Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第372話

機械の寿命



 これも去年の暮れのことだが、ストーブがいかれたので新しいのを買った。
 芯が全く上がらなくなったのである。思いっきり押してみたがビクともしない。分解してみたら、手持ちの工具では開けられないブラックボックスなパーツがあって、そこがいかれているらしい。満身の力をこめたら、レバーの方が曲がりそうな気配なのであきらめた。2 シーズンしかもたなかった。大阪では「つぶれた」というところか。
 本来なら修理してもらうべきところなんだろうが、(故障していない) ストーブの芯の交換と分解掃除が \5,000 であることがわかっている。一方、新品は \6,000 で買える。であれば普通は後者を選ぶであろう。
 ところが、これがまた中途半端な代物だった。
 やけに早く灯油がなくなるので燃費が悪いのかと思っていたが、どうやらタンクが小さいらしい。それだけならいいが、火力も弱い。
 に、室内の成層圏 (上の方) はクラっとするくらい暑い、と書いたが、このストーブ、そうならないのである。上が暑すぎないのはいいが、下が寒い。お湯が沸くのも遅い。
 メーカーのサイトに行ったら (つまり、まともなメーカーの製品なんだが)、載ってなかった。型落ちだったらしい。
 この冬はエラい暖冬で、雪がまともに積もったのは年が明けてからである。先週、12 月の頭の、飛行場の雪について書いたが、あれは数日で消えた。だから、このストーブですら、1 日中つけてると夜には暑くてしょうがないから消す、ってことをしていたのだが、ちゃんとした冬になった現在、役立たず状態である。

 暖房器具の俚言。
 まぁ、暖房器具とは限らないが「囲炉裏」。「ゆるり」「ゆりり」などと言う地域がある。一々書かないが、類似の形式が全国に広がっている。
『秋田のことば (秋田県教育委員会編、無明舎出版)』によれば、「囲炉裏」はそもそも当て字だそうな。そう言われると、当て字っぽい気もする。ゆったりとくつろぐ場所を指す擬態語からだって。つまり、「ゆるり」が本来の形に近い、ということか?
みちのく逍遙」の南部の囲炉裏言葉が面白い。囲炉裏周辺は居間だったわけだが、主人が座る場所などが決まっていて、そこに名前がついている。別に南部に限らず、これも全国にある。「よこざ」あたりで調べると多数ヒットする。
 ざっと調べたところでは「火鉢」の俚言形が見当たらない。
 その灰、灰をならす道具、灰にまつわる動作などは見つかる。この灰は、単なる廃棄物ではなく、いろいろと使われたものだから、生活に密着している。俚言形が生じるのは当然だろうが、なぜ「火鉢」がない?
「炬燵」も見当たらないが、「おこた」を方言だって言い張るのはやめようよ。

 前から不思議なんだが、料理を作ったとき、鍋に出てくる「あく」って何? 「灰汁」って書くんだけど、「灰」と関係あるの?

 車の、冬のタイヤと言えば、スタッドレス。
 ところが、これを「スタッレス」と表記しているページの多いこと。Google で検索してみると、タイヤ屋・車屋が上に来るから恐れ入る。*1
 綴りは“studless”で、“stud”というのは「鋲」のこと。ピンはないが点はいる。*2
 ちょっと気になるのは、“studless”を Google で探すと 4,000 件しかなくて、しかも、日本のサイトが多いこと。和製英語でもないようだが、あんまり一般的な表記ではないのかもしれない。

 ストーブを役立たず呼ばわりしているくせに、今年は炬燵を出していない。いや、夏場はテーブルなので、出していない、というのは不正確だ。炬燵板と布団と電線を出していない。テーブルのまま。
 これは、去年買った、小型ヒーターが有効だから。パソコンに向かっている間は、炬燵に直角に対することになるので入れない。布団を膝にかけるのが関の山。無駄なのである。
 この炬燵、指折り数えたら 20 年目。しかも、俺が中古品を友人からタダで貰ってから 20 年。冷蔵庫も同じ。可動部のない (少ない) 器具はかくも強い。




*1
 この中には、検索用キーワードとして「スタッドレス」と「スタットレス」の双方を書き込んでいる店も含まれる。これはかしこい。
 前に仮名漢 (今で言う IME) の開発をやっていた頃、「通り」が「とうり」で変換できない、という苦情を受けたことがある。正しくは「とおり」なので変換できないのは当然なのだが、そう入力する人がいるのだから、というのも理屈だな、という気がする。今なら、間違ってるよ、と指摘する IME もあるが。(
)

*2
「よくスペルなんか知ってますね」と言われたが、俺のタイヤに書いてある。交換は自分でやるから年に 2 回は目にする。(
)





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