Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第481夜

問われて名乗るもおこがましいが



 プログラマの仕事で、ちょっとしたお試し用の文章を用意する必要に迫られた。単なる落書きも、手元にあるビジネス文書もつまらないので、ネットで決り文句を検索。昨今の流行は「寿限無」のようだが、「清女と申しはべるなり」とか「さてどんじりにひけぇしは」とかをプログラムに流し込んで「ふーむ、この結果は」とかやっていた。
 そん中に、上の「問われて名乗るもおこがましいが」もあったのだが、問われて名乗るのはなぜ「おこがましい」のだろう。大辞林によれば、「出すぎた真似である」のほかに「ばかげたこと」という意味もあるらしいのだが、今イチ腑に落ちない。

 というわけで、名前である。
 苗字についてはに取り上げた。「姓」と「氏」と「苗字」は本来、別のものだ、ということも書いてある。書いてある、とは言いながら、すっかり忘れているので読み返したのは秘密である。
 そこにも書いたとおり、苗字には地域差がある。
 昨今、珍しい苗字を耳にすることが多いが、場合によっては、出身地がわかったりする。例えば、「金城」など、「城」で終わるのは、沖縄じゃあるまいか、というような具合。
 に紹介した「こよなく方言を愛するあなたに100の質問」でも、「あなたの身近で変わった苗字があれば教えてください」という質問がある。
 苗字館というサイトもあるので、覗いてみると面白い。
 あちこち見てると、「上野」と書いて「かみの」だとか、「〜谷」が「たに」なのか「」なのか、など苗字の有無以外にも、違いは色々とある。
 俺の周囲の話では、「鎌田」という人がいるが、一時、これが MS-IME では「かまだ」では漢字変換できなくて困ったことがある。今は入っているが、そのときは「かまた」でなければならなかった。これが、地域差なのかどうかはわからないが。

 次、名前のほう。
 とは言っても、名前なんてのは、時代を映すことはあっても、土地柄を反映する、ということはちょっと考えにくい。いや、あるかもしれないけどさ。
 全国共通語が今ほど浸透するはるか前の話、子供の名前を役所に届けるときに、訛った形のままで登録してしまった、という例もある。例えばズーズー弁の地域であれば、両親は「しず」というつもりでつけて、本人もそのつもりで育ったのに、戸籍謄本を見たら「しじ」だった、とかそういう話。
 これは、まぁそういうこともあっただろうね、というものだが、こっちはどうだ。
 いや、実は、そういうことがあるんだ、ということは随分と前から (このホームページの公開を始めた頃から) 聞いて知っていたのだが、確認する方法がなくて今までずっと眠らせてあった。今回、どうやら本当らしい、ということがわかったので、念願の蔵出しである。
 有名なところでは、テニスの松岡修三がいるが、「〜ぞう」で終わる名前がある。
 広島では、これを「〜そう」と読むことが多いらしい。
 ほーら、広島に知り合いがいないと確認のしようがないでしょう?
 だが、こないだ思いついた。検索エンジンで、両方を入れてみればいいんである。例えば「修三 AND しゅうそう」というように。ものすごく手間はかかるが、できないことはない。
 で、しばらく検索を繰り返した結果、確かにそういうことらしい、ということがわかった。
 個人情報なので (ほかのページに載ってるとは言え) 列挙するわけにもいかないが、例えば北海道大学農学部の川村 周三助教授。北大の先生だが、略歴を見ると広島出身であることがわかる。
 この調査には、「泰三 AND たいそう」では「大層」の平仮名表記を落とすというようなフィルタリングと、単なる誤記を落とすための裏取りの手間はかかりますが、本当かよ、と思った方は是非。ローマ字で“Shuso”と入力するって手もある、ということには後から気づいたので、Tips としてお知らせしておきます。

 愛知の幸田町には、「えーころはちべー」という単語がある。いいかげんな奴、という意味らしいが、この「はちべー」は「八兵衛」なのだろう。別に「八兵衛」でなければならなかったわけではないだろうが。語呂の関係か。
「〜太郎」という言い回しはほかにもあるはずだ。
 民謡にも人名が出てくることはあるが、ちょっと外れるので、ここまでにしておく。

『ドグラ・マグラ』の夢野久作だが、福岡で「いつも夢を見ているようなぼーっとした奴」という意味の「夢の久作」という表現から取ったペンネームらしい。

 読者減少中のこのホームページだが、誰がリンクしてくれてるのかなぁ、と“Σ-Section”や“Sigma-Section”をググることはある。今回は、俺のハンドルである“shuno”をググってみた。
 残念ながら、家具や税金の「収納」と「就農」のローマ字表示が圧倒的だが、shuno さんがいないこともない。
 というわけで、同名のよしみでいくつかリンクさせていただく。
   閑人閑話
   岡と萩PLUS
   mercy snow official homepage
   月光下
 今後ともよろしくどうぞ。

 それで気づいたんだけど、ほべりぐ
 リンクしてくれるのはありがたいが、したらしたと一声掛けてくれ。
 それに表記が違うしさ。
「ー」と「−」。
 ほかのとこならともかく、日本語処理で食ってる会社が間違っちゃダメじゃね?




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