ガムが嫌いである。
子供の頃、乗り物酔いする質だったので、それをまぎらすために車中でガムを噛んでいたことはあったが、成長して酔わなくなる。
大学生になって、新学期、隣に座った奴が、お近づきのしるし、ということか、「どう」と差し出してくれたのを断ったところ、「ガムを断られたのは初めてだ」と驚かれた。少なくとも、既にその頃には、ガムに対する嫌悪感は持っていた、とことになる。
なんたって音が嫌である。
クッチャクッチャクッチャクッチャクッチャクッチャクッチャクッチャ。牛じゃねぇんだからよ、とまで思う。
昔のお菓子について調べようと思ったのだが、どうもまとまった資料が見つからない。方言辞典はあるんだが、辞典なので、単語を羅列してるだけだから、分野別索引とかでもないと、こういう目的には向かない。
とりあえず、
前にも取り上げた「ポン菓子」をもう一度引っ張り出してみる。米と砂糖と水をタンクの中に入れて過熱、圧力が高まったところで口を一気に明けると、中身が「ドン」と飛び出してくる。水蒸気爆発の原理によって米が膨らみ (引き伸ばされるのか?) ふわっとした感触のお菓子になる、というあれ。
「
米はぜ」なんて呼び方がるらしいが、「
はざす」はどうやら「はぜる」の他動詞形らしい。菓子はともかく、「
はざす」を検索して見ると、神奈川・静岡・岐阜あたりで使われていることがわかる。
「あけおめ」はすっかり定着したが、「おはようございます」の短縮形として「おはざす」があるようだ。方言というわけではないが。
「〜は、さすがに」を「ざすが」としているタイプミスはちょっと多い。
「
腹痛餅」ってのが愛知にある。
食い物に「腹痛」をくっつけるセンスには度肝を抜かれるが、これは、そのページを見ればわかるとおり、妊婦に対するお祝いの餅である。
こんなページを見つけた。「
べこもちの系譜」。
かまぼこ っつーか、太巻きみたいな外見の餅。見たことはあるが、食ったことはないと思う。見るからに甘味がしつこそうな感じがする。俺は「
くじらもち」って名前で記憶しているが。
そうかと思えば、ネコも登場する。餅じゃなくて糞だが。
豆を黒砂糖で煮詰めたものを「
猫の糞」と言うらしい。大阪方面のようだ。これはこれで、思い切った名前を付けたものである。
尤も、昔は、鶯の糞を顔につけたりもしたわけだが。
昔、知り合いに手術で取り出した胆石を見せられたことがあるが、大きめの麦チョコにしか見えなかった。
話が駄菓子屋のほうに向いたので、駄菓子屋そのものを何というか調べてみた。
まずは「
いっせんみせ」。「一銭店」だろう。これはなんだか、地域的な偏りが見られない。はっきりわかるものとしては、東北以北と鹿児島なのだが、中部も見られる。
時代が下がり、貨幣制度の変化と、物価上昇に伴い、「
五円店」「
十円店」も登場する。
この「店」はすべて「てん」ではなく「
みせ」であることに注意したい。
「百円店」は、駄菓子屋がほぼ消滅した結果、別の形態の店を指す言葉となった。現在の消費スタイルの象徴とでも言えようか。
いや、実は、俺の通勤経路に一軒だけ駄菓子屋がある。
通勤途中だから開いている時間であることはないわけだが、並んでいるプラモデルが時折、更新されているところを見ると、売れてるのだろうか。あるいは、問屋が交換していくのか。
なにより、俺の時代には怪獣ものだった、束から引き抜く形のブロマイド。あれが今でもきちんと製造されている、というのには驚いた。
なぜ、現役であると断言できるかというと、モーニング娘。のプロマイドだからである。
駄菓子屋に戻る。
「
こどもみせ」という呼び方もないではないようだが、これはどちらかといえば、駄菓子屋の「言い換え」として、児童の生育環境というような分野で、別の意味を担っているようだ。
また、お祭りなどのイベントで、子供が運営する店を指すこともある。
仙台には「
とすけや」という言い方があるようだが、「
とすけ」が何かは不明。
沖縄の「
まちやぐわー」。どこで切れるのか、それとも一単語なのか全然わからないが、ネット上の記述を総合すると「雑貨屋」ということのようだ。幅広く色んなものを売っている小売店、今で言うコンビニみたいなもの。
これに「一銭」がついた「
いっせんまちやぐわー」で、駄菓子屋。「
まちやぐわー」そのものを駄菓子屋としているページも散見されるが、部外者なので口出しは遠慮する。どうやら、「
まちやぐわー」は現在でも生きている単語のようである。
駄菓子屋に入っていくときの挨拶も、色々だったようだ。
俺は「
買ーうー」が記憶としてある (自分で言ったのか、人が言ったのを聞いたのか、あるいは、最近になって知識として入ってきたのかは今となっては判然としない) が、ググると「
もーすー (申す)」、「
売ってー」などが拾える。
昔、「チューインガム」って呼び方に疑問を持ったことがある。“chew”が「噛む」だってことは調べたらわかったのだが、「噛むタバコ」はあるにしても、「噛まないガム」ってのあるのか、と思ったのだ。それはおそらく「ガム」も「ゴム」も同じ“gum”だからだろう。
ガムから遠ざかった今となっては、最初こそ香りがあるものの、その内、単なるゴムになってしまうあれには全く意義を感じない。口の中が気持ち悪いのならうがいでもしろ。
まぁ、俺みたいに、路上でそうなったとき、自販機で水を買ってうがいして飲み下す、ってのもどうかと思うが。