Speak about Speech: Shuno の方言千夜一夜




第233夜

ふるさと日本のことば−番外編 (2)−



 次は、語数である。こんな感じ。平均は2035語。
長野 10000
沖縄 3000
島根 3000
千葉 2500
静岡 2000
福井 2000
埼玉 1500
山口 1500
長崎 1300
群馬 1300
新潟 1200
兵庫 1000
岐阜 700
大分 600
香川 500
北海道 460
 前回と同様の表を作ってみる。
 NHK の県民意識調査の「あなたはこの土地の言葉を残していきたいと思いますか」「この土地の言葉が好きですか」「標準語が話せなかったり、地方訛りが出るのは恥ずかしいことだと思いますか」という質問に対する「はい」の率を、平均の上と下とで見てみる。平均値近辺の福井と静岡を除外する。
(%) 好き 残したい 恥ずかしい
上 64.963.513.0
下 62.057.814.2
 逆に、この質問に対する回答と手紙の平均数を見てみると。
(通) 好きか 残したいか 恥ずかしいか
はい 316030601640
いいえ 167515672000
 後ろの表にははっきり差が出る。ダントツの長野が効いていると思われる。
 前の表では、残したいかどうかと、手紙に書こうと思う語数になんらかの関係がありそうな気配。

 さて、手紙の数と語数が紹介されているのは北海道と長野だけである。
北海道 1700 通 460 語
長野 2300 通 10000 語
 この違いはどうだろう。
 長野衆は、1 通あたり 4 語を書いてきたことになる。北海道も投書数自体は決して少なくないのだが、特定の表現に集中したものだろうか。
 その NHK の調査をまとめた『現代の県民気質』によれば、長野県民は理屈っぽいのだそうである。これは外部の評価ではなく、自らの観察結果だが、であれば、あれもこれもと書いてくるのはなんとなく納得する。

 と納得しかけたところで話がひっくり返るのだが、実は、この「語数」には大問題がある。
 異なり語数なのか、延べ語数なのかがわからない。つまり、二人の人が「こえ」を挙げたとして、これを 1 語と数えているのか 2 語と数えているのかが不明だ。
 極端に離れているところを見ると、長野は延べ語数である可能性が高い。北海道は「方言が好きで、方言で話すことを恥ずかしいとは思っていない」という性質から考えて、異なり語数であろう。
 では、その間はどうなのか、全く不明。
 残念ながら、この語数で何かを見ようというのは間違いである。

 ここで改めて、投書数や語数と、上の 3 つの質問の相関を見てみると、相関係数が最も高いのは、投書数と「この土地の言葉が好きですか」で、係数にして 0.41. 他のものは、0.20 以下である。*1
 考えてみれば、教育テレビの視聴率は、総合よりは低い。昨今、かなり注目を浴びてはいるのだが、これは青年層による再評価であって、この番組の主たる視聴者である熟年〜高年層によるものではない。したがって、投書数はちょっとした理由で大きく左右される可能性がある。例えば、その地域における NHK のポジションや、NHK の番組構成などにも影響される*2。純粋に言葉だけの問題ではない、ということになる。
 つまり、投書数も語数も、この数字で何かを見ようというのは間違いなのであった。

 2 週間もかけて何やってるのやら、という気はする。我ながら。




*1
 相関係数は 1〜-1 の間の値を取る。2 つの系列が正比例 (y=ax) していれば相関係数は 1 である。係数が正負のいずれでも、0 に近いほど関連は薄い。


*2
 実際にあったかどうか確認してないが、衛星の「お〜い、ニッポン!」と重なったりすれば、相乗効果も期待できるが、放送局側のパワーが割かれてしまう可能性もある。





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