NHK 教育テレビの「
ふるさと日本のことば」が 1 年の長丁場を走りきった。
各回の感想についてはこれまで書いてきたが、それ以外にも、色々と話題があるので、これをチョボチョボと取り上げていこうと思う。
この番組は、視聴者から「21 世紀に残したい言葉」を募集している。番組中、その量が示されることがあるので、それをいじってみる。
とは言いながら、細かい値であったことは一度もない。「全部で 2000 通以上のお手紙をいただきました」という形である。ここでは、これを「2000 通」と見なすが、それゆえお遊びの域を出ない、ということは明言しておく。こないだ
明治書院から『日本語の計量研究法』という「
日本語学」の別冊が出たばっかりでもあるし、これは、言い訳としてはっきりさせておこう。
まずは、手紙の数から見る。
上の表でもわかる通り、数が公開されたのは、全体の半分もない。この点からも、正確な論にならないことは約束されている。
それはさておき、全体の平均は 2157 だが、宮崎と福島が群を抜いている。
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NHK の県民意識調査と比較してみると、両県とも「あなたはこの土地の言葉を残していきたいと思いますか」「この土地の言葉が好きですか」という質問に対して「はい」と答えた人の率が、他県と比べて有意に高い。
実は、ここで「なるほど」と思ってはいけないのである。上に挙げた県の内、滋賀はどちらの質問でも「はい」が少なく、山梨では「好きですか」に対する「はい」が少なく、富山は中間層、ということで、ほとんどの県が「好き」で「残したい」なのだ。
ただし、滋賀は「はい」が有意に少ない。パーセンテージで並べると、下から数えた方が早い。つまり、これは当然の結果と考えてよい。
放送でも、住民が「これ! というのがない」と思っていると紹介されていた。
この2つと「標準語が話せなかったり、地方訛りが出るのは恥ずかしいことだと思いますか」という質問に対する「はい」の率を、平均の上と下とで見てみる。平均値近辺の徳島と富山を除外する。
関係ありそうな感じ。最初の表の後ろ 2 つは 1% 差だから関連を見るのは無理だが、好き嫌いや残したいかどうかは、手紙を出すという行為に及ぶ上で影響を持っているものと思われる。
低い方に挙がっている熊本と滋賀だが、放送順はずいぶんと後である。シリーズ放映開始から半年はたっている。
NHK も熱心に宣伝していたから、滋賀の方言に対する無関心は筋金入りと言っていいか。
熊本の少なさは謎だが。
気になるのは、類型との関連である。
随分
前の話だが、
NHK の調査結果で遊んだことがある。その時、方言に対する態度について
A) 方言が好きではない−方言が出るのは恥ずかしい
B) 方言が好きではない−方言が出るのは恥ずかしくない
C) 方言が好き−方言が出るのは恥ずかしい
D) 方言が好き−方言が出るのは恥ずかしくない
の 4 つの類型に分けた。C) をコンプレックス型とみたのだが、ここで挙がっている県のほとんどがコンプレックス型なのである。
勿論、それは番組中で数字が紹介されたかどうかなので、単なる偶然なのだが、手紙の数の平均を出してみると違いがはっきり出る。
A) 2000 (富山のみ)
B) 1400
C) 2986
D) 1700 (北海道のみ)
コンプレックス組の手紙の量がダントツである。普段から、自分の方言は好きなんだけど、それを語れないという状況にある、ということなのだろうか。
B) は方言に対する態度を決めかねているのだと見れば、少ないのも納得がいく。北海道については、後で別に取り上げる。