれ〜
口がとろける米沢牛〜たべてください
意味に間違いはないが、順番はひっくり返っている。「一度」も抜けているが、まぁよかろう。
ラフランスんめぞ〜
ラフランスは山形がおいしいよ
あんめぐて、んめさくらんぼ
あまくておいしいさくらんぼ
さすが果物王国。
ラ・フランスなら山形だろう、と思ったんだが、長野と並んでの二大産地ということになるらしい。訳文で「山形がおいしい」と原文に無い情報が付加されているのは、山形を愛する心意気、ということか。それともやはり食い物がらみで目がくらんでいるのか。
Wikipedia によれば、フランスが元なのに、気候が合わないせいでヨーロッパではほとんど栽培されてない、というのがほほえましい。
サクランボの方は、山形が全国の 7 割、それに青森と山梨を加えた 3 県で 9 割だそうだ。訳文でわざわざ山形について触れてないのはそのせいか。
最後にこれ。
あっちぇ! 東北の夏祭り
熱い! 東北の夏祭り!
なんでこれが山形なんだろうね。まぁ、「
あっちぇ」が山形方言だからなんだろうけど。
というわけで東北六県を駆け抜けた。
数えてもらうとわかるが、28 種類すべてを紹介したわけではない。他の表現を見たかったら、買ってください。
実は、
オフィシャルサイトにはこの綿棒、紹介されていない。あるいはパイロット版ということなのだろうか。ある程度、売れることがわかったら正規のラインナップに載せる、とか?
大阪弁版は載っている。
これにはおみくじもついているらしい。
一覧が公開されているが、大凶よりもさらに二つランクが下がる「超凶」のコメント、「
ある意味おいしいで!」は、さすが大阪、という感じである。
テレビとか新聞とかで生活情報みたいなのはよく見るが、こういうちょっとした商品って、あることはあるんだろうけど、具体的にはどこの店に行けば買えるの? ということがわからないことが多い。俺もまさか、スーパーや薬屋ならともかく D.I.Y.ショップで綿棒を買うことになるとは思わなかったし。
というわけで、興味を持った皆さんは、一生懸命、探してください。