Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第252夜

This Week's Dialog (2)



Skit 1:
Hello!


How are you?
まめでらが

I'm fine, thank you. And how are you?
まんずな。おめも まめでらが。

I'm fine, too, thank you.
あいさ
 
 「おぅ」と書けないこともないが、割と短い音である。
まめ 
 漢字では「忠実」とかくが、息災・健康であること。
まめでらが 
 本来は「まめでいたか」。これが会話では「まめでだが」になるのだが、“check it out”が「ちぇげらう」に聞こえるのと同じ理屈で、「まめでらが」になる。
まんずな 
 まぁな、に相当する。「ぼちぼちですわ」が近いか。可もなく不可もなく、ということだが、この対話自体が定型なので、あんまり意味を追求してもしょうがない。
ぼちぼち」は、税金対策だ、という話が『大阪学』に書いてあった。儲かっていることを、謙遜で仲間に隠すのではなく、税務署に隠すのだそうだ。本当かどうかは知らないが。
あいさ 
 そうだよ。「そうに決まってるじゃないか」というような、強い肯定のニュアンスがある。

Skit 2:
This is a pen.
これ、ペンだ。

It is a pen.
それ、ペンだ。

This is a pencil.
これ、鉛筆だ。

It is not a pen.
そいだ、ペンでね。
そいだ 
 「そいだば」←「それだば」←「それだったら」。仮定というよりは、「そんなものは」という感じ。「それは鉛筆なんだから、ペンであろうはずがないじゃないか」ということ。

Skit 3:
I have a pencil.
こさ鉛筆ある。

I have a pencil, too.
おらだって鉛筆もってら。

Your pencil is shorter than my pencil.
おめの鉛筆だば俺の鉛筆より短けべ。

What's the matter with you?
へば、なしたって。

My pencil is longer than yours.
おらの鉛筆だば、おめなより なげもの。

I've got a knife. I can shorten your pencil, you know.
こさ まぎりあらんだもの。おめな 短けぐしてやっても いあんだや。
I have a pencil. 
 状況説明がないので何ともいえないが、勿論、「おら、鉛筆もってら」という意味の可能性もある。今、手にもっているのかもしれない。
へば、なしたって 
 直訳すれば「おめさ なんの 関係あるって」。
おめな 
 地域・人によっては「おめの」のこともある。「お前の」なのか「お前の奴」なのかによるのかもしれない。
まぎり 
 小刀。
いあんだや 
 「いいんだよ」。「いなだや」とも言うようだ。

Skit 4:
I'm a student.
おら、学生だ。

I'm a student, too.
おらだって、学生だ。

I play tennis.
おら、テニスやるもの。

I don't play tennis. I play baseball.
おらはやらねよ。野球だもの。
学生 
 ここで言ってもしょうがないことではあるが、高校生は「学生」ではない。「生徒」である。「スケバン刑事」ではやたらと「学生刑事」という単語が出てきて閉口する。いわんや、中学生をや。
もの 
 これしきの話題でそんなムキにならなくても。
 
 日本語全般にいえることだが、特に会話においては助詞は落ちる。「俺、学生」というのは特に珍しい表現形式ではない。が、最後の例では、「君はテニスをやるのかもしれないが、僕はやらないよ」ということを言おうとしているので、「は」が現れる。
 もっと強調したい場合は「おらだっけ」という言い方もできる。「おれなんか」に近いか。

Skit 5:
Hey, You play tennis.
なに、おめ、テニスやるってが。

Yes, I play tennis. I play basketball, too.
やるよ。おらだっけ、バスケットもやるや。

You're BUSY, aren't you, ha.
そい、くされたまぐらって 言わんだや。

'ts none of your business.
やがましねで、んが。
くされたまぐら 
 既出。なんにでも首を突っ込むやつ。
そい 
 それ。
やがましね 
 やかましい。この、形容詞の末尾につく「」は秋田弁の特徴の一つ。否定の「ない」ではないので注意。
んが 
 おまえ、きさま。

 参考書籍は、清水義範の『わが青春のジャック&ベティ』。



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