こないだアナウンサーと方言のことについて書いた。
これについてもうちょっと。
天草のインターネット ラジオ、「
天草テレビ」がアナウンサーを募集している。
条件は、天草弁に堪能であること。
*1
思い切って出たものだ。
これには、それが電波を使った、いわゆる「放送局」ではなく、インターネット ラジオであることが大きいに違いない。
Web サイトというのは、テレビやラジオみたいに視聴者の方で流しっぱなしにするものではない (送る側が送りっぱなし、放置状態というのはよくある)。細工をしてあるページや動画を紹介しているページを別にすれば、何もしないでいると何も起こらない。わざわざ行って、見る内容を取捨選択するものだ。したがって、魅力的なコンテンツ、尖った何かを持っていないと話しにならない。それが天草弁、ということはありうる。
また、この場合、いわゆるアナウンサーとは違う。緊迫した国際情勢や、相も変らぬ談合や、出来レースの選挙や、役人と教師の裏金について報道するのではない。広範囲の人に正確な理解をしてもらうことを目的としていない。したがって、差異が細かくアナログである方言であっても一向に差し支えないわけである。
ちょっと聞いてみたいと思ったが、入会の必要があるらしく、面倒なのでパス。
これと絡めて思い出したのは、舞妓の公募である。
いや、結局、「京都弁に堪能であること」というような条件があるわけでも、学校 (舞妓になるための学校がある) で京都弁の授業があるわけでもなく、方言ネタは拾えなかったのだが、なかなか面白い。
特徴的なのは、必ず家族の了解を取って来い、と書かれていること。
前にちょっと触れた通り、十代半ばで舞妓になり、数年の経験をつんで芸妓になる、というのが標準コースなわけだが、つまり、舞妓候補生を受け入れるというのは、高校生くらいの未成年を預かる、ということである。親の承諾は必須。
「反対されたからって家出してきちゃダメ」というのがいくつか見られるということは、そういうことをする人が多い、ということだろう。
*2
舞妓になりたい人は
こちらへ (「観光編」−「京都便利情報」−「舞妓さんに・・・」−)。
さて、電波を使った放送の方に戻る。
秋田にある放送局のアナウンサーのネイティブ比率を調べてみた。結果は次の通り。
あーびっくりした。
NHK が低いだろうとは思っていたが、キャスター含め 13 人の内、気象担当の一人しかいないとは思わなかった。
秋田テレビだけが過半数なのが意外。何か理由があるのだろうか。募集頻度の関係かもしれないが。
一応、言っておくが、ローカル放送局のアナウンサーは地元出身で固めるべきだ、などとは思っていない。何によらず、広範囲に人が行き来することは重要である。アナウンサーはニュース原稿を読むだけが仕事ではなく、インタビューを取ったり取材に出かけたりすることも少なくないわけで、その場合は、異なる視点の有無は、重要どころかメディアの生命線であるとすら言える。
が、そういう取材の場面で、地元の方言を使えるかどうか、というのは、特に相手が素人の場合、取材の質を左右する可能性があることは間違いないだろうし、バラエティ番組において、標準語ベースの発話の中にポロっと方言が混じることによって楽しさがかもし出される、ということもあるのだろうし。
*3
逆もあってもいいと思うけどね。
出身地の方言がボロボロ出てくるアナウンサーと、ネイティブのパーソナリティとの応酬というのも楽しそうだ。
言葉の質を云々する場合、記者も重要だが、そこまでは調べていない。
ニュース中のレポートでは記者がしゃべることが多いし、場合によってはカメラマンのこともある。
彼らの言葉、特にアクセントやイントネーションは、訓練を受けたアナウンサーとは明らかに違う。日常生活が心配になるくらいにひどいのがたまにいる。
放送と方言についてはまだ せめぎあい があるようだ。
掲示板の類に見られるような、田舎者を罵倒するのが目的の発言を除けば概ね好意的ではあるが、そういう発言がことさらになされる、ということ自体が、まだ融和していないことの証拠だろうと思う。
この辺は、「放送審議会」と「方言」の AND 検索をするとわかる。それぞれの放送局に、放送内容を検討するための会議があって、そこで話題になることが多いようだ。
おや、と思ったのは、ローカルの放送局でたまにドラマを作ることがあるが、その際に、方言が全く使われない、ということは時々あるらしい、ということ。
これも各局のオフィシャル サイトの掲示されていることがあるが、
日本民間放送連盟の制定した放送基準:
方言を使う時は、その方言を日常使っている人々に不快な感じを与えないように注意する。
が、ネックになることがあるのじゃないだろうか。
規則だから無味乾燥な表現で、必ずしも方言を使ってはいかん、という内容ではないが、「注意しろ」と言われれば、頭を抱えた末に過度に慎重になる、ということはあるに違いない。
*4
ただ、最初に書いたインターネットラジオ局のように、範囲を限った上で、いろいろな試みは行われているようだ。「方言」で検索すると、ポッドキャストのデータが山ほどあるので、興味のある方は探してみるとよい。
札幌テレビ放送では
アイヌ語講座もやっている。
NHK のニュースは、全国→広域→県域というくくりで放送されるが、仙台初の東北全域のニュースから秋田に切り替わるとき、アナウンサーが「秋田からお伝えします」と言うことがある。
これが「
飽きたからお伝えします」に聞こえる、と言い張る友人がいる。
確かにイントネーションは同じだがな。
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