10 月の中旬に象潟で自転車の大会があって、そこで自転車を破損した。
変速機つきの自転車を持っている人は後輪を見ていただきたいが、小さな歯車が二つ並んだ部品がある。「ディレイラー」と呼ばれ、これをワイヤーで押したり引いたりすると移動してチェーンとギアがうまくかみ合う、というものだが、それをぶっ壊した。
俺の親指よりも太い枝が横から刺さり、前進するのに引きずられて回転、後はてこの原理である。ディレイラーは、後輪と並行になっているのが普通だが、これがひっかっかって後輪が回らなくなっていたのだから、その曲がり具合を想像して欲しい。
修理に 2 万かかった。痛い。
「壊す」の俚言形を集めてみる。
大阪では、人体については「
いわす」と言う。阪神巨人の漫才で「
腹いわしてもうたんや」などと聞いた記憶がある。そういや、そろそろ寄席演芸シーズンだな。もう、いとし・こいしの漫才を見ることはできない。合掌。
「
いわすぞ」と言うと、お前の体を壊すぞ、怪我させるぞ、という脅し文句になる。
「
つぶれる」というのもある。こっちは自動詞で「壊れる」だが、外見がつぶれるかどうか、というのとは無関係。
大分の一部では、「鍋を空焚きして壊してしまう」という言葉があるそうだ (「
おいだけ」)。「
たきわる」と言うそうだが、こういう、限られた言葉があるのが方言の魅力だと常々思っている。東北の「
まがす」「
うるがす」しかり、新潟の「
おころげる (炊き上がったご飯をかき混ぜるなどして水分を飛ばす動作)」しかり。
近畿なし四国の一部には、「家を壊す」という意味の「
こぼつ」という語がある。壊す対象や、壊し方によって語が違うんだろう。
四国・中国では「
めぐ」。かなりの数が見つかる。
近畿の一部で、「
もじる」。
愛知の一部で、「
お金を壊す」と言うと、これは「くずす」「両替する」という意味。確かに。
前から疑問なのだが、10 枚の 100 円玉を、1 枚の千円札にするようなことを一語で表現する語はないのだろうか。子供の頃、「逆両替」と言っていた、という記憶があるが、これは、女性から男性へのセクハラを「逆セクハラ」と言うような違和感がある。
と思ったら、岐阜では、どちらも「
こわす」と言うらしい。
「100 円玉」「百円玉」
「1000 円札」「千円札」
上の対応で、俺は「1000 円札」には、かすかに違和感を覚える。
会計関係のプログラムを作っているとか、
と並べる必要がある場合を別にして、文章の場合は「千円札」と書きたくなってしまうのだが、何故だろう。
忘れていた。
秋田では、「壊す」が「
ぼっこす」、「壊れる」が「
ぼっこいる」。「ぶっこわす」「ぶっこわれる」の変形だと思う。
逆に、「直す」はどうか。
これがちょっと辛い。
何でかと言うと、検索エンジンでは、「○○弁に直すと…」「標準語に直すと…」「方言を直さなければ」が山ほどヒットするのだ。まぁ、これが方言と言うものの実態を描き出している、と言えないこともないが。
で、「方言を直す」で再検索してみると、妙に掲示板が多いのが気になる。それだけ議論の的になる、ということか。
気になったので
大辞林。
そうか、方言というのはやはり正常なものではないのか。
ヒットしたページの中には、直さなくてもいいよ! という声も少なくないのだが、「直す」って語を使う時点で、「違うだろ」と言いたいところではある。単に、「全国共通語を使えるようになる」とか、そういうことだろう。
なお、大辞林では、「英語を日本語に直す」という例文を、「(2)変更・変換する。」-「(イ)別の形態にする。変換する。」という意味で説明している。これが「○○弁に直すと…」だな。
逆に、「かたづける」という意味で、「
直す」と言う地域がある。関西方面だ。九州でも言うようだ。
かと思うと、
「直す」は「修理する」の俚言形だ、というページも見つけてしまった。どこだかは書かないが、複数である。
舞台の世界やテレビ業界では、「どかす」ことを「
わらう」と言うのだが、これの語源は不明らしい。
急いで番組を進めろ、というのを「
まく」と言うが、これ、手つきも交えると、妙に納得性がある。あるいは、「ねじを巻く」からか。
自分で書いて思ったが、上のように「舞台」と言うと、お芝居の世界だ、ということは了解してもらえる。オーケストラだってロックバンドだって舞台で演奏するというのに。でも、あれは、「舞台」ではなく「ステージ」か?
今年の自転車シーズンはおしまい。
涼しいのはよかったが、やたらと雨に降られたシーズンであった。
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